スポーツブラ5〜家賃は収入の三割が無難〜
翌日。出勤して早速顛末を話すと、クロウリーはうーんと考え込んだ。
「いっそ移転するか?」
「えっ……」
「いや、家賃が払えないのなら、他のところに移るのもありかなって」
その発想は無かったが、確かにそうだ。
プレゼント用に時間をかけてスポーツブラを作っても、ご機嫌取りが成功する保証はどこにもないのだから、新しい店舗を探した方が確実だろう。
でも、クロウリーと一緒に作り上げたこの店を手放すのは少し、いやかなり寂しい。
気がつけば、すっかり愛着が湧いていた。
「ここより立地のいいところで、適当な空き家を探してみたらどうだ」
「……そう、ですけど」
「それに、そろそろ本腰入れてアンタの分を作った方が良いだろ。だったら、余計な仕事をしている暇はない」
正論過ぎて、ぐうの音も出ない。
しかし、少し意外だった。
あんなにクールだったクロウリーがそこまで考えてくれるだなんて。
危ない。ちょっとトキメキかけた。でも、相手は従業員。思い上がらないように気をつけよう。
「……考える時間をください」
その後、念のため、スマートフォンでスポーツブラの情報収集をするが、頭の中は移転すべきか否かばかりで、全く進まなかった。
自室に帰っても、悶々と考え続ける。
店は手放したくない。でも、新しい下着が早く欲しい。
その二つを天秤にかけると、ぐらぐらと上下しながら均衡を保ってしまう。
決めなければ。
これまでのことを思い出す。
悪役令嬢に成り替わり、下着屋を設立し、クロウリー達に出会って。
元々はズブの素人が必死にアイデアを絞り出し、試行錯誤しながら商品を作り出して。なんとかお客様に満足してもらえた。
なんのために、ここまでやって来たのか。
一番、重要で根本的なこと。
決めた。移転しよう。
明日にでも、お店を探しに行こう。
面白いと思ったら評価・ブックマークして頂けると嬉しいです!
厳しい意見も受け止めて改善していきたいので、どしどし評価ください!
皆さんのリアクションが生きる糧になってます!
気合いを入れて続編を書きたいので、よろしくお願いします!




