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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第二章 アマツ・ツカサは勇者の娘を育てる
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26 私の娘だから大丈夫

スピナッシュとオリブの対決が始まったのだが、完全に相手のペースになっていた。

剣を叩きつけられるとオリブは力負けしてしまい、後ずさっている。

「ほらほら、そんなもんかよ。やっぱり人間じゃ、魔族に勝てないかぁ?」

「っ!」


俺から見るとスピナッシュはさほど強くはないのだが、オリブは本調子を出せていないみたいだった。

防戦一方の彼女の姿を見て会場の誰もが、スピナッシュの勝ちだと思い、落胆の声を上げるものもいればオリブを馬鹿にする声が響いている。


「このままだとオリブさんが負けちゃいます」とキャロは慌てていた。

「べつにあいつが負けてもいいんじゃない?」

そう呟いたライの発言に尽かさず「それだけは困る! 俺があそこまで特訓したわけだからな」とげきを飛ばす。


「なんでアマツさまそんなに負けるのが嫌そうなんですか?」

対戦している二人を挟んで、余裕そうに笑っているパクーチと目が合った。

あの野郎……。試合はまだ始まったばかりだというのにもう勝ちを確信してやがる。


「オリブが負けたら、勇者教に入るって約束したんだよ」

「なんでそんなことしてるんですか……」

ライが俺の鱗を引っ張り上げながら「それじゃあバンカはどうなるの!?」と言った。

鱗が取れそう……まじで痛い。

「その時は、いてて、ライも勇者教に入れよ」

「それだけは嫌だ!」


「なら、オリブを応援しろ。これからも旅をしたいんだったらな」

「……はい、はい」

まったくこの魔女第二世は生意気で嫌になるよ。

バンカも変わらないけど、それ以上に扱いづらい。


「勇者教……か」

隣にいるロマネスクが呟いた。

「お前のこと信仰してるみたいだな」

「ああ、みたいだな」

「? 公認してんじゃないのか?」

「いや、良い言ったことはない。それにまずこの宗教を作った奴(あの女)は誰だ?」

公認じゃないのかよ、しかも認知までされてないって……。


「お、戦況が動いた」

オリブが盾でいなすのをやめて、剣での反撃を交え始めたからだ。

最初は相手の動きを見るのは正しい。相手の癖や間合いを把握するためだ。

反撃され始めたスピナッシュは、オリブに攻撃するが完璧な間合い管理によって反撃は当たらずにいる。


「クソ! どうしてあたらねぇんだよ!」

「さっきまでの威勢はどうしたの」

「調子に乗るなよ、人間風情が! 俺はお前みたいな偽物とは違う!」

スピナッシュが手をかざした。

あれは魔法を使う。危惧してたことが起きてしまった。


「火よ! 我に従え『アグニ』!」

スピナッシュの手のひらから魔法が放たれた。炎はオリブを簡単に包み込むほどの大きさだった。

俺やロマネスクなら対処できるが、今のオリブには無理だ。


「オリブ!」

「待て」

飛び出そうとしたが、ロマネスクに腕を掴まれて静止する。

「止めんな! お前の娘が死ぬかもしれないんだぞ、なにひょうひょうとしてんだよ」

「大丈夫だ」


本当に言ってるのか……。

また誰かが目の前で死ぬのは嫌だ。やっぱり止めるしかない。

かけとかどうでもいい。今はオリブのことが先だ。


「私の娘だから大丈夫だ、と言っているのだ」

「…………わかったよ」

ロマネスクの言っていること、いやオリブを信じるために俺は行動を起こさなかった。

すでに火はオリブの前まで迫っていた。彼女は逃げも防ぎもせずに立っていた。

火はオリブを包み込み、爆風が広がった。

場内にはスピナッシュしか立っていない。


「……やっぱりダメじゃねぇかよ」

「アマツ、先輩魔王として教えてやろう。魔王ならいついかなる時も余裕をもて」

それが自分の娘が死んだ時に言うセリフかよ。


「なんでお前が!」

スピナッシュが叫ぶ声で、視線を広場に戻した。

上空から無傷のオリブが降り、スピナッシュの上半身を斬りつけた。

「なんで」

スピナッシュと同じ問しか出なかった。

でも、その答えはすぐにわかった。


「火よ、我に従え『アグニ』」

スピナッシュが魔法を放つと、オリブを避けるみたいに火が拡散していく。

何度も何度もどの魔法を使えどオリブには魔法は届いていなかった。

「精霊術か!」


「一日かけて精霊術を習得するなんて時間がかかりすぎだ。心配させよって」

苦言を呈するロマネスクの顔はどこか嬉しそうだ。

昨日の夜から訓練していたのは、精霊術の習得だったのか。

「よく精霊と契約なんてさせたな」

「契約までもっていったのは私ではない、オリブだ。私がやっとこととしたら三万体の精霊を呼び寄せただけだ」

「え?」


精霊と会うのも確率低いのに、精霊を集めたの?

なんでもありじゃねぇか。

「ふ、普通そんなことできないんですけどね……」とキャロも驚いていた。

「うちは、大精霊のドゥルガーと仲いいからもっとすごいけどね」


ライが張り合うとロマネスクは剣幕で黙らせようとしていた。

「それがなんだ? 私の方がもっとすごいぞ、大精霊と契約している。それに精霊の秘宝(ランドマーク)をいくつも持っている」

「うちの方がもっとすごいから! ロマネスクよりすごいんだから!」

なにを張り合ってるんだ……。


どうせ言い負かされるんだから争わずに、オリブの応援を二人には専念してもらいたいな

「……た、確かにな」

「「「「え」」」」

あのロマネスクが相手を認めた? しかも、子どもだぞ。ライだぞ?

びっくりしすぎてキャロも口を開けてるし、このやりとりを見ていた他の魔物もびっくりしてる


「急にどうしたんだよ」

「わからないが、この小娘が急に私よりすごいと思えた」

ロマネスクの顔が青ざめていた。

「いやいや、ライの嘘だからな? 間にうけるなよ」


スピナッシュの叫び声で俺たちは話すをやめた。

「クソがァアア! 俺がお前なんかに負けるわけない。強さは正義なんだ、俺は強いんだ」

「正義とかどうでもいい、目の前の相手と戦う時にそんな信念とか気にする暇があるから負けんのよ」


スピナッシュの魔法を無視して、剣術だけで圧倒する姿はロマネスクと似ていた。

胴体に切り傷をいくつも付けられ、手足を切られていくスピナッシュには同情してしまう。

相手が悪かったとしか言えない。なんせこの世界最強のロマネスクと俺が鍛えたからな。


「あんたさっきからうるさい! 勝った時と戦ってる時うるさいのどうにかして!」

「?!」

オリブが盾を投げつけるとスピナッシュは盾を払う。

たった一瞬、視界を奪っただけでオリブの勝利は確定した。


「あたしの勝ち」

スピナッシュの背後にオリブは回りこみ、喉に剣を突き立てていた。

「…………」

「負けた時は静かなのね、それで言うことは?」

「……俺の負けだ」

ここまでお読みいただきありがとうございます!


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