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1 プロローグ

「世界は随分と平和になったな」

勇者の剣を子ども心で引き抜いてから、三年以上勇者として魔族と戦い、そして魔王ロマネスクを倒してから45年たった。

俺も60歳を過ぎて、随分と歳をとった。もう歩くことすらできず、今は窓から街の様子を見ることしかできない。


「勇者さま、国王がお見えです」

「アマツ、元気か」

ムダバッカ国王が来た。国王が子どもの時からの付き合いだ。


「……元気に見えるか」

「元気そうじゃないか、何かしてほしいことはあるか」

「ない、こうやって国中の人や子どもたちが楽しく笑顔に生きていればいい」

「お前が魔王ロマネスクを倒してくれたおかげだ。子どもはいるのか」

「お前のせいで、青春は魔物退治だったわ」

「童貞か」

「え、そうだったんですか」

「殺すぞ」

最後まで俺のこと看取ってくれたから財産分与しようと思ったけど、財産燃やしとこ。


「少し疲れた。寝る」

眠くなってきた。ポックリいけそうだ。

「ゆっくり休んでくれ、今までありがとう」

これからも平和に、魔族も争いもない平和な世の中であってくれ。


勇者アマツ・ツカサこと、俺は享年63歳にしてこの世を去った。

はずだった。


*****


「魔王!」

「え、誰」

俺さっき死んだよね、静かな最後だったけど綺麗に死ねたよね。

目の前には、紫色の髪の少女がいるし、傷だらけだ。


「は? あなたなに言ってんの」

「いやいや、俺がそれ言いたいんだけど。魔王じゃねぇよ?」

こんなの子見たことない。誰、怖いんだけど。


「え、冗談きついって」

ため息までつき始めた。失礼な奴だな。

「マジで、誰。ここはどこ」

「最悪なんだけど、死ぬ気で盗んだって言うのに、転生失敗してるし」

「悲しいところ、申し訳ないけど状況を教えてください」


「あなたは魔王バルフェルトの体に転生したの」

「は?」


魔王バルフェルトってまず誰だよ。

俺はピンフ大陸で、勇者として魔王ロマネスクを倒して魔族を滅ぼして平和な世の中を築いた。

「勇者だった俺が魔王に生まれ変わるのかよ……」

ゆっくり老後を過ごして、ポックリ逝ったというのにこれはなんの冗談?


「自分の姿を確認して見なさい」

左腕はないし、右腕はトカゲみたいな黒い鱗がある。

おまけに尻尾までついている。


「っていうか君は誰? 俺はアマツ・ツカサ、前世では勇者でした」

「人間で、しかも勇者って。最悪すぎ」

悪かったな、俺が来て。悪いけど返却するなら元の世界でお願いします。


「でも、お前人間じゃないのか?」

哲学めいたこと聞いてるわけじゃない。

魔族的特徴の耳ながやスライムの形、肌の腐食が一つもない。

「人間と一緒にしないで」

見た目は人間、中身はバケモノってか。


「私はバンカ、魔女よ」

「そんな魔女さんは、俺をなんでこのトカゲに──」

「トカゲじゃなくて、竜ね」

訂正が速いことで。

「俺をなんでこの竜に転生させたんだ」


「魔王バルフェルトを生き返らせようとしてたけど失敗したの」

俺が来てごめんなさいね。

「魔王って冗談きついぜ、なんのドッキリ?」

「ッチ。理解力ないな」

「今舌打ちした? え、したよね」

「事実です。あなたは魔王バルフェルトの体に転生したの」

「でも、どうして」

「……転生が失敗したみたい。でもどうして」

「ッチ。ふざけんなよ」

「あ、今舌打ちした。したでしょ、ねぇ」


「それにしてもここはどこだよ」

夜の森は怖いから、明るいところ行きたいぜ。

「ここは、魔族の国『モンスグリラ』と人間の国『ヒューマニア』の境にある魔女の森」

どれも聞いたことない土地だ。

「人間と魔族がいるのか!」

「そうだけど? 長年戦ってる」

「どの世界でも、魔族と人間は戦うんだな。あははは!」


「そんな笑うこと?」

「俺のところも魔族と人間が戦ってたんだ。まぁ俺のおかげで魔王を倒して平和になったんだけど」

「そんなすぐに、平和になったら困らないわよ」

「? というと」

「勇者ロマネスクが、魔王バルフェルトを倒したことで人間側は平和になった」

ロマネスクってどこかで聞いたことあるな……。


「そのおかげで、魔族は統制する者がいなくなって混乱状態で人間に狩られる始末」

「へぇ、大変だな。俺は人間のところに行くよ。平和なんだろ?」

「なんで! 魔族を救おうと思わないの?」

「魔族の味方なんて死んでも、ごめんだ。それに俺はゆっくりしてたいの」

異世界だろうとしても、今まで戦ってきた魔族と一緒に戦いたくない。


「じゃあ、私のサービスシーン見せてあげるから一緒にきて」

そんな小さな胸で俺を誘惑しないで。


「俺は人間のところに行く」

「あなたが、人間だったとしても外見が魔王バルフェルトだから誰も信じてくれない」

「やっぱり生き返ったのか、バルフェルト」

金髪赤眼のジーパン姿の女が立っていた。

めちゃくちゃスタイル良い。


「勇者ロマネスク!」

「裏切りの魔女、精霊の秘宝(ランドマーク)を返してもらうぞ」

「ランドマーク?」

「これのこと!」

バンカは手に持っていた木の杖を見せた。

読めないけど色々なこと杖に書かれててすごそう。


「ランドマークはバルフェルトを倒すために使われた道具よ。人間が大精霊と契約することで、巨大な力を手に入れられるの」

「へぇ、そんな強力な武器あるんだな。俺も使いたいぜ」

「早く逃げるわよ、こいつには勝てない! 魔王を倒した本人だから」

金髪赤眼、自身満々の胸、上から人を見下した態度、俺は知っている。


「まさか魔王ロマネスクなのか……?」


「どうして私の前世を知ってる」

「当ててみな、当てたら商品やるよ」

「そのキモいセリフもしや勇者アマツか」

え、キモいの。


「どうだ、一緒に手を組まないか。お前とは同じ釜の飯を食べたかったんだ」

「俺はお前とは飯食べたくないね」

「そうか残念だ」

こいつ、生まれ変わっても上から目線なの変わらねぇな。おまけに剣で切りかかってきたし。


「あぶねぇな」

「お願い、します。魔族をお救いください」とバンカは土下座し始めた。

「え、土下座? 困るな、そういうの」

土下座されようと俺は、魔族が嫌いなのは変わりない。


「魔族は、お前の親を殺した。この世界でも、多くの人間を殺してる。人類にとっての敵だ」

「でも、それって前世の話じゃない」

「私が話してる、黙れ」

ロマネスクがバンカの頭をめがけて剣を振り下ろした。


「確かに、俺は魔物は嫌いだけど」

何もできずに、親や家族は殺された。

だから、俺は前世で勇者の剣を取って戦った。

「その手を離せ」

「無抵抗の相手を攻撃する奴が嫌いだ」

「私と戦うっていうのか」

「今世も勝たせてもらうぜ」

ここまでお読みいただきありがとうございます!


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よろしくお願いします!

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