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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第四章 アマツ・ツカサは魔王バルフェルトにはなれない
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34 二つの提案

「これが魔王城ねぇ……」

外壁はどこも虫食い状態、塗装は剥がれ落ちていて全体的に白と灰色が基調となっている。

魔王城というよりも廃墟に近かった。


「そうです、こちらへどうぞ」

キャロの案内で俺たちは魔王城内へと入る。


「待っていましたよ」


眼鏡にスーツ姿の魔物が階段上部の踊り場に立っていた。グリオンだ。

「誰もお前を待ってねぇけどな」

「相変わらず口の利き方がなっていませんね」

互いに睨み合っていると、グリオンは鼻で息を鳴らして歩き始めた。


「ついてきてください、他の者たちが待っています」

グリオンの後をついていくと、部屋の中央に円卓のテーブルが用意された一室に案内された。

先に円卓のテーブルに二人が着いていた。

一人は獣人で筋肉質なライオン頭。もう一人は黒いマントをしていて、フードのせいで顔が見えない。


「その二人が残りの四魔同盟か……」

「認識の通りです。では、おかけください」

グリオンに言われた通り俺たちは席についた。

座り心地は最悪だ。石板に座っているのと変わらない。


「マジでバルフェルトさまじゃねぇか!」

ライオン頭の男は豪快にテーブルを叩いて笑っている。

「中身は元勇者のアマツだけどな、よろしく」


「俺は経済魔族(エコノミー)の頭領、セルリーだ、よろしく!」


今まで会ってきた四魔同盟のやつの中でまともそうだな。

残ったフード付きのあいつが、魔王新派の破壊の魔女か。


「……破壊の魔女です。よろしく」と小さな声で挨拶された。


最後の一人は眼鏡を掛け直していた。

「僕は挨拶する必要ありませんね」

「誰だっけ、眼鏡くん」

もちろん忘れてるわけじゃない。何回会ってると思ってんだよ。もう会いたくもなかったけどな。

「ほんとその態度気にくわないですね……!」


「おいおい、俺はお前らがどうしても来て欲しいって言うから来たんだぞ。

……それで呼び出した、パクーチはどこだよ」


残った一席には、パクーチの姿はなかった。先に来ているんじゃないのか。

「彼女は別の方と会う約束があり、退席しています」

「なんだよそれ……」


自分勝手なやつだな。

まぁいいや、俺がここに来たのはパクーチに会いに来たわけじゃない。


「今回、俺はお前らに二つの提案が会ってここに来た」

「二つですか?」とキャロが耳打ちする。

「ああ、二つだ」


「では、聞かせていただきましょう。その提案というのを」

グリオンは眼鏡を掛け直して、鼻で笑っていた。

なんだこいつ、本当に人の話を聞く態度かよ。


「一つは、バルフェルトを生き返らせる方法を俺たちにも使わせてくれ」

本当にバルフェルトを生き返らせることができるかもわからないけど、もし生き返らせられるなら借りたいもんだ。

「あなたがバルフェルトさまの体を返してくださるならいいですよ」

「死ねって言ってる???」


「ええ。バルフェルトさまが生き返らせることはできますが、裏切りの魔女を生き返らせられることはできませんがね」


なんだそれ、なぞなぞかよ。バルフェルトはできて、バンカができないのはなんでだ。

「理由は答えませんから、もう一つの提案を聞きましょう」

「ッチ」


どうせ生き返らせる方法教えてくれないだろうと思っていた。

バンカのこと生き返らせることができるとしても、その方法をやらせてもらうにはバルフェルトの体を受け渡す必要がある。

どのみち無理だと思ってた。

「バルフェルトさまの体で、舌打ちはやめてください」


ライが席から立ち上がって声をあげた。

「なんで無理なの! けち!」

そうだよな、ほんとけちだよなぁ。

俺もそう思うよ。


「あなたは……ああ、バンカの『呪い』を授受した娘ですか」

「なんで知ってんの!?」

「キャロから伝達している情報で得ています」

「盗み聞きとかキモ!」


「すみません、自分の元上司が……」

「そうだよなぁ、ほんと嫌な上司だ」

俺たちがグリオンのことを嫌味たらしく言っていたら、テーブルを平手打ちして威嚇してきた。

