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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第一章 アマツ・ツカサは魔女と旅をする
12/49

12 教えてやるよ、三流勇者

「じっくり焼いたって、そいつは上手くならねぇよ」

「貴様は! 魔王バルフェルト!」

「俺は魔王じゃねぇよ」


目の前にいた兵士を尻尾で薙ぎ払うと、すぐに血を吐いて倒れた。

こいつのことよりも心配なのはバンカだ。


「バンカさん!」

「大丈夫か?」

「……大丈夫に見える?」

「あははは。見えねえ」

「何笑ってんのよ」


「キャロ、治してやってやれ」

「はい!」

キャロがかじると、バンカの腹の傷が治っていく。

「ライは」

「もう死んでる。絶対にこんな結末許さない」


バンカがここまで激情するところ初めてみたな。

死んだ人はもう生き返らない。今できることを俺はするしかない。


「……そうか」

ドゥルガーとの約束を果たせなくなったのは、あいつに顔向けできないな。

バンカを傷つけて、村に火を放ち、ライを殺した。

これが人間のやることかよ。


兵士の首根っこを掴みあげる。

「おい、起きろ」

「俺を尋問しても無駄だぞ」

「聞きたいことは一つだけだ。どうして村に火を放った」


こいつ鼻で笑いやがった。気に食わないな。

「魔族の仲間である魔女に加担したからに決まってるだろ。敵対する魔族はこの世から消す。それに加担する奴も消す。だから火を放った」

「それってお前の考え方かよ」


頼むから、俺が聞きたくもない回答すんなよ。

「もちろん、ロマネスクさまのお考えだ」

「そうかよ」

尻尾で首を絞めて気絶させておこう。


さて、これからアイツをしばくか。

俺がしようとしていることに気づいたのかキャロが声をあげた。

「アマツさま、なにを? ──! おやめください!」


着ていたインビジブル・コートを脱ぎ捨てる。

すると、あら不思議目の前にロマネスクが現れた。


「さぁ──元魔王による魔王退治を始めよう」

「すぐ来てくれるなんてな。すごい便利だぜ」

マントを脱いで一秒もかからずに、すぐ来てくれた。


「貴様、アホなのか? どうしてそれを脱いだ」

「ロマネスク、一つ聞きたい」

「問うてるのは私だ」

「テメェの質問はどうでもいいんだよ。

魔族を追い詰める理由を言え」

「勝ったのだから、奪って当然だ。

お前も前世ではこちら側だったからわかるだろ?」


負けた奴らは奪われる。確かに、そうかもしれない。


「お前、俺のことも勇者がなんだか何もわかってねぇな」

「ほう」

人間だった頃は、仲間や家族を守るのに必死で戦ってきた。

奪われたから、奪うなんて陳腐だ。


「私にとっては、勇者は──奪い。闘い。民を従える。偉大な者だ。それをお前と戦って学んだ」

「まじでわかってねぇな」


おいおい、俺のことなんだと思ってたんだよ。

奪って、闘い、従えるってまるで、魔王みたいじゃねぇか。

「いいか、勇者は奪わないんだよ。今の現状に抗ってんだ。それに民を従えてるわけじゃねぇからな?」


「そうなのか?」

「そうだよ! みんなが俺についてきてくれたから、お前に勝てたんだ」

こいつやっぱり何もわかってないな。


「教えてやるよ、三流勇者。俺が勇者ってやつをよ」

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