20 モグラ叩きのモグラになってもらう
オリブとの特訓を始める前に一つやることがある。
今まで戦ってきてわかったけど、こっちが攻撃するたびに目を閉じてやがる。
「さては、お前意外とビビリだろ」
「っな! そ、そんなわけないじゃない!」
「毎回目閉じてるからこっちの攻撃に反応遅れてやられんだよ」
「だって、怖いものは怖いじゃない」
今まで戦ったことないんだから怖くなるのも仕方がない。
でも、こればかりは直さないと勝てない。
「よし、これからモグラ叩きのモグラになってもらう」
「? どういうことよ?」
「俺が尻尾でオリブを叩くから両手で防いでみろ」
「それだけ?」
「ただし、ご飯を食べてる時、寝ようとしてる時、いつだって俺は攻撃するから」
「別にいいけど。そんな特訓だけじゃ強くなれないじゃない」
「もちろん、これ以外にも鬼のようにシゴかせてもらうからな」
まずは、基礎をみっちり鍛える必要がある。
幸いにもオリブは軍隊で筋トレや走り込みは一緒にやらせてもらってたみたいで、体力はあった。
「剣術が微妙なんだよなぁ」
運動神経がいいから敏捷に動いて攻撃するのは、いいけど防御がおろそかになってる。だから、ワンパンでやられる。
それに我流だからか剣技にキレがない。ツッコミどころが満載だ。
「片手剣だけでどうして戦うんだよ」
「お母さんがそうだから!」
なるほどねぇ……。
ロマネスクの戦い方を参考にしてるからかぁ。
正直言ってアイツの戦い方は参考にならない。
ロマネスクは人間離れした体力、肉体、戦闘センスがある。
毎日息をするように百キロを走り込み、腕立て伏せやスクワットなどの筋トレを千回やってる。(本人が自慢げに戦いながら言ってきた)
それに加えて、魔力による身体強化をしてるときた。
人類の最高到達点に普通の人間が努力したってたどり着けるわけがない。
「片手剣と盾を使おう」
「盾ぇ〜〜」
すごい嫌そうな顔してる。
「軍隊で使ってるだろ」
「重くて嫌だ」
「守りにも攻めにも使える有能な武器だぞ。
それに目を瞑ったとしても盾が間に合えばダメージを追わなくて済む」
「えええ……」
もっと嫌そうな顔してるし。
「片手剣だけで攻撃防げてないようじゃ話にならんって」
「わかったわよ……」
こいつ今絶対気抜いてるだろうなー。
素早く尻尾でオリブの頭を叩くとバシン、と愉快な音が鳴った。
「痛い! なにすんのよ!」
「いつだって攻撃くると思えよー」
「ふざけやがって!」
むきになって、すごい殴ってくる痛いんだけど。
防げてない君が悪いんだからね???
「さっさと修行始めるぞ」
「そうだった! あたしを三日で勝てるようにしなさい!」
「何言ってんだ、一日あればスピナッシュの野郎を倒せるようにしてやるよ」
「ほんと?!」
「ほんと、ほんと」
オリブに盾を持たせたのは、前世で俺は剣と盾を使っていたからだ。
ロマネスクを倒した俺が教えるんだから、戦闘ド素人のオリブさんを一日で鍛え上げてあげますとも!
*****
特訓していると、オリブが切りかかってきた。
「魔王の首とってやるわ!」
「俺の首まだ狙ってんのかよ」
特訓に付き合ってやってるのに、命を狙われるのは勘弁してほしいもんだ。
オリブの剣は俺の喉仏すれすれを通りすぎた。
大振りだから必要最低限の動きで十分だ。
「まだ防御がおろそかになってるんじゃないか?」
右手で掴みかかると、オリブは反応が遅れたが盾で身を守った。
ちゃんと盾を使って偉いな。でも、次の攻撃に備えてなきゃ意味がない。
尻尾で薙ぎ払うとオリブの横腹に当たり、吹っ飛んでいった。
「ッ~~! そんな思い切りやってくる?!」
「命奪ってきてるやつがよくいうよ」
特訓が始まって早三日、オリブは軍隊の兵隊長クラスには強くなったと思う。
やっぱり俺って教えるセンスあるんかなぁ~。
「自分が教えるの上手いと思ってるでしょ。残念だけど、あたしのセンスがいいから!」
「俺の考えてること当てんな!」
オリブが自画自賛するのは、癪だけどあながち間違ってはない。
吸収が早い。今まで独学でやってきたとしても、言われたことはすぐできるからセンスはある。
「まだビビってるのがダメだな」
「ビ、ビビってないし!」
「よくいうぜ。俺が掴もうとしたときすごい顔が引きつってたぞ」
髪がクシャって丸められたみたいに、目を閉じてしわが寄ってた。
「それに盾の使い方がまだまだだなぁ。守りにしか使ってないのもったいないぞ」
「ビビってないし! じゃあ盾の良い使い方教えてよ!」
「いいぜ、盾貸して──」
話してる途中にライとキャロが話しかけてきた。
「ねぇ、二人ともなにしてんのー?」「そろそろ夕ご飯にしましょう」
ぐーぐー、とライのお腹は鳴っててうるさい。
「これから特訓するの! 盾の使い方教えてよ!」
「また今度な。ご飯も大切だぞ、それに特訓はご飯の時だってできる」
「そうだったわね、まぁいつでもかかってきなさいよ!」
食卓には、白飯や野菜炒め、味噌汁、ラーメンなど様々な食品が並んでいた。
俺たち四人は食卓を囲って楽しく話しながら食べていた。
食事は楽しくだけど、オリブは今も特訓中だから気を抜いてもらっては困る。
横に座っていたオリブの頭を尻尾で叩くと
「痛ァ! ご飯の時くらいやめてよ! いつだってはダメ!」と頭を抑えていた。
「さっきまでの威勢はどうしたんだよ???」
こいつ一級フラグ建築士か。
ご飯食べる前まで五回も頭叩かれたし。
「でも、叩かれ慣れたおかげか目は瞑らなくなったな。俺が早すぎて防ぐのは間に合ってないけど。」
「あんたの攻撃を防ぐのも時間の問題ね。そして、スピナッシュとかいう野郎をけちょんけちょんにしてやるんだから!」
燃え上がる闘志はいいことだ。スピナッシュを倒すことに専念して俺を襲わないでほしいな。
「オリブくらいだったら、うちでも勝てそう」とライ。
「はぁ!? そんなわけないじゃない! 戦って負けるのはそっちよ」
「なんだぁ。負けるの怖いんだぁ~」
めちゃくちゃ煽るな。
この二人が戦ったところでガキのケンカにしかならないだろうなぁ。
いや、今のライは『呪い』がある。──でも、その能力はなんだ?
能力によっては化けるかもしれない。
「ばーかーばーかー、うんこ! お前の母ちゃんでべそ!」
「お母さんを馬鹿にするな! 表出なさい! このガキ。あたしに勝とうだなんて、一万年早いわ!」
やっぱりガキのケンカにしかならない気がする……。
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