メンズブラ20〜愛の形は人それぞれ〜
リリアの元に、最近他の女性と挙式を上げた元婚約者のランドロフ卿が訪ねてきた。
「自分の下着も作って欲しい」
ランドロフ卿のまさかの発言に、リリアは耳を疑った。
そして、なんやかんやで、依頼を引き受けることになったリリア達。
しかし、メンズブラに関して、何も情報がない。
少しでも情報を得るために、現世とコンタクトをとる必要があると考えたリリアは黒魔術師を頼り、無事スマートフォンを手に入れた。
店に戻ると、クロウリーがオーダー通りの試作を作っていた。
しっくり来ないデザインに頭を悩ませていたが、シンプルな無地のものを試作としてランドロフに見せてみると、他の試作も見られてしまうことに。
しかし、全ての試作を気に入ったというランドロフ。
後日、選べないから任せるといった旨の手紙がリリアたちの元に届いた。
丸投げされ、困惑するリリアとクロウリー。
とうとう作り上げた商品をようやく披露することになり、商品の説明をすると、ランドロフの反応は上々だった。
そして、突如現れたランドロフの妻、ミモザがランドロフを回収して去っていった。
「なんかよく分からないが、喜んでもらえて良かった」
嵐のように去っていった夫婦に呆気に取られつつ、クロウリーはポツリと呟いた。
「……そうですわね」
去り際こそしっちゃかめっちゃかだったが、お客様に満足してもらえたのは間違いない。スマートフォンをトイレに投げ込まれた甲斐があったというものだ。
選んでくれ、という優柔不断なランドロフ様のために、三種類の試作を全て盛り込んだ。
結果として、大正解だった。
しかし、意外だったのは、ランドロフ様が最も喜んでくれたポイントだ。
『妻と共に選ぶ楽しみがある』
それに関しては想定外だったが、思えば、発端は愛する妻とお揃いのものをつけたいという想い。
愛がなければ、その発想にはならない。
二人で楽しみを共有することで、愛が深まる。
後付けだけど、この商品はそういうコンセプトもあることにしておこう。
……まぁ、メンズブラなのは格好つかないんだけど。
「それにしても、いいですわね。幸せそうで」
ため息混じりにそう言うと、クロウリーが紅茶を淹れたカップを持ってきてくれた。
「ランドロフに未練はないんだろ?」
「えぇ、全く。でも、夫婦の愛を見せつけられたというか。お揃いが着たいだなんて、ラブラブじゃないですか」
「わざわざ下着をオーダーしてまでな」
「しかも、見ましたか。ミモザさんに引き摺られるランドロフ様の顔」
「……恍惚としていて、正直キモかった」
分かる。イケメンだけど、正直アレは無理。
「夫婦、ねぇ……」
「まぁ、私には縁のない話なんですけど!さ、気を取り直して片付けをしましょう」
立ち上がり、伸びを一つする。
今は仕事第一。というか、いい加減自分の下着作りに集中したい。
それ以外にも考えるべきことは多い。元いた世界のことや、向こうにいる私の体に入ったリリア様のこと。恋愛なんて考えている余裕はない。
でもいつか。楽しみを共有できるパートナーに巡り会えますように。
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