メンズブラ16〜悪役令嬢、ライフワークバランスを重視する〜
リリアの元に、最近他の女性と挙式を上げた元婚約者のランドロフ卿が訪ねてきた。
「自分の下着も作って欲しい」
ランドロフ卿のまさかの発言に、リリアは耳を疑った。
そして、なんやかんやで、依頼を引き受けることになったリリア達。
しかし、メンズブラに関して、何も情報がない。
少しでも情報を得るために、現世とコンタクトをとる必要があると考えたリリアは黒魔術師を頼り、無事スマートフォンを手に入れた。
店に戻ると、クロウリーがオーダー通りの試作を作っていた。
しっくり来ないデザインに頭を悩ませていたが、シンプルな無地のものを試作としてランドロフに見せてみると、他の試作も見られてしまうことに。
しかし、全ての試作を気に入ったというランドロフ。
後日、選べないから任せるといった旨の手紙がリリアたちの元に届いた。
丸投げされ、困惑するリリアとクロウリー。
必死に考えた結果、『全部作ってみる』ことになった。
閃いたことを全てクロウリーに伝えると、彼の反応は上々だった。
「それは考えもしなかったな……面白い、やってみよう」
「段取りとしては、生地や金具の発注に二週間。そこから縫製をして二週間の合計一ヶ月といったところでしょうか」
「いや、縫製は一週間でいける。俺がなんとかする」
頼もしいことこの上ないが、それは看過できない。
「許可しません」
ぴしゃりと却下すると、クロウリーは不服そうに眉を顰めた。
「……何故?」
「貴方、休まずに仕事をするつもりでしょう?それは絶対に許しません」
「俺が良いと言ってるんだから、やりたいようにやらせてくれ」
「ダメです。従業員の健康管理は社長の務めですから」
目指せホワイト会社。
有休消化率80%越えの騎士団にも負けてられない。
それに、長く働いてもらうためにも、無理はしてほしくない。
現世で社畜をしていた時に、身体を壊して辞めていく動機をたくさん見てきた。身体が壊れると、自然にメンタルも病んでいく。そして、それは伝染して会社自体を蝕んでいく。
少しの無茶も侮るなかれ。
とにかく、健康第一だ。
「クロウリー。貴方が倒れたら、元も子もないのです。もちろん、この仕事に打ち込んでくれることは、会社にとってもとても嬉しいことなのですが……仕事に全てを捧げる必要はありません」
クロウリーにとって、今回の案件に思い入れがあるのはよく分かる。
未知のジャンルをやってみたい、というチャレンジ精神。それ自体は素晴らしいものだ。
しかし、入れ込みすぎて、仕事に依存するのはだいぶよろしくない。
大切なのはライフワークバランス。生活と仕事の両方を充実させることが、メンタルを安定させ、仕事の効率も上がり、会社にとってもメリットがある。
「分かった。そこまで言うなら、縫製は二週間、きっちり頂くとする」
「分かればよろしい。プライベートも大事にしてください」
ポン、と肩を叩くと、クロウリーはやれやれと首を振った。
「プライベートも大事にしろ、か」
「そうです。恋人とか趣味とか、色々おありでしょう?」
「無い。恋人もいないし、趣味も特にない」
驚いた。モテそうなのに、まさかのフリー。
いや、違う。きっと、友達以上恋人未満な幼なじみの女がいるに違いない。イケメンとはそういう生き物だ。
だって、こんなにかっこよくて、一見冷たそうに見えるけど、実のところは優しくて、心に熱いものを秘めている。
そんな彼がフリーなわけない。友達以上恋人未満な幼なじみの女がいなくても、周囲に『おもしれー女』は掃いて捨てるほどいるはず。
やっぱりイケメンは雲の上の生き物だ。
「趣味はないが、美味い飯を食うのは好きだな」
「良いじゃないですか。また皆さんでパーっと打ち上げに行きましょう!」
「アンタって本当に……」
「……何か?」
「いや、何でもない」
クロウリーはそう言って、ふいっとそっぽを向いた。
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