メンズブラ1〜騎士団長は性悪女フェチ〜
ミモザとランドロフ卿の結婚式から一週間経った。
結婚式はつつがなく終わったようで、三日後に封筒が送られてきた。中には札束と、手紙が入っていた。
『おつりはいらないわ』
明らかに提示した金額より多かったが、ありがたく貰っておく。
ブライダルインナーの報酬のおかげで、従業員への賃金の支払いだけでなく、設備投資や材料の発注をすることができた。特に、ドワーフに金具の発注と、入手困難なゴム素材の仕入れができたのは大きい。
必要なものは全て揃った。
あとは私の分を作るだけ。
とうとう、この雑巾ブラジャーとおさらばできる。
愛着が湧きつつあったけど、これはこれ、だ。
今までありがとう。あなたのことは忘れないわ。
別れを告げ、ミシンのメンテナンスをしていたクロウリーに声をかける。
「よし、準備もできましたし、私の下着を作りましょ……」
言い終わる前に、ドアがノックされた。
そして、ガチャリとドアが開いた。
「ラ、ランドロフ様!」
そこには、私の部屋に飾ってある肖像画の人物が立っていた。
三日前に結婚式を挙げたばかりの、騎士団長ランドロフ。
サラサラの金髪とエメラルドの瞳。笑うと白い歯がきらりと輝く。爽やかなタイプのイケメンだ。
リリアの元婚約者。しかし、転生した私にはなんの思い入れもないので、未練もクソもない。結婚式ではほとんど会話を交わさなかったし、よく分からない人物だ。
「いったい、どうされました?」
肖像画とは異なり、ランドロフ卿は私服だった。白いシャツとブラウンのズボン、そしてキャスケット。思っていたよりもずっと地味な格好をしている。地味過ぎてまさに、村人Aって感じだ。
「変装してみたんだが、やはりバレるか」
服装で誤魔化しても、顔面の輝きが隠せていない。
どこからどう見てもランドロフ卿だ。
バレバレでこそあるが、わざわざ変装してくるなんて、一体何の用だろう。
「結婚式のことは本当にすまなかった。妻もいたく反省している」
ランドロフ卿は深く頭を下げた。
それを見て、クロウリーはふん、と鼻を鳴らした。
「あの性悪っぷりを見て、よく結婚する気になりましたね」
「いや、あれが良いんだ。その……非常に申し上げ辛いのだが、性格の悪い女ほど魅力的に感じる性質でね」
ヤバい。変態だ。
性悪好きなんて、性癖が歪み過ぎている。
ドン引きする私達を気にすることなく、ランドロフ卿は話を続けた。
「リリア殿はちょっと、いやだいぶ変わった方だが、性格が悪いわけではなかった。それが物足りなくて、その時現れたのがミモザだ。彼女は本当に性格が悪い」
ランドロフ卿はここにいない妻に想いを馳せ、うっとりとしている。
リリア、変態と結婚しなくて良かったね。
「それで、結局何の用ですの?」
このままお惚気を聞かされるのも癪なので、一旦話をぶった斬る。
さっきとは打って変わって、ランドロフ卿は言葉を躊躇った。
「頼み事があるんだ……下着をオーダーしたい」
「ミモザさんにプレゼントなさるんですか?」
「いや……私のだ」
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