初めてのお客様6〜ダイナミック納品でライバルとの差をつけろ〜
生地。デザイン。仕立て。
全ての工程が終わり、商品が無事完成した。
そして、お客様の手元に届ける、いわゆる『納品』もつつがなく完了した。
「お疲れさん」
クロウリーが紅茶を運んできてくれたので、ありがたく口をつける。
香り高くて、とても美味しい。
もっと達成感に浸りたいところだが、まだ一仕事残っている。
そろそろかな。椅子に座り、来客を待つ。
そう思っていると、だいたい予想通りのタイミングでドアが開いた。
「リリア様、困ります!」
ビンゴ。
フローレンスの母がものすごい剣幕で乗り込んできたのを、私は涼しい顔で受け入れた。
「あら、ごきげんよう」
うん、自然だ。悪役令嬢口調も段々慣れてきた。
一対一の方が、本音で語り合えるだろう。密かに目配せして、クロウリーには退席してもらった。察しが良くて、気が利いて、仕事もできる。昇給待ったなしだ。
ってそんなことは一旦置いといて。
フローレンスの母は、右手に小包を握りしめていた。今朝、直接彼女の家のポストに投函したものだった。
中身はオーダーメイド下着。この一週間、私たちが心血を注いで完成させた商品だ。
「今朝、ご注文の品をお届けしました。フローレンスさんに気に入っていただけると嬉しいのだけれど」
「こんなもの、受け取れません」
フローレンスの母はぶるぶると怒りに震えて、バン、と机の上に小包を叩きつけた。
「娘はまだ子供です!下着なんてふしだらな……」
「ふしだらなんかじゃないわ。成長期のバストを守るために必要なものです」
椅子から立ち上がり、机の上の小包をフローレンスの母に再び押し付けた。
空気が張り詰める。
その緊張を破ったのは、ドアのノック音だった。
再び、扉が開かれる。そこには息を荒げたフローレンスが立っていた。
「お母さん!やっぱりここにいたのね……」
「フローレンス……」
娘の乱入に、フローレンスの母は動揺して言葉を失った。
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悪役令嬢が好みの下着を手に入れるために気合いを入れて続編を書きたいので、よろしくお願いします!