ブライダルインナー9〜ざまあ展開は無事回避〜
悪役令嬢に転生した『私』はコルセットよりも快適でデザイン性の高い下着を作るために、下着屋を作ることになった。
リリアは恋敵のミモザからブライダルインナーの依頼を受け、なんとかほぼ完成したが、既に挙式は始まっていた。
包みの中から、オーダー品を出して、広げて見せる。
今回、下腹部のカバーがメインとなるため、セパレートタイプのブライダルインナーに仕上げた。本来着用するはずだった、ウェディングドレス用のコルセットを裁断し、ブラジャー部分のみを活用。それに合わせたウェストニッパーとガードルを作成し、下腹部を引き締める。
生地は滑らかな手触りと上品なパール感が輝く、最高級のシルク。カラーは白寄りのアイボリーにして、上品な印象に。
そして、ほのかに香るアカシア。チャルカのアイデアで、生地にフレグランスを練り込んだ。
しかし、あくまで主役はウェディングドレス。ドレスに響かないよう、装飾は控えめ。無地だと味気ないので、アンダーと裾にミモザの花の細かなレースをあしらった。
「普段使いもできるような、デザインになってます」
結婚式の後も着れる、一生もののインナー。
着るたびに結婚式を思い出して、幸せに浸れたら。
そう願い、練りに練ったデザインだ。
商品を差し出すと、ミモザは複雑そうな表情をしたまま手を出さない。
「ひょっとして、貴女たちを騙して式を挙げることが分かっていたの?」
「いいえ。もちろん驚きました。でも、高いお金出したなら、一回着るだけじゃ勿体ないと思いません?」
ほら、と促すと、ようやくミモザは商品を受け取った。
「……悪かったわ」
ぽつり、と呟いたその声には、確かに反省の色が見られた。
きっと、喧嘩上等のつもりだったのだろう。
乗り込んだ当初は、詰ってやりたい気持ちもあった。でも、彼女の立場になって考えてみると、残ったのは怒りではなく、同情心だった。
これができたのは、私が転生して他人の身体で生きているからこそ。
他人の立場になって物事を考えるのは、簡単なようで難しい。
今の私の、最大の強みだ。
「挙式には間に合いませんでしたが、この商品は我々渾身の一作です。どうか、たくさん着てやって下さい」
そう微笑みかけると、ミモザは無言で頷いた。
一旦退場してから、だいぶ時間が経ってしまった。そろそろ空気を読んだ方が良さそうだ。
「そろそろ、戻ったほうがいいのでは?皆さんが主役のお二人を待ってます」
これ以上長居をすると本当に式の邪魔になってしまうので、いい感じに話を切り上げる。
「その……妻が大変失礼なことをした。申し訳ない」
そう言って、ランドロフ卿が深々と頭を下げた。
居たんだ。ずっと静かだったから忘れてた。
「お気になさらず。ご結婚おめでとうございます。今日のところはこれで失礼しますわ」
それじゃ、と皆を引き連れ、笑顔でその場を去った。
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