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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第二章 アマツ・ツカサは勇者の娘を育てる
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27 母親の顔

「おお、オリブが勝った!」

みんなで喜んでいると、こっちをオリブは見てVサインを送ってきた。

ほんと可愛いやつだな。


「なんか言ってやらねぇのかよ、母親として」

「オリブが勝つことなどわかっていた」

喜びもせずにオリブのことをロマネスクは見ていた。

まったく少しくらい褒めてやればいいのに。


拍手しながらこちらへパクーチがオリブに話しかけていた。

「さすがロマネスクさまの娘さんですね、ここまで強くなられたのは何か秘訣があるのですか?」

「秘訣なんて特に……ただ母さんとアマツ、みんながあたしのことを強くしてくれただけ」

「そうですか」


求めていた回答ではなかったのかパクーチは笑うのをやめて、地面でうなだれているスピナッシュを睨みつけた。

「……か、母さん。俺は」

今にも泣き出しそうだった。

スピナッシュの頭に手を置いて撫でていた。

今回はオリブが強かっただけだ、また戦えばいい戦いになるはずだ。


「なんのために私があなたを産んだと思っているのですか」

息子を見る目つきじゃない。まるでゴミやドブネズミを見ているみたいだった。

「勝てなきゃ意味ないのよ、あなたを強くするために私がどれほど研究を重ねたと思っているの」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」


パクーチは何度もスピナッシュを踏みつけている。

顔は腫れ上がって原型を留めていない。

「やりすぎ」とオリブが止めに入った。

「負けても死ぬわけじゃないし、次あたしと戦って勝てばいいだけ」


いいこと言うじゃないか。誰がこんなことをオリブに教えたんだろうなぁ。

「まぁ次もあたしが勝つんだけど」

「うわ、台無しだよ」


動きを止めていたパクーチはいつも通り微笑み「愚息がごめんなさいね」と頭を下げた。

「スピナッシュ、あなたも謝りなさい」

「……失礼なこと言ってごめんなさい」

「別にいいよ」とオリブはぶっきらぼうにそう答えてこっちに駆け寄ってきた。


「お母さん、あたし勝ったよ!」

「当たり前だ、さすが私の娘だ」

オリブは嬉しそうにロマネスクに抱きつき、頭を撫でられて心の底から嬉しそうだった。

ロマネスクもまんざらでもなさそうだ。

今まで魔王や勇者としての側面しか見てきてなかったけど、母親の顔もできるんだな。


「どうよ、魔王! あたしだってやればできるんだから」

「はいはい、すごいすごい」

「バカにしないで!」


「まぁ褒める点としたら、よくロマネスクと俺が模擬戦した時にやった盾投げマネできたな」

「一度見ればそれくらいできる!」

投げるタイミングが完璧だった。ちゃんと相手の視界も防げた。ただ適当に盾を投げたわけではなさそうだ。


「ぜったい嘘だ〜」とライは目を細めている。

「嘘じゃないから!」

「「ぎゃあぎゃぎゃあ」」

戦った後だというのにライとケンカする元気まであるとは恐ろしいな。


「なんであんなにセンスあんだよ」

一度で覚えてられたら努力する必要ないじゃないか。俺だって大抵のことは一度見ればできるけどさ。

「オリブは私が一緒に旅した仲間の娘だ、私の次にこの世界で強かった」


「へぇ。その人は今は?」

「魔王バルフェルトと戦った際に殺された」

だから過去形か……。ロマネスクが強さを認めるってことはオリブの両親は相当強かったんだろうな。


ギャアギャア争っていた二人がこっちにやってきた。

互いにほっぺや髪の毛を引っ張り合ってる。

「魔王! この嘘つき女追放してよ!」

「誰が嘘つきだ! ざーこ! まぐれで勝てただろ」

「二人とも仲良くしろよー」


「そ、そうですよ。ケガしたら毎回治すの自分なんですから……」

「「うっさい!」」

いつもヒーラー担当としてお世話になってるんだからキャロさんの言うことは聞きなさいよ。


「皆さん本当に仲が良いですね」

パクーチはスピナッシュの首根っこを掴み引きずっている。

負けた息子はこの世が今にも終わるような顔だった。そこまで追い詰める必要はないのに。

「これのどこが仲いいと思うんだよ」

キャロは体を張って二人のケンカを止めようとしている。その姿をロマネスクは傍観している。


「アマツさん、もう一度聞きますがこの村に残ろうと思いませんか?」

何を言うかと思ったらそんなことか。

「勇者教に入る件は抜きに、ここはあなたが望む平和な場所ではないですか」

「なんべんも言わせるな、俺はお前の考え方があわないから嫌なんだよ」


パクーチはため息をついてロマネスクに視線を向けた。

「どうですか? お二人ここで新婚生活でも」

「そういう関係じゃないって言ってるだろ!」

ロマネスクは鼻で笑い「それは魅力的だが、マイフレンドが断るなら私も断る」

「それは残念です」


残念そうな顔をしたかと思ったら、次の瞬間には笑顔になっていた。

「では、これから四魔同盟の集まりがあるのですが来ませんか?」

グリオンたちそれぞれの一派の長たちが話合う場に行ってみたいという気持ちはある。


問題は二つある。

「四魔同盟ですか……」

グリオンと別れたキャロがものすごーーく気まずくなってしまう。

好きにしろと言われて俺について来てくれているけど、元上司と会うのは気まずいだろう。

二つ目が最も厄介だ。

「それは私も行ってもいいのか?」とロマネスク。


絶対にこいつと他の魔物を合わせちゃいけない……と思う。

だって、魔王バルフェルトを倒した張本人だし、グリオンなんてこいつの顔見たらすぐ襲うだろうな。

「行ってみたいと思うけど、遠慮しておきます……」

「残念です」と再び残念そうな顔をしていた。


「待ってよ!」

この場にいた全員がライを見た。

「なんだよ」

「ここなら望みが叶うんでしょ? オリブは強くなることできたんだし、バンカに会わせてよ」

その望みは叶うはずがない。

「バンカさんは死にました」

パクーチが言った。俺らが隠そうと決めていたことをあっさりと。

ここまでお読みいただきありがとうございます!


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