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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第三章 アマツ・ツカサはお兄ちゃんになる?
33/49

33 シスコン妄想魔王

「テレテッテ〜〜」

ファウグスフが陳腐に歌っているが、俺の心の中はそんな音楽よりも騒々しかった。


その理由は妹のソフラムを勝たせるかどうかだ。

バンカを生き返らせる、もしくは今後のために精霊の秘宝を得たいという気持ちがある。

この後、四魔同盟と出会った際に戦うかもしれない。

それに、もしかしたらグリオンが精霊の秘宝を持っているかもしれない。


「わたし、お母さんが女手一人で育ててくれたからまた元気になって欲しいの」

「……そうか」


俺らには、次がある。

だけど、ソフラムには次がない!

これを逃したらきっと大精霊に会える手筈がなくなるかもしれない。

お母さんを死なせてしまったら、この子は一人で生きていくことになるだろう。


あ、でもそれはそれで俺が育てていけばいいのかもしれない。

「お母さんが死んだら嫌だよぉ……」と泣き始めた。

妹の涙は見たくない。


音楽が鳴り止み、立っていたのは俺とソフラムだった。

「クソォおお!」

「アマツさま?」


俺は走り出した。

俺は確かにソフラムと戦うことから逃げた。

だけど、このゲームから降りたわけじゃない。


「アマツさま!?」

座っていたキャロの椅子を奪い取り座った。無事に妹のソフラムは座れたみたいだ。

──これでいいんだ。


「どうして、自分から取ったんですか……。ソフラムさんと争ってくださいよ」

「ほんとくだらない……。大精霊さん、ルール的にどうなの?」

「いいんじゃない〜〜」とどうでもよさそうにあくびをしている。

ファウグスフからも了承を得た。


「このままだと、うちが跳ね飛ばされるじゃん!」

もちろん、次のゲームではライを飛ばした。

妹を守るためだ。これでいい。


「竜のお兄ちゃん……いいの?」

「何がだよ、お兄ちゃんなんだからこれくらい当然だ」

「「「お兄ちゃん???」」」

総動員でツッコミがはいったが、何が間違っているのかわからない。

当然じゃないか、血が繋がっていなくても妹は守るものだ。


「魔王、まさかその女に魅了魔法(チャーム)をかけられてるんじゃないでしょうね」

「そんなわけないだろ、この子は人間だぞ」

「ただ単にあんたがヤバいだけじゃない」


次のゲームでは、もう今までの手は使えない。

どうすれば……。

「竜のお兄ちゃん、わたしはちゃんと戦って勝ちたい!」

「……ソフラム」

「だって、そうしないとお母さんに顔向けできないもの。傷ついたっていい。お兄ちゃん全力で来て!」


俺は妹を熱く抱擁した。

「わかった……」

「それをどうして、ロマネスクさんの時にやらなかったのですかっ!」

ガヤがうるさい。


「もういい〜〜?」

「待たせたな」

俺は魔王になることを決めたんだ。

相手が、旧友だろうと、パーティーの仲間だろうと、妹だろうと全力で相手をするべきだ。

椅子取りゲーム、だろうと俺は自分の居場所を手に入れてやる。


「テレテッテ〜〜」

音楽が鳴り始め、俺とソフラムは歩き続けた。

妹はいつにもなく、真剣な顔だった。

これは、手を抜くとか言ってる場合じゃないな。手を抜いたら確実に負ける。


「テレテ──。」

音楽が止まった。

素早くソフラムが椅子に飛びついた。


俺相手に先手を取ろうとするなんて悪手だ。最初の試合でオリブが飛ばされたことを忘れたのか。

つかさず椅子に俺も着席しようと動く。

ソフラムの可愛らしいお尻とぶつかり、妹は吹き飛んだ。


「──取った!」

着席した。

だが、そこには椅子がなく無様に尻餅をついていた。

「なっ!?」


椅子の在処を探していると、ソフラムが両手で椅子を持っていた。

「わたしの動きじゃ、竜のお兄ちゃんから椅子を奪えないだろうから。利用させてもらったよ」

ソフラムはゆっくりと椅子に着席した。


「勝者は、ソフラム〜〜」

ファウグスフの間の抜けた、終了宣言で勝者が決まった。

「これは一本取られたな」

ソフラムの元まで行き、頭を撫でる。

「すごいでしょ!」


「ああ、すごいぜ。ファウグスフ、妹に例のモノを」

「いつまであんたは、兄面してんの……」

ファウグスフは、めんどくさそうにお尻から何かを取り出してソフラムに投げつけた。

「これが、精霊の秘宝……」


「君のお母さんを生き返らせれるかは、わからないけど約束通りあげる〜〜」

「ありがとうございます!」

「最悪役に立たなかったら、国に売ればお金になるわよ」とオリブ。


精霊の秘宝の能力はランダムだから、治せるのが出るか危惧してたけどその心配は無用みたいだ。

「ありがとう、竜のお兄ちゃん。みんな! これでお母さんの病気を治せる!」

泣きながら感謝を言うソフラムの姿を見て、俺まで泣けてくるぜ。

他三人からの視線が冷たいことは、気にしてはいけない。


「一人で帰るのか?」

「うん、怖いけど。どうにかするよ……」

「ドゥルガー、ソフラムを村まで送ってやってくれ」

「ええ……、ということは命令(約束)はこれでいいんだねェ」

「ああ!」


「ちょっと待って!」

三人が止めに入った。妹のことを心配してるんだからこれくらい当然だろう。

「そんな使い方で使うの勿体無いよ!」とライ。

「俺だけで四間同盟倒せるし……」


「だからって……。ファウグスフこの子を送って」

「ええ〜〜。めんどくさいな」

オリブの説得により、いやいやながらもファウグスフは承諾してソフラムを村まで送ってくれることになった。

「いつか絶対、竜のお兄ちゃんたちに恩返しするからね!」


そう言ってソフラムは去っていた。

出会いもあれば別れもある。妹はこれからもいい出会いをしてくれ……。


「早くいくよ、シスコン妄想魔王」

「変態魔王からジョブチェンジですね!」

「アマツ、おかしいー!」

旧魔王城に着くまでの間、俺は三人から罵声を浴びせられていた……。

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