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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第二章 アマツ・ツカサは勇者の娘を育てる
17/49

17 北へ

「おい、起きろー」

何度かビンタするとライが苦しそうに声をあげた。

「……うぅ。痛い」

痛みがあるってことは生きてる証拠だ。


「お、生きてる」

「ケガはありませんか?」とキャロ。

「ここは? ……どこ?」

住居や村にあったありとあらゆる物が消えている。

寝ざめにこんな風景みたら戸惑うよな。


「一応ネフェルト村だ。お前が寝てる間に色々あったんだ」

「なにがあったの!?」

「ロマネスクがきて戦った結果、こうなった」


「これが勇者の全力なんだ」

「いやぁ、まだあいつ何か隠してそうだから全力じゃないな」

「あれでですか!?」

「基本あいつは奥の手を隠してるからな」

きっと精霊の秘宝(ランドマーク)も国に渡してないのを隠して持っているに違いない。

それに、あの異空間にあった魔剣が気になる。


「……あれ?」

ライが周囲をキョロキョロとしてる。

「どうしたんだ?」

「いない! バンカがいない」


「……」

俺もキャロも何も話さなかった。

「アイツ、あたしに外で一緒に生活するって約束したのに!」

「そんな約束してたのか」

「兵士と逃げてるときに──……。どうしてあたし生きてるの」


「……バンカが俺らを呼んでくれたおかげで助かったんだ」

噓をつくのは、本当は嫌なんだけどな。

ライが起きるまでの間にドゥルガーと俺たちは共犯になった。


*****


「魔女のおかげであの子が生きたって伝えないであげてくれェ」

「はぁ? そんなことしてどうなんだよ」

バンカのおかげで生きてるんだから、隠す必要はないはずだ。


「魔女のおかげで生きただなんて聞いたらライは傷つくゥ」

「そうかもしれないけど、俺は伝えるべきだと思うぜ」

助けられた命だからこそ、代わりとなった人の分まで生きるべきだ。

「自分もそう思います」とキャロは続けて話す。

「いつかは気づくと思います。

それにバンカさんが命を呈したのにそれを秘密にするのってあんまりじゃないですか」


隠す理由が特にないなら伝えるべきだ。

バンカが繋げた命なんだから、大切に使ってもらわないと困る。

「あの子のためならなんでもやる。だから、噓をついてくれェ」

「……どうするか。たかだか傷つくだけだろ」

「こんなことしてまで、ライは魔族になりたかったわけじゃないだろうゥ」

「お前が戦って守ってやればよかったじゃねぇかよ!」

「君との戦闘で力がなかったんだァ」

そんな身勝手な話あるかよ、クソ。


「自分はアマツさまに従います」

「少しくらい自分の意見出してもいいんだぞ?」

「どうすべきか、わからないですよ。だ、だって、伝えたらライさんが死ぬかもしれないですよ」

確かに答えをすぐに出しかねるな。


「なんでもやるって言ってたけど、何してくれんだよ。もう精霊の秘宝はないだろ」

「精霊たちに【ナーガ】の代わりになるものがあるか聞いてみるゥ」

「それだけかよ」

「図々しいなァ。なにが望みだァ」


「今はぱっと出ないや、とりあえず一緒に行動しようぜ」

大精霊が一緒に行動してくれるんだ、いつかは役に立つだろ。


「そんな保留されたら困るなァ。そうだ、合言葉を決めようゥ」

「合言葉?」

「『ダルマさんが○○』と言ったら、その時にしてほしいことを一回だけしてあげようゥ」

「わかった、なにかあったら呼ぶな」

ロマネスクと戦うときになったら、ドゥルガーを盾にして逃げるか。


「ボクを盾にしようとか思ってないだろうなァ」

「オモッテマセンヨ」

「ほんとかねェ。それじゃあ、約束通りライには本当のことを伝えないでくれよォ」


*****


ねぇ、とライが声をあげた。

「おい、トカゲ聞いてるの?」

「なんだよ。あと俺はトカゲじゃないみたいだぞ。そう言うと過激派が出てくるぞ」

「バルフェルトさまはトカゲじゃないです!」

ほら、言わんこっちゃない。


「バンカはどこにいるの?」

「……さきに旅へ出てる。これから合流しにいく」

かくして俺たちは、噓つけの少女に噓をつくようになった。


「だから! どこにいるのって聞いてるの!」

「あそこだよ、あそこ」

適当に指さすと犬みたいに走って見に行った。

「どこ?」

やっぱ噓つくなんて俺にはできない!


「バンカさんは魔族の国の北部にいますよ」

「そうそう」

「じゃあ、そこに行こう」


ライが走る姿を見て、聞こえないようにキャロに話しかける。

「どうして北にいるって言ったんだよ」

「とっさにです……」

「適当すぎだろ」

「アマツさまだって噓下手くそすぎますよ」

「北へ行って何かあるのかよ」

「四魔同盟のうちのひとつが、束ねている領土があります。

そこだったら、アマツさまはゆっくりできると思います」

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