店作り1〜店名考えるのにもセンスがいる〜
ここまでの経緯を整理しよう。
ごくごくフツーの地味なOLである私が、目覚めたらクセ強ファンタジーの世界に転生して悪役令嬢になっていた。
名前はリリア。最近婚約者の騎士ランドロフを町娘に寝取られた。たぶんポンコツ。
今のところ出会った人間は以下の通り。
メイド三人衆。モネ、サラ、ロージー。毒舌でやけに当たりが強い。
雑貨屋の女主人。モリー。店の品揃えは×。
父親のジュペリエール伯爵。親バカ。
この世界は下着がコルセットしかないらしく、そのキツさに耐えられない私は理想の下着を作るべく、ランジェリー店を開くことになった。
あらすじは以上。
とりあえず今はモリーの店で買った雑巾色のブラジャーをつけている。ゴワゴワしていて、付け心地も最悪だ。
一刻も早く、まともな下着を作らなければ。
ジュペリエール伯爵が用意した店は街の外れにあった。地図を片手に歩いて、ようやく目的地に着きそうだ。
「……ここ、よね」
そして、その店を目の前に、私は膝から崩れ落ちた。
『あまい!まるい!おおきい!うまい!リリア様のアップルキャンディ屋さん』
大きなリンゴの看板にはそう書かれている。
何その有名な苺みたいな謳い文句。
しかも、道場でよく見る書道風の極太フォントがリンゴと全くあっていない。
全体的にもダサい。センスが終わってる。
これでは三日で閉店も頷ける。
「ないわー……」
とにかく今すぐにでも看板を外したい。店内にあった脚立を持ち出し、看板を外そうと試みる。
しかし、がっちりと固定されており、他にも道具が必要そうだ。
「どー考えても一人じゃ無理だろ」
声のした方へ振り返ると、そこには一人の男性が呆れ顔で立っていた。
短めの茶髪。筋骨隆々というより、手足はスラリと長く、バスケ部にいそうなイケメンという印象た。
「アンタがあのリリア様、か?」
「はい、そうですけど」
「俺は仕立て屋のクロウリー」
一旦脚立から降りて、よろしく、と差し出された手を握り返す。
この人がジュペリエール伯爵が用意した『暇そうな仕立て屋』みたいだ。
頼り甲斐がありそうな人でよかった。
「……やっぱりアンタ、リリア様じゃないな」
ぎくり。
クロウリーは手を握ったまま、私を睨みつけた。
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悪役令嬢が好みの下着を手に入れるために気合いを入れて続編を書きたいので、よろしくお願いします!