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勇者アマツ・ツカサは魔王になる  作者: 川上アオイ
第一章 アマツ・ツカサは魔女と旅をする
10/49

10 魔族になっても守ってやれよ

今頃あいつらは、元気だろうか。

っていうかどれくらい時間が経ったんだろ。

真っ白で何もない空間。どこまで走っても飛んでも終わりがない。


「君ィ、なにボーっとしてしてんだァ?」

そうでした、今は三人のこと心配している余裕はありませんでした。

ドゥルガーは、大鎌で俺のこと殺そうとしてるんだけど……。


「あのさぁ、そういう武器って精霊って使わないじゃないかな」

「種族で使う武器を決めるなんて、浅はかだねェ」

「戦う以外で精霊の秘宝(ランドマーク)を譲ってもらうことはできませんかね」

「君がどれほど強いか、見極めないとあげられないよォ」


なにを見極めるっていうんだよ。

お話しないと互いのことわからねぇだろうが。この世界の奴らは血の気が多くて困るぜ。

「勝ったら、ここから出してくれるよな?」

ここ何もなくて、戦ってて退屈なんだもん。


「? 勝てたらだけどねェ」

「火よ我に従え『アグニ』」

「効かないよォ」

「そういうこと口に出さない方がいいぜ? お前デリカシーにかけるって言われんだろ」

全力で魔法使ったっていうのに、この大精霊さん無傷かよ。

もしかして、ロマネスク並みに強いのか。そうだとしたら、少しだるいな。


「君ィ、さっきから火の魔法しか使ってないけど手加減してるゥ?」

「俺もこればかりで飽きてきたところだから、他の魔法使いたいな。何か知ってる?」

「精霊のボクに言われてもなァ。あ、原始魔法(ユニークスキル)使えばいいじゃないかァ」


「それ使いたい! なんて言えばいいんだよ」

「バルフェルトにしかわからないからなァ」

じゃあ、ダメじゃねぇか。期待させんな。しばくぞ。

「なら、俺は火の魔法だけでお前を倒すか」


「すごい挑戦的だねェ、君。そういえば、名前聞いてなかったねェ」

「アマツ・ツカサ、元勇者だ」

「え、ほんと?」

「うん、ほんと」


急に真顔になってどうしたんだ。

口調まで間延びしなくなってるし、俺はこいつと会うの初めてなんだけど。

「ロマネスクを前世で倒したって君なのォ?」

「俺だよ、俺。あ、詐欺してるわけじゃないからね」


「よく倒せたねェ。でも今は無理でしょうゥ?」

「は? 倒せるんだけど???」

「なら、ボクを倒すのに手こずってる時点で論外だァ」


目の色が変わったな。

こいつ、俺の実力を測ってなにをしたいんだよ。


「火よ我に従え『アグニ』!」

魔法(それ)はボクには効かないって何度も言わせるなァ」

「そんなこと知ってるわ! ボケ」


絶対こいつは魔法を突っ込んでくると思ったぜ。

無効化されるだけであって、魔法自体は消えてない。

目くらましに使わせてもらっただけだよ。


「これでも喰ら──は?」

拳がすり抜けた。

「言い忘れてたけど、魔族はボクに触れられないからァ」

「ッ」


アイツも俺に触れられないから、そのための大鎌か。

手痛い一撃くらったな……。胸がざっくり切られてる。あとでキャロに治してもらおう。


「ドゥルガーさ、どうして俺の強さを測ろうとすんだよ」

「君にライを任せられるほどの実力があるか試してるんだよォ」

「任せる? ……子守はごめんだぜ」


「あの子は、魔族になりたがってるゥ。だから、君にお願いしたいんだよォ」

「はへーそうなんだ」

「うわ、すごい適当ゥ」

だって、俺だったらそんなことしないんだもん。

それにしてもお願いしてるわりには、鎌をブンブンするのどうかと思うけどな。


「強かろうと見ず知らずの野郎に大切な友だちをお願いしないけど」

「あの子が魔族になったら

ボクは触れられないし守ってあげられないから頼んでるじゃないかァ」

そんな理由で頼んでるのかよ。

自分じゃ守れなくなるから、俺に頼むなんて笑わせるな。


「魔族になっても守ってやれよ。火よ我に従え『アグニ』」

「それができれば悩まないィ!」

「守れずにアイツが死んでも知らないぞ」


「あの子が死んだら、この世界の人間全員殺すゥ」

「勝手すぎんだろ!」

ドゥルガーの三倍以上の大きさの炎で覆ってやった。

もちろん、こんな攻撃で傷つけられないことなんて百も承知だ。


「ッ!」

振り下ろされた鎌は俺の肩から腹までを切り裂いた。

「どうして、避けないィ! これだとお前は死ぬぞォ」

「ああ、死ぬ。絶対死ぬなー」


「なんでそんなヒョウヒョウと──……。まさかァ!」

やっと気づいたかよ。

こうなるまで俺の意図がバレてなくてよかった。

「精霊は命を奪ったら死ぬんだよな、一緒に逝こうぜ」


「何を考えているゥ……」

「死にたくなきゃ、俺を村に戻せ」

「誰がそんな──」

「いいか、これは脅迫だ。俺が死ねばお前も死ぬ。

そうなると、お前の大切なベイビーちゃんは誰が守るんだ?」


「……わかったァ。すぐに戻すゥ」

「じゃあ、俺の勝ちってことで」


*****


「それじゃあ、あの子のこと頼んだからねェ」

「わかってるよ。さっさと村に戻してくれ」

ドゥルガーは目を細めて本当に嫌そうな顔をしていた。

そんな人のことをゴキブリみたいに見ないでくださいよ……。


またもや一瞬にして、景色は変わり村へと戻った。


「なにが起きてるんだ……」

村のいたるところで、火事が起きてる。夕日と同じくらい村が明るい。

俺がいない間に何が起きてたんだ?


「バルフェルトさま!」とキャロは青ざめた表情で駆け寄ってきた。

「なにがあったんだ」

「バンカさんが、人間に捕まって処刑されます」

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