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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第二章 アマツ・ツカサは勇者の娘を育てる
22/49

22 強さとは、正義です

昨日降った雨のせいで、俺の役職は変態魔王になってしまった。

ふざけんな。誰が降らせたかもなんでかもわからない。

きっと誰かが野菜を育てるために使ったんだろう。


俺が昨日ことを思い出していると、パクーチが話しかけてきた。

あ、別にキャロたちの全裸を思い出したわけじゃないから。


「おはようございます、アマツさん」

「おはよう」

「私の息子が失礼なことをして申しわけありません」

本当はもっと早く謝りたかった、とパクーチは心の底から申しわけなさそうだった。

「謝らないでください、オリブだってスピナッシュに対して酷いこと言ってますし」


「お互い大変ですね、子どもを持つというのは」

「ええ。え?」

「はい?」

「オリブは俺の子じゃないですよ?」


あらら、とパクーチは上品に笑っていた。

「てっきりロマネスクさまとの子どもかと思っていました」

「俺この世界きて一年も経ってないから子どもはできないですよ」

「もしかして……まだ経験がないということですか?」


「そうですよ! はいはい!」

なんでこの世界でもそんなにこだわるのかなぁ!

別にしてようとしてなかろうと、どうでもいいでしょうが!

パクーチがいつの間にか肌が触れ合う距離に立っていた。


すごい近い。大きな胸が胸に当たってるんだけど???

「……あの?」

パクーチは手を伸ばして俺の肩に触れたと次には、耳元でささやいた。

「私でもいいですよ」

「え? ちょ?! はぁ!?」

なんて言えばいいかわかんないんだけど!

とうとう俺もいいですか!? でも、竜ってそういうことできるのか???


「ふふふ、反応が面白くてつい」

「か、からかってるんですか!」

「だって、見た目がバルフェルトさまなのにそんなウブな反応するんですもの」

童貞いじりの次は容姿でとやかく言うのかよ。


「前から気になってたんですけど、バルフェルトってどんな奴だったんですか?」

キャロやグリオンは彼について肯定な意見を言っていた。

だけど、バンカや他の魔族からあまりいい意見を聞かない。そのせいで、魔族が分断しているほどだ。


「あの方は上に立つべき魔物ではなかったんです」

上に立つべきではない……。

ロマネスクみたいに統制が取れていなかったのか。


「小物が力を持ったせいで上に上がっただけなんです」

パクーチは吹き出すみたいに笑った。そして話を続けた。

「だって、魔王なのに自分がやられそうになったら誰よりも早く逃げるんですよ」

「えええ……」

なんという三下だ。そんなのが自分の上に立ってたら荒れるに決まってる。


「でも、優しかった。自分がクズって知ってるからこそ弱い魔物にはとことん優しかったんですよね」

キャロはこの体、バルフェルトを優しいと言ってたな。

「優しさがあっても無駄ですけどね、結局あの方は負けました」

「そんなことはないだろ」


優しさがあるから、誰かがついてくるし救われることだってある。

負けとは一切関係ない。


「ロマネスクさまは強い。強ければなんでも手に入ります」

「アイツは強いだけだよ。パクーチが信仰しようと守らないだろうな」

「守りますよ。現にロマネスクさまは自分より弱い人間たちを従えてるじゃないですか。

きっと勇者教に入っている我々も救ってくださいます」

「そこまでアイツにこだわるのはなんだよ」


「強さとは、正義です。

強くなければ、生きていけません。強者と共にあれば弱者である我々をきっとお救いくださる

魔王バルフェルトが破れ、居場所のない我々はこうして生きていけるのも主のおかげです」

「はッ。ロマネスクのことなにも知らねえだろ。それに強ければ誰でもいいのか」

「……はい? 当たり前じゃないですか、強ければなんでもできるんですから」


強ければなんでもできる?

弱者を救ってくれる?

