スポーツブラ2〜たのしい会社乗っ取り計画〜
間違いなく、リリア様の母親であるクララ夫人だ。
それにしても、とんでもない美人だ。
ブロンドの髪。リリア様よりも深い碧の瞳。まっさらな雪のように白い肌。
妖艶に引かれたルージュの唇からは、大人の余裕を感じる。
年頃の娘がいるとは思えないほどの美貌。
まさに美魔女。
ゆったりとした低めの声が相まって、悪役感がすごい。毒を盛ってくるタイプのヒールにいそう。
「彼氏ができたんですって?」
どこ情報だろう。残念ながら、彼氏の『か』の字もない。
「いませんけど……」
「あの、仕立て屋のイケメンと付き合ったんじゃないの?」
「いえ、彼はただの従業員ですが……」
「なんだつまらん」
クララ夫人は不服そうに口を尖らせた。
思っていたのと違う口調に面食らう。どういうキャラ?
「まぁいいわ。オフィスラブでゆっくり愛を育むのもあり寄りのありだから」
「は、はぁ……」
「ママ嬉しいの。リリちゃんったら、訳の分からないトンチキ飲食店を作っては潰し、作っては潰しだったのに、地に足をつけて下着屋を作って、しかも中々の評判だなんて」
入れ替わる前のリリア様はりんご飴屋を潰したばかりだった。その前はフルーツ大福屋。その前の前はタピオカ屋。その前の前の前はティラミス屋だったかナタデココ屋だったか。
確かに改心したと思われてもおかしくない。実際は中の人が変わっただけなんだけど。
「でもね、そのお店、貰うわ」
「貰うって……?」
訳がわからなさすぎて、空いた口が塞がらない。
あの店を寄越せということ?一体何で?
「今日から私が社長です。貴女はCEOになりなさい。家族経営というやつですね」
クララ夫人は自信満々に言って、ふんぞり返った。
子が親の会社を継ぐのであって、親が子の会社をパクるだなんて、聞いたこともない。
普通は逆だ。
流石はリリア様の母親。奇人の親もまた奇人というわけだ。
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