ブライダルインナー8〜悪いヤツではない。ただ嫌なヤツってだけ〜
悪役令嬢に転生した『私』はコルセットよりも快適でデザイン性の高い下着を作るために、下着屋を作ることになった。
リリアは恋敵のミモザからブライダルインナーの依頼を受け、なんとかほぼ完成したが、既に挙式は始まっていた。
「それで、一体どういうことですか?」
問い詰めると、ミモザは気まずそうに目を逸らした。
「アンタが、邪魔してくると思ったから」
「そんなつもりはないと、あの時にお伝えしたはずです」
ミモザは口を尖らせながらそう呟いた。
「そんなの、信じられないでしょ!私がアンタの立場なら、式に乗り込んで無茶苦茶にしてるわ」
私がため息をついたのが気に食わなかったのか、ミモザはいきなり声を荒げた。
相変わらず、情緒がジェットコースターだ。
つまり、一ヶ月前に騎士団本部で会った時、ミモザは私が結婚式を邪魔しに来たと思った。その後、私が否定したのも信じられず、一旦式を延期にして、私に気付かれないように後日挙式をこ行おうとした。
「そんな性格の悪いことすんの、ミモちんだけじゃね?」
「チャルぴは黙ってて!」
ミモザはチャルカにピシャリと言い放った。
チャルぴはきっとギャルサー内でのあだ名だろう。
っていうか、本当にギャルサー仲間だったんだ。
「式の日を正しく伝えずに、貴女が私を欺こうとしたことは分かりました。結局、オーダーしたブライダルインナーを着けるつもりはなかった、ということで宜しいかしら?」
「そうよ。確かにちょっと太ったけど、ウェディングドレスは頑張れば着れるし」
ほら、とミモザがドレス姿を見せつけるように手を広げた。
確かに、一見マーメイドタイプのドレスを美しく着こなしている。しかし、近くでよく見ると、身体のラインが若干歪に見え、キツそうな印象だ。
私達が作ったブライダルインナーを着れば、こうはならなかったはずだ。
しかし、お色直しを宣言してしまった以上、カラードレスに着替えることになる。ここでウェディングドレスの役目は終了してしまった。
つまり、ブライダルインナーとしての役割はもう果たせない。
悲しみと怒りで、思わず拳を握りしめた。
「代金はちゃんと払うわ。だから、今日は何もせずそのまま帰ってください」
お願いします、とミモザは頭を下げた。
リリアにとってミモザが恋人を寝とった憎き恋敵だったように、ミモザにとっても、リリアは恋敵だ。そんな相手に頭を下げるのはきっと、嫌で嫌でたまらないはずだ。
それでも、ミモザは頭を下げた。
どうしても挙式を邪魔されたくない、という気持ちが強く伝わってくる。
その気持ちは理解できる。
ずっと夢見てた、一生に一度の晴れ舞台。理想通りの完璧な式にしたい。そのためなら、邪魔するものは全て排除する。
あの時、騎士団本部の裏口で私を見つけた時、彼女はきっとそう思ったに違いない。
彼女はただ、夢を叶えたかっただけ。
そう思うと、違う感情が芽生えてくる。
私は握った拳の力を抜いた。
「分かりました。何もせずに帰りますわ。ただし、条件があります」
「……できることなら、なんでもするわ」
「それでは、商品の説明をさせてください」
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