こいつさっきから何を言ってんだ。

つまり、自分で強くなろうともしないで、強い奴のすねをかじって気楽に過ごすってことだろ。


「やっぱりここは、気に入らねぇ。泊めさせてもらって申しわけねぇけどよ」

誰がなにを信仰しようがどうだっていい。

俺が気に入らないのは、強さに執着するところだ。

「そうですか、それは残念です。

前世でロマネスクさまを倒したあなたなら共感してくれると思ったのですが」


「共感するわけねぇだろ、自分の身は自分で守れよ」

「それをオリブさんにも言えるのですか?

あの子が強くなれるとは思えませんけどね。精霊術すら使えないただの人間ごときが」

「強者にべったりくっついてるだけの奴と違ってアイツは、自分から強くなろうとしてるお前らとは違ぇよ」

「ならスピナッシュとオリブさんが戦って、スピナッシュが勝ったら勇者教に入ってください」

「いいぜ、オリブが勝ったらオリブを馬鹿にしたことスピナッシュと一緒に謝ってもらうからな」

オリブのこと馬鹿にしたこと後悔させてやる。

俺が強くさせたんだ。誰にも文句言わせない。

「わかりました、明日の昼戦いましょう」


*****


宿に戻るとオリブは腹筋を鍛えていた。

「魔王、どこ行ってたのよ」

「スピナッシュと明日の昼戦うことになったからな」

「やっと決着つけるときが来たわね」


オリブは腹筋をより一層鍛え始めた。やる気があるのはいいことだ。

ライがご飯を口に含みながら話し始めた。


「オリブぐぁふぁてるふぁくりつは?」

「なんて言ってるかわかんねぇよ」

「オリブが勝てる確率は今のところどれくらいなの?」

スピナッシュの全力を見たことないから、なんとも言えない。


「憶測だけどな、十回やって一回勝てるくらいだろうな」

「めちゃくちゃ低いじゃない」

「アマツさまの言う通りだと思いますよ」とキャロ。


「魔王の言うことなんでもかんでも肯定するんじゃないわよ」

「で、でも正しいんですもん。だって彼魔法使ってないじゃないですか!」


そうそこが大きく勝敗を分ける。

魔法を使えるとしても、俺みたいに一つしか知らないのか。

それとも、複数持っていてロマネスクや他の魔族みたいに強力だったら勝てる見込みは薄い。


「あとな、原始の魔法(ユニークスキル)をアイツが使えたらオリブの負けだ」

「それくらいどうとでもなるわよ!」

「精霊術すら使えないのにか?」

「……うぐ!」


精霊術が使えれば、勝率は大きく変わっていたけどなぁ。

「ドゥルガーに頼めばいいんじゃない?」とライ。

「ふふふ! 残念ながら、俺と契約してるから無理なのであーる!」

「はぁ!? あたしも大精霊と契約したい!」

「どうだ、羨ましいだろ」


「それか、ドゥルガーに精霊連れてきてもらって契約すればいいんだよ!」

確かに、それは名案だ。

たくさん精霊を連れてきてもらえば、誰かしらオリブと契約してくれるはずだ。


「嫌だ!」

「え、なんでだよ。何かしら精霊術使えるようになるかもしれないんだぞ」

「そんなズルい方法で欲しくない!」

うわ、すごいごもっともなこと言われた。

さすがは、勇者の娘だな。


「それにお母さんも大精霊と契約したからあたしも大精霊と契約したい」

「そっちが本音だろ」


やっぱり大精霊と契約した方が強い能力が手に入るんだろうな。

「本当にいいのか? スピナッシュに勝てるかもしれないんだぞ」

「いいもん。あたしだって、いつか大精霊と契約してやるんだから」

「ふ、偉いな。褒美に頭を撫でてやろう」

「撫でるなー!」


俺が頭撫でるなんてほんとうは珍しいことなんだけどな。

こうやって自分でがんばってるやつは、応援したくなるし可愛がりたくなるもんだ。

「王道に、努力してスピナッシュの野郎をぎゃふんと言わせるか」

「当たり前じゃない!」

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