怖い怖い。

「話を進めてください」


「もう一つの提案は、四魔同盟と俺が手を結ぶことだ」


バンカのことを生き返らせることができれば、それはもちろんいい事だと思う。

だけど、俺にとっては今の魔族をまとめる方が先決だ。


「却下します」

「断るの早いわ、まだメリットとか話してないだろ」


絶対こいつ私怨で断ってるだけだろ。

グリオンに比べて、他二人は好適だった。


「話してもらってもいいと思う」

「俺も聞いてみたいぜ、元勇者がどうして俺ら魔物と手を結ぶかをよ」

グリオンは二人を一瞥して不満足そうにため息をついた。


「今の魔族はバラバラだ、お前らは人間と戦うつもりかもしれないけど今のままじゃ無理だ」


「そうだけど……」

答えたのは、破壊の魔女だった。「あなたが入って人間に勝てるの?」


「戦わない。俺とロマネスクは手を組んでる。人間側はロマネスクがまとめてるから、あとは俺が魔族をまとめれば話は解決だ」


「あのロマネスクと手を組んだのか!」とセルリーが手を叩いて笑っていた。

そんな笑うことだろうか。

「だからって、『でしたら、一緒に行動します!』ってならねぇよ」


「人間と魔族が手を結べば、きっと良くなるだろうし経済魔族のお前にも損はないと思うぜ?」


魔物が人間相手に魔物を売っているのだから、人間と魔族が手を結ぶのはそう悪くないはずだ。

貿易の幅がもっと増えるに違いない。


「俺はお前らの下にはつかない」

そういうことか。

勘違いしているみたいだな。まぁ全てロマネスクのせいだろうけど。


「傘下に下れだなんて言ってない。俺はお前らと横並びで行動したいって言ってんだよ」


「……そうか、少し考えさせてくれ。人間と魔族が手を結べばもっと交易が盛んになって──……」

セルリーはあごに手を組んで何かぶつぶつと唱えている。


考えるって言ってるし、今度会った時に話をしよう。

断られたら断られたらで話せば、金やら商流が鍵みたいだしどうにかなりそうだな。


さて、残る説得相手は二人だ。

「それだったら、魔王新派は手を結びます」

「はぁ?!」「なんでそこで」


グリオンとセルリーは驚いて声を上げていた。

俺だって驚いているよ、これから説得しようとしてたのに勝手に手を組んでくれるとは思ってもいなかった。

『魔王新派』には「俺が形式上の魔王になって、四間同盟と俺で魔族を統率しよう」と提案しようと考えていた。


「ちなみに聞くけどどうしてだ?」

「わたしたちは、バルフェルトの代わりになる魔王を作り出すことが目的だから。あなたを魔王にするわ」


そんな気はしてた。魔王新派は新しい魔王の発掘が目的だ。

バルフェルトの体でロマネスクと対等な存在の俺なら、魔王の器になると考えるだろうな。

だけど、ここでそれを切り出されるとめんどくさい。


「あなたたちは、バルフェルトさまを愚弄するのもいい加減にしてください」


グリオンはテーブルを叩き割った。

怒ると思ってたけど、物に当たるのは良くないだろ。


「僕は断固拒否する! 絶対に許さないぞ、アマツ・ツカサ! もし、君たちがこいつと手を結ぶというなら僕はこの同盟から降りさせてもらう!」


破壊の魔女とセルリーは席を立ち上がった。

まさか一緒に戦ってくれるのか。


「別にいいけど。また今度話しましょう、魔王候補のアマツくん。話がしたくなったら【東京】に来てね」

「じゃあ、俺もしばらくお前んところで商売させてもらうか」

「え? ここで話さないのかよ、てっきり味方してくれるかと」


二人は目を合わせて笑い、「そんなわけ」と答えた。

「グリオンと戦うなんてめんどくさいもの。それにわたしたち一応彼とも手を組んでるから戦わない」


「はぁ!?」

こいつら、仲間なのか敵なのかはっきりしねぇな。

「それじゃあ」と二人は部屋から立ち去った。


「……俺たちも帰るとするか」

「そうですね……」「えー何もしてない!」「グリオンと戦わせなさい!」

「今のオリブじゃグリオンに勝てないからなー、さっさと帰ろう」


帰り支度をしているとグリオンが後ろから飛びかかってきた。

「待ちなさい!」

「あぶねーな」

「バルフェルトさまの体を返してもらいますよ!」

「取れるもんなら、取ってみろよ!」

やっぱり戦うことになるのか……。

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