21 変態魔王
次の日──。
雲一つない青空の下、木の棒を片手に意気揚々と話し始めた。
「さぁ、始まりました! オリブVSライの底辺同士の争い!」
「底辺って言い過ぎですよ……」
「実況はアマツ、解説はキャロさんでやっていきます!」
「え? 自分が解説ですか!? が、がんばります」
リングに上がったオリブとライは、それぞれ準備運動をしている。
「キャロさんは、どっちが勝つと思いますか?」
「やっぱり武器を持ってるオリブさんじゃないですかね」
「なるほど、なるほど。オリブが勝つのに金をかけるということで」
「言ってませんって!」
俺もキャロと同じくオリブが勝つと思っているが、ダークフォースのライがどう動くか気になるところだ。
開始のゴングがなる前に、二人の対決は始まっていた。
泥団子を投げて逃げるライに対して、追いかけるオリブという構図だ。
やっぱりガキのケンカにしかならないか……。
「あんたさっきから逃げてばかりじゃない! さっきまでの威勢はどうしたのよ!」
「真剣でくるアホがいる?! 切られたら死んじゃう!」
「大丈夫。死なない程度に切り刻んであげるから。そうすればキャロが治してくれるわ」
「え、自分が治すんですか……」
肉片になったライを嚙んで治すキャロの気持ちになってあげてほしい。
「うちは、ただ逃げてるだけじゃないから」
ライが上空を指さした。
「あ、雷!」
「は? 雲一つないのに、雷なんて落ちるわけないじゃない!」
ライのわかりやすい噓に戸惑うことなくオリブは切りかかった。
「ッチ。ひっかからなかったか。でもうちの狙いはそれじゃない!」
「!」
オリブが落とし穴にハマった。
一瞬でも気を逸らすのはうまいな。ずる賢い奴だ。
「ふふ。昨日から穴を作ったかいがあった。穴掘りすぎてそこらじゅうにあるよ」
モグラかよ。
「さて、手も足も出ずまい! それ、それ!」
オリブは頭だけ穴から出ているが抵抗ができずに顔を蹴られていた。文字通り手も足も出ない状態だ。
ライは勝ちを確信して笑いながら顔を蹴ってる。
「悪魔の諸行だな……」
「魔女を超えて悪魔ですね……」
「これくらいであたしが負けるわけないじゃない!」
「痛ァ!」
ライはオリブに嚙まれてその場を離れた。その間にオリブは穴から抜け出した。
「噛むとか、必死すぎ。ダサ。別に負けていいじゃん。死なないんだし」
「ダサいとか死なないとかどうでもいい! あたしは負けるのが嫌なの! あたしのプライドが許さない」
「ほんと負けず嫌いだな! アマツがずっと戦って嫌になるのもわかる」
「俺がどれほどしんどかったか、わかってくれるか」
来る日も来る日も襲われて、ゆっくりできなかった。
「ええ、泣くほどですか」
またライが逃げて、それをオリブが追いかける構図が始まった。
ずっとこれを見せられるのは泥仕合すぎる。
「あ! あそこにロマネスクがいる!」
「え!」
あちゃー。こんなところにアイツがいるわけがない。
オリブのことを理解したライの巧妙な噓に、オリブはひっかかった。
戦闘中だというのに、対戦相手からガッツリ目を逸らした。
「バカが見る!」
ライがオリブに殴りかかっていた。
勝ちは見えたな。
「あんたがそうくることわかってた!」
オリブは目を開けてライの拳を避けた。
そして、カウンターが炸裂した。
「ッブ!」
ライの鼻にオリブの拳が当たり、ライは転がっていった。
「「おお~」」
まさかのオリブの勝利、キャロとそろって声をあげてしまった。
「よく目開けてたな」
「余裕!」とオリブはピースをしていた。
こういうところは、ロマネスクと違って可愛げあるんだよなぁ。
「思いっきり殴るなよ! 痛いなぁ」
鼻血をキャロに止血してもらっているライが泣いていた。
「ほら、仲直りしろよ」
「嫌だ。あたしの勝ちだから」
「絶対泣かす!」
ライとオリブが取っ組み合いし始めていた。
「やっぱりガキだなぁ」
「「なに!」」
「なんでもありません──。ん、雨だ」
ポツポツと降っていた雨がいつの間にか、雨脚が強まり雷まで発生してる。
さっきまで晴れてたのに、急な雨。それに、この雨は普通の雨じゃない。
魔力が混じってる。つまり、誰かが作為的に降らした。
「アマツさま、風邪ひきますよ。早く行きましょう」
「ああ」
*****
「火よ我に従え『アグニ』」
宿に戻り濡れた鱗を火の魔法で乾かしていると
「すみません。自分たちは風呂に入ってきます」
キャロがガキ二人連れて風呂場に連れていった。
「気にすんな、俺はトカゲ──じゃなかった竜だからこれくらいへっちゃらだ」
「覗くなよー」とライがニヤニヤしてるやがる。
「誰が覗くかよ」
それにしても、雨は誰が降らしたんだ。
魔法は言葉で絶対に唱えないと使えない。
バルフェルトの耳は半径一キロの音が聞こえるだが、俺の耳には誰かが詠唱している声は聞こえなかった。
雨を降らして、なにもしてこないのも薄気味悪い。
「きゃー!」
オリブが叫ぶ声が聞こえた。
まさか敵襲か!
「大丈夫か!」
風呂場に急いで向かうと、オリブが泣きながら俺に抱きついてきた、
「た、助けて!」
「敵か! 火よ我に──」
「アマツさま違います!」
「え?」
キャロの片手には、猫じゃらしがあった。
「ライさんが毛虫だと噓ついて、オリブさんに見せたら驚いてしまっただけです」
け、毛虫と勘違いかよ。
「なんだよ、人騒がせだなぁ。ロマネスクじゃなくてお前が毛虫苦手なんだな」
「~~~~! なんで風呂来てんの! 変態!」
三人ともすっ裸だった。別にわざとじゃないんですよ。信じてください、
「これは、違くてだな。恐れいりますが、その炎上を控えた発言をするとしたら、お間違えがないようにいうとしたらですね……」
「すごい枕詞が長いですね」
「早く目閉じろ。変態魔王」
「おいおい。オリブ目閉じると攻撃が防げないって教えただろ」
「うるさい!」
オリブに殴られる瞬間、俺は恐ろしくて目を閉じてしまった。
俺もまだまだだな。
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