金策3〜圧倒的正ヒロインのオーラ〜
ゆっさゆっさと上下に揺さぶられながら、街中を進んでいく。
ヤバイ。吐きそう。
運び方がもはや雑ってレベルじゃない。神輿だってもう少し丁寧に運ぶだろう。
「わっしょい!わっしょい!」
「ちょっと!もう少し丁寧に!」
「わっしょい!わっしょい!」
これ以上続くと吐く。朝食のマフィンが喉元まで競り上がってきたくらいで、ようやく地面に下ろされた。
「着いたぞ!そろそろ挙式のはずだ!ほら、頑張ってこい!」
じゃあな、と親指を立てて、恐怖のお祭りワッショイ軍団は笑顔でその場を去っていった。
何だったんだ一体。
「イタタタタ……ここ、どこですの?」
降ろされる時も雑だったので、身体中が痛い。
呆然としながら、周囲を見渡す。
見上げるほどの、石造りの立派な建物。いかにも頑丈そう。
そして、目の前にはその割には小さなドアがある。どうやら、裏口のようだ。
おそらく、騎士団本部。
強引に連れてこられたが、結婚式なら日を改めた方が絶対に良い。
元の身体の持ち主がどれだけランドロフ様に未練タラタラだったとしても、今の持ち主は私。ランドロフ様はただの他人。おめでたい日に水を差すつもりはない。
さぁ、帰ろう。お金のことはまた考えよう。
立ち上がり、ドレスについた砂を叩いて落とす。
すると、背後で扉が開く音がした。
「……リリア様?」
振り返ると、一人の若い女性が立っていた。
パッチリとしたアーモンド形の瞳が、溌剌とした印象を与えている。綺麗系というよりは、小動物っぽさのある顔立ち。ツヤのある亜麻色の髪で、三つ編みのシニヨンがよく似合っている。
圧倒的正ヒロインのオーラ。素朴な緑のワンピースが拍車をかけている。
思わず、目が眩みそうになる。
この人が私からランドロフ様を寝とった町娘に間違いない。
女性は「あ」と口を開き、固まった。そして、私をきっと睨みつけた。
「私とランドロフ様の結婚式を邪魔しにきたのですね」
「いや、ちがいま……」
「良かったですね。貴女が妨害するでもなく、結婚式は中止なのですから」
女性は涙を瞳いっぱいに溜めて、蹲ってしまった。
確かに妙だ。
そろそろ挙式のはずなのに、ウェディングドレスを着ていない。
「何かあったんですか?」
しゃがみ込み訊ねると、女性はボソボソと何か呟いた。
「何て?」
「……が入らないんです」
大事なところが聞き取れなかった。返す言葉に困っていると、女性は顔を上げて、叫んだ。
「だから!太ってドレスが入らないんです!」
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