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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第二章 アマツ・ツカサは勇者の娘を育てる
25/49

25 負けた時の言い訳考えてくれた?

「そんなものか?」

「くそ、このこのこのこの!」

ロマネスクとオリブが戦っているけど、完全に弄ばれてるな。


「落ち着け、相手の挑発にのるな」

「だって、全力で戦ってくれないんだもん!」

「私が全力で戦ったら貴様なんて一秒もかからずに消し炭だぞ」

うわ、娘に対してそんなこと言わなくてもいいんじゃないか……。


「やってみないとわからないじゃない!」

「やめとけ、俺にすら勝ててないんだから無理だろ」

「ほう? 言ったな?」

「きゃ〜〜!」

本当に一秒もかからずに吹っ飛んでいったよ。

言わんこっちゃない。


「手加減が雑すぎんだよ、俺とさっき戦ったみたいにしてくれよ」

「ふむ。わかった」

さすがは、最強。言われた通り次は俺と戦った時と同じくらい手加減していた。

それでもオリブはボロボロだけどアドバイスする余地はある。


「そこで下がったら相手に攻めてくださいって言ってるようなもんだろ、体制を維持しろ」

「っわかった!」

普段はしてくれないのにお母さんの前だからかちゃんと返事してくれてるから、やりがいがあるぜ!


オリブはやっぱり物覚えがいい。これならきっとスピナッシュに勝てる。

特訓は、かれこれ休憩なしに三時間も行われた。日はすでに落ちて辺りは真っ暗だ。

三時間前と今では動きに雲泥の差がある。剣術においては、そこらへんの魔物に勝てるだろう。

俺の見立てでは、剣だけならグリオンや他の四魔同盟くらい倒せると思う。


ただ問題があるとしたら──。

「魔法を使われた際どうするか」

「今のあたしなら簡単に避けれるわよ」


「それ以上に簡単な話がある、オリブこっちに来い」

ロマネスクはオリブを連れてどこかに連れて行こうとしている。

もう夜遅いし、これ以上の稼働はオリブの身がもたなくなってしまう。


「おいどこ行くんだよ」

「女と女の秘密ごとだ」

そうですか……。

まぁ遅くならなければ別にいいかな。


*****


朝起きると隣にはロマネスクがいた。

それぞれのベッドがあるというのに、何故か俺の布団に入り込んでいる。

「おい、起きろ」

「まだ眠いぃ」


「おい毛布を引っ張るなよ、寒いって!」

布団の中でじゃれ合っていると、部屋の扉をノックする音が響いた。

そして、扉が開きパクーチは興奮した様子だった。


「アマツさん! 失礼します。ロマネスクさまがここにいるって聞いたのですが本当ですか?」

「本当だよ、こいつをここからどかしてくれよ!」

「私とアマツの朝を邪魔するな」


うわ、すごい眼光……。眼光だけでパクーチが鼻血出してるし。

パクーチは鼻血を拭き取り、ニヤニヤとし始めていた

「もしかしてお二人は、そういう……あらあら~」

「違う!」

やめろ、その目線。絶対変なこと考えている。


「これからは、ロマネスクさまとアマツさんをセットで信仰したほうがいいですかね」

「それだけは、やめろ」

「なにやってるんですか!? アマツさまから離れてください!」「うちも混ざる~」

騒ぎで目を覚ましたキャロはライが布団に入ってくる。


「ちょっと、ちょっと。お前ら入ってくんな──うぉ!?」

布団から左半身や尻尾がはみ出て、しまいには俺だけ落とされる。

竜一体と三人乗って壊れないベッドは異常だし、なんで俺だけ出されんだよ……。

「オリブさんはどちらへ?」

パクーチに言われて気づいた。昨日の夜から戻ってきてない。


「おい、ロマネスク。オリブは?」

「まだ続いているのか」

「早く戻らないと、スピナッシュとの試合が始まるだろ。探しに──」

「行かなくていい。試合までには戻る」


ロマネスクが言うんだったら、信じるしかない。

最後に稽古していたのは、こいつだし。

「別に日付ずらしてもいいですよ?」

「そこの魔物、聞いていたか? 今日の試合までにはオリブは戻ってくる」

「そうですか……。それでは、また後で会いましょう」

パクーチが扉を閉めて出ていった。


「なにを教えて──」

「ロマネスクさまと同じ空気を吸って、さらには話してしまいましたわぁ!!!」

廊下からすごい大声が響いた。どたどたと走り去る音までもデカい。

「う、うるさ」

「なにを教えてたかは後のお楽しみだ」

「っしゃああああ! スピナッシュ絶対勝ちなさい!」

「そんなこと言わずに──アイツさっきからうるさいな!?」


結局ロマネスクからなにをしたかは、教えてもらえなかった。

とうとうオリブとスピナッシュの決闘の時刻になり、広場には多くの魔物たちが見物してきた。

「おいおいおい対戦相手が逃げちまったのかぁ?」

スピナッシュは高らかに笑っていた。


「あの長鼻をへし折ってやりたいな」とロマネスク。

「お前が出たら、オリブが戦う前に終わっちまうって」

「オリブさんまだですね……。自分とライさんで探しに行きましょうか?」

「えええ、うちもぉ」

短い間だけど一緒に旅した仲なんだから、探すのそんなに嫌がるなよ……。


「もう探す心配はないぞ」

オリブは颯爽と魔物たちの頭上を飛び越えて、広場の中央に立つ対戦相手の前に立った。

傷や泥はついていなかった。

夜遅くまで特訓してんたんじゃないのか……? その割には綺麗だ。


「待たせたわね」

目の前に現れたオリブを見て、依然変わらずスピナッシュはひょうひょうと笑っていた。

「逃げたかと思ったぜ。また負けたらどうしようってな」

「あたしが来るまで、負けた時の言い訳考えてくれた?」

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