13 不変の理
いざロマネスクと戦おうとしたときに、バンカが口を開いた。
「ちなみに、勝算はあるの?」
「あるからロマネスクと戦うに決まってんだろ」
「え、そうなの……」
「何その反応」
「そうですよ、アマツさまはいつも計画立ててるんですから」
そうだ、そうだ。俺はいつだって計画的なんだよ。
「いやいや、最初なにも考えずに戦ってたじゃない」
「そ、そんなことはないかなー」
「噓つけー」
「戯れはもう終わりにしてもらおうか」
あーあ、バンカさんのせいでロマネスク先生に怒られたー。
「待たせたな、俺はいつでもいいぜ」
また目の前から消えた。
こいつの精霊術は、空間移動なのか。
しかも物の出し入れができるときた。便利で羨ましいねぇ。
「さきほどの問いだが、アマツどうしてインビジブル・コートを脱いだ?」
「お前をぶん殴りたかったからだよ」
「前回あったときは私がランドマークの破壊という目的があったからいいが、今回は完全にお前を殺しにきたんだ」
「そんなの知ってるんだよ」
「……ほんとに勝てると思ってるのか」
「何度も確認すんな、男に二言はねぇよ」
とは、言ったものの上手くいくかわかんねぇんだよなぁ。
だってさ、ロマネスクの今のスペック思い返すと
・空間移動(しかもめちゃくちゃ速い)
・防御無効の攻撃
・その他未知数(きっとまだ精霊の秘宝隠し持ってる)
ってズルくね?
「勝てるわけねぇとか思ってる顔だな」
「ぅ。どうしてわかんだよ」
「前世からの付き合いだからな」
「相手が強いからって逃げる理由にならない」
「そう言うと思ったよ。マイスイートハート」
とか言ってまた消えては現れては、攻撃してくるのやめてほしいぜ。
このままこいつに好き勝手されるのは、嫌だな。
しょうがない。使わせてもらうぜ、ドゥルガー。
「『不変の理』」
不変の理を発動して移動した場所が、白一辺倒の景色に黒い剣が一本だけ置かれてる。
がらんどうで味気がないな。
アイツはいつもここに来てんのかよ。俺の顔見るなりロマネスクは声をあげた。
「どうして、アマツ。貴様がここにいる」
「お前の能力をコピーさせてもらったんだよ」
「コピーだと……」
やっぱりロマネスクの驚いた顔は、おもしろいなぁ。
俺はこいつをこういう顔にするために、こいつと戦ってるんだろうな。
「あの剣なんだよ。聖剣……なわけないか」
殺風景のこの空間に、不気味に置いてある黒い剣は異様な存在感を放ってる。
「あれは魔剣だ。気に入らない奴を殺す時に使う」
「俺に使わないってことは、気に入ってもらってるんですねぇー」
「まぁな」
照れもしないって本当にこいつは可愛げがないな。
「魔族である貴様がなぜ精霊術を使えるんだ」
「話すと長くなるから、ゆっくりしようぜ」
「そうか。受け取れ」
ボトルとグラスを渡された。
ボトルの中の赤い液体の匂いを嗅ぐとアルコールの匂いがした。
「ワインか」
「長話するんだ、酒がなくては退屈だろう?」
それじゃあ、お言葉に甘えて飲みながら俺が『精霊術』を使えるようになった話をするか。
*****
ドゥルガーに勝って、村に戻るまでの間、話をしていた。
「ボクを脅す奴はじめて見たよォ」
「勝ちは勝ちだからな。あなた負け認めましたよね?」
「言うねェ、そうだ君と契約してあげるよ」
「契約?」
なんか変なことされないか怖いんだけど。
もしかして、マルチ商法ってやつ?
魔法無効化できる壺買わされそうになった時のこと思い出して気分悪くなるな。
「君に『精霊術』をあげるって言ってるんだァ」
「人間しか使えないんじゃないのかよ」
「見た目は魔王、中身は人間じゃないかァ」
中身で判断してるってことか。恋愛じゃねんだから、そこらへんしっかりしてくれよ。
でも、今回はその曖昧さのおかげで力が手に入るから助かるな。
「珍しいんだ、こういうのはァ。君みたいに魔物に転生する元人間は滅多にいない」
「というと?」
「どの世界でも人間は死ぬと精霊になるんだァ。だから、精霊は人間に協力的なんだよォ」
スピリチュアルな話はやめてほしいな。
「とにかく俺は中身は人間だから『精霊術』使えるってことか。どんな力なんだ?」
「使えばわかるさァ。名前は『不変の理』だ。呼べばいつでも使えるゥ」