金策1〜一週間で倒産とか笑えん〜
良いことをした、と悦に浸るのも束の間。翌日、待ち受けているのは受け入れ難い現実だった。
「お金がありません」
「だろうな」
なすすべなく、机に突っ伏す。
それもそのはず。初めての顧客に対して、無償で商品を提供した。つまり、完全なるボランティアだ。
親の七光りでテナント代こそ無いが、材料費や人件費がしっかり発生している。
いくらそろばんを弾いても、赤字は赤字だ。
「まさかタダで渡すとは思わなかった」
「だって……お金取る流れじゃなかったし……」
「給料だけはしっかり頼むぞ」
ぽん、とクロウリーに肩を叩かれて、私はますますその肩を落とした。
なんとかするしかない。
気は乗らないが、アレしかないだろう。
父親のジュペリエール伯爵の元へ行き、単刀直入に融資を依頼すると、即答された。
「無理無理、ママに怒られちゃう」
ごめん、と腕でバツを作られる。相変わらず仕草がお茶目で腹が立つ。
「そ、そこをなんとか……」
「何とかしてあげたいのは山々だけど、お財布の紐はママが握ってるし、今は隣国に外交中だからどうにもならないんだよね」
取り付く島もない。母親のリザベラは不在のため、相談すら難しそうだ。
「はぁ〜どうしましょう」
「どうされました、クソデカ溜め息なんかついて」
「辛気臭いですわ」
「ただでさえ婚約者寝取られて幸せ逃げまくりなんですから」
通りすがりの毒舌メイド三人娘の容赦ない罵倒。聞き流そうとしたが、ふとあることに気付いた。
「一つお聞きしたいのですけど」
「三人いるので三つまでオッケーです」
初めて三人いてよかったと思った。三人分の言葉で毎日ぶん殴られた甲斐があった。
私がリリアに転生する前。確か色々あったはずだ。
「婚約者って確か……ランドロフ様?でしたよね?」
「そうですよ。フラれたショックでお名前も忘れてしまったのですね。おいたわしや」
「なんでフラれたんでしたっけ?」
「モタモタしていたら町娘に持っていかれたんですよ。反省会なら数少ないお友達としてください」
「ランドロフ様ってすぐ会えますか?」
「お嬢様は腐っても貴族。会うこと自体は可能でしょうね」
「ありがとう!」
ちくちく言葉は全部聞かなかったことにして……。
決めた!ランドロフ様から婚約破棄の慰謝料を貰おう。
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