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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第三章 アマツ・ツカサはお兄ちゃんになる?
31/49

31 竜のお兄ちゃん

「いつになったら着くんだよ」

かれこれ半日近く歩いていた。旧魔王城に向かうという目的ついでに向かうところがあった。

「もう少しでファウグスフに会えるよォ」と俺たちの前を先導していたドゥルガーが話した。


「ドゥルガー、疲れた~」

「ボクはできないィ」

「誰かおんぶしてよ」


俺たちが寄り道しているのは、大精霊を探す目的のためだ。

ご覧の通りライさんは、俺のこと「キモ」って言った時と違って元気いっぱい。

約束を叶えた褒美に、ドゥルガーから大精霊を教えてもらった。


「まず、こんなところにいるのか?」

精霊は魔族と仲が悪い。こんな魔族の国のど真ん中にいるとは思えない。

仲が悪い奴の飲み会に行くのと同じだろう。


「いるよォ、彼は少し変わり者だからねぇ」

「それお前がいうのか」

「酷いなァ。この前から扱いが雑じゃないかァ」

「気のせい気のせい」


魔物一匹もいない薄暗い森に大精霊がいるとは思えない。

いや、魔物がいないのはロマネスクとオリブが悪い。


「ちょっとは手加減してよ!」

「手加減されたくないと言ったのはオリブではないか」

逃げ周るオリブの後をロマネスクが追いかけている。

魔物が二人の道を拒むのであれば、切り捨てる。

修行の一環に、二人が魔物退治してくれてるおかげで安全に俺らは旅ができている。


「ロマネスク、今日には帰るって言ってなかったっけ?」

オリブが奪った剣を取り返しに来たって目的を忘れてるんじゃないだろうか。

早く剣を取り返して、きな臭い魔物たちの動きを封殺してほしい。


「……」

「どうしたんだ?」

電池が切れたみたいにロマネスクの動きが止まった。

しおらいく俯いている。声もどこか元気がない。


「帰ってしまっていいのか?」

「え、うん」

ここらへんの魔物くらいなら俺一人で大丈夫だし、人間の国の心配してほしい。


はぁ(クソでかため息)

キャロがすごい肩落としてる。

「アマツさま、それは良くないですよ」

「え、そうなの?」


キャロがライに耳打ちでなにか伝えている。

「これだから童貞はぁ」

「絶対言わせただろ!!」


「言わせてませんよ」

噓まる出しの下手くそな口笛までしてる。

グリオンに返却してやろうかな。


「ボクから見ても言い方が酷いと思うなァ」

「そうか?」

俺らと旅するほどロマネスクは暇じゃないはずだ。

各地の魔物の残党を鎮めたり、人間同士の争いを仲裁しないといけないはずだ。

ここで旅する暇があったら、帰らせて休ませてあげたい。


「一緒に旅したいんだよォ」

「そういうことか。一緒についてくるか?」

ロマネスクは首を振った。

「ちげぇじゃねぇか!」

「え、ええぇ……」

ドゥルガーはわかりやすく動揺してる。


「お二人とも違いますよ」

どうして俺まで……。

「帰るから、最後に甘えたいんですよ」

「なんじゃそれ。ロマネスクに限ってそんなこと頼むわけ──」

「頭撫でて……」


頼んでる!!???

前世と打って変わってどうした。未だにそういうのなれないだけど。

オリブも顔ひきつってるし。

自分の育ての親がメスの顔になってるんだから、そりゃそうだ。


「アマツさま、撫でてあげるべきです」

「撫でるくらいうちでもできる!」

そうは言われても、心の準備というものが必要なんだ。

「わかった、わかった。頭を撫でればいいんだろ」


撫でると恥ずかしそうに笑っていた。

可愛いかよ……!


「ありがとう、それじゃあもう行く」

「お母さん、剣忘れてるよ」

「剣なんてなんてどうでもいい」


ロマネスクはオリブの頭を撫でた。頭を撫でられているオリブは恥ずかしそうだけど、嬉しそうに笑っていた。

血は繋がっていなくても笑い方はそっくりだった。


「じゃあな」

ロマネスクはこの場からいなくなった。


「剣じゃなくて娘の様子を見に来たって言えばいいのにな」

「アマツさま、こそもう少し素直になったらどうですか!」

「抱きついちゃえばいいのに!」

ライとキャロは恋愛のことになると強く出るから困っちゃう……。


「助けて」

俺の心の声じゃない。遠くから確かに声が聞こえた。

「人間がこんなところにいるのか」


「どうしたんですか?」

「人の声がした、向かうぞ」

声がした方向へと向かうと、群れをなした低級の魔物が少女を囲んでいた。

「だれか助けて……」


「待ってろ、今助ける!」

「ま、魔物!??」

少女はパタリと地面に倒れた。

「いや、助けにきたんだけど」


すぐに魔物を倒して地面で気絶している少女を叩き起こす。

「おい起きろー」

傷はなさそうだ。毒で倒れたわけでもなさそうだけど後でキャロに治癒をかけてもらおう。

っていうか、叩いても起きないんだけど。


「しゃーない、水よ大地を潤せ『アブ』」

俺だってオリブと一緒に修行はしている。

ここに来るまでの途中にいくつかロマネスクから魔法を教わった。


「あばばばばっば」

水を放射し続けていると少女が目を覚ました。

「お、やっと起きたな」

「ま、魔物!??」

「また気絶した……」


*****


「すみません、助けてもらい命の恩人に失礼なことまでしちゃった」

俺の見た目について説明を済ませると少女は申し訳なさそうに頭を下げた。

「別にいいよ、どうしてここに? 魔族の国のど真ん中だぞ」


「ここらへんに大精霊がいると聞いてきたの」

おそらく精霊の秘宝目当てだろう。

奇跡みたいな力にすがるほどの事情があるんだろうな。


「だからって、危ないだろ」

見た目は十六歳くらいだ。色素は薄いが青色の長髪、赤い瞳の女の子。

黒色のマントを羽織っているだけで、荷物はなにも持ってない。


「ソフラムだよ、竜のおじちゃん」

「お、おじちゃん!? おじちゃんはないわ」

失礼な奴だな。


「俺はさっきも言ったけど、アマツ・ツカサって名前があるの」

「じゃあ、竜のお兄ちゃんで!」

話聞いてた???


「竜のお兄ちゃんって……まぁいいや」

「俺らも大精霊に会いにいくところなんだ、一緒に行くか?」

「うん」

こうして一時的にパーティーに、人間の少女ソフラムが加わった。


「ドゥルガー、大精霊は本当にここらへんなんだよな」

「そうだよォ、ちょっと呼んでみるよ」

最初からそうしてくれ……。ここまで歩くはめになったんだけど。

「え、大精霊だ。すごい!」


「初めてみたのか? 俺の手下の大精霊だ」

「違うよォ」


キャロはずっとソフラムをあごに手を組みながらじっと見ていた。

「……」

「どうしたんだよ」

「どこかで見たことあるんですよね」

ソフラムは小首を傾げていた。

「?」

きっと他人の空似だろうな。


「ファウグスフ、どこだァ」

何度かドゥルガーが大精霊の名前を呼んでると声が返ってきた。

「うるさいな~~」

四つの羽に、四つの腕の巨漢が空間から現れた。

「お前が大精霊か」

「いかにも~~」

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