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5.パーティを組もう! その後? 惨殺が始まる

 ダンジョンに向かう途中、冒険者ギルドに寄る事になった。

 冒険者達は基本的に貴族より弱いものだが、ダンジョンに潜っている経験値が高い。その点を我々貴族は評価してやるべきである。授業で習った。

 そして貴族のダンジョン攻略は非常時を除き、冒険者を雇う。

 経験を活かしてもらうというのもあるが、魔物討伐における貴族の実力を見せてやり、その噂を流させるのが良いものだとされている。

 というわけで今回はベテランパーティを雇う事にする。戦力は二の次で、この面子が貴族が凄かったと噂するなら本当なのだろうという信頼を持っているメンバーを選ぶのだ。

 ちなみに依頼料はセバスがバルトロメオ家の討伐にかかる費用から出している。

 ともすれば、それをそのまま良しとせず倒した魔物素材を売り払って黒字にしてみせるくらいしてやるのが良い婚約者というものだろう。


「貴族の、あー、お嬢さん? ですか」


 その巨大な体躯を覆い隠すほどの大盾と槍を背負った男が困惑したように頬を掻く。


「魔物退治は遊びではございませんが……」


 窘めるような口調を取るのはローブ姿の女だった。貴族のやる事に文句をつけるのは優しさからか、単なる礼儀知らずか。悩ましいところだ。


「まあ、俺達が先導すれば問題ないでしょ」


 軽装の男がそう言って、ダガーを器用に操って曲芸をする。


「怪我をされても私が治せますな。あまり深くまで行かなければ問題ないかと」


 僧衣姿をした男が難しい顔をして軽装の男をフォロー。


「……」


 で、そこに人間より背が高いゴーレムが何も語らず一緒についてくるあたりがこの辺の独特の風土なのだろうと理解した。

 順番に戦士、魔法使い、盗賊、神官。最後にゴーレムがついているこのパーティがダンジョン狩りのベテランなのだそうだ。


「最奥まで行く。貴方達は道案内さえしてくれればいい」


 私がそう指示を出すと、雇われの身であるベテランパーティが渋い顔をする。


「そりゃ俺達だけならいけますよ」

「でもねえ、その。まだ若いでしょ? 貴女様は」

「俺達もいざって時、逃がすために命をかけたくはないんですよ」

「拙僧にも治せない怪我はありますぞ」


 あー、はいはい。嘗められてるねこれ。


「道案内以上の事は期待していない。あとは荷物持ちを何人雇えばいいかの相談をするくらい」


 眉を顰めて魔法使いの女が私に尋ねてくる。


「それは私達を戦力として見てないって事かしら」

「そう。今回は私のお披露目」

「大した自信ね」


 機嫌を損ねたように顔をふいと横に向ける。

 貴族に対する態度ではないそれを誤魔化すように、戦士の男が私の問いに答えた。


「そ、それでいいとしますがね。最奥まで行くなら結構な数の魔物が出ますよ。我々のアイテム袋じゃ全部は無理だ。荷物持ちは二、三体いる」


 体? ああ、ゴーレムか。


「セバス」

「はい」

「貴方もダンジョンに入るのよね? アイテム袋は持ってきている?」


 アイテム袋ってのはよくある見た目よりたくさん物が入るファンタジーによくあるやつだ。


「勿論ですお嬢様。高級品ですからダンジョンに今発生しているモンスター全てを収納する事も可能かと」

「そう、そうじゃあ今回の目標はダンジョンのモンスター全ての討伐ね」

「モンスター全てだって!? そんな大口叩いて大丈夫かいお嬢サマ?」


 学園のダンジョンでもやったしなあ。別に驚くほどの事じゃない。それでもまたいつの間にか魔物が発生するからダンジョンって面倒だよね。


「貴方達がしっかり道案内してくれれば問題ない」

「それはそれは、責任重大ですな」


 まるで信じて無いかのように神官の男は苦笑する。まるで、出来なければお前達が悪かったんだというつもりだろうと言わんばかりの態度である。


 雰囲気は良くないが出発。実際、最低限仕事してくれれば誰でもいいのだ。後は魔法でちょいちょいやってればその様子をそのまま平民達に広めてくれればいい。


 そうこうしてるうちにダンジョンに到着した。冒険者ギルドからダンジョンは歩きでも充分辿り着ける距離だ。でも私が乗ってきた馬車とは別に下男や侍女、メイドが乗ってる馬車もあるのでダンジョン前に乗り付ける。

 まずは一階。ここには魔物の様子は無い。

 ここまで魔物が来てるような状況ならダンジョンがパンク寸前である。いなくて当然。

 そんなわけで飛ばして一気に地下五階。やっと戦闘している冒険者を見かけるようになってきた。獲物を取るわけにもいかないのでスルー。

 地下六階。私の魔力が魔物を探知した。周囲に他の人もいない。やっと戦闘である。


「お嬢サマ、通路の先、大コウモリだ。三体。援護は……いらないんだよな?」

「質問に答えてくれれば充分」

「質問? 弱点とか?」

「違う。高く売れる部位は」

「んー……こいつら一応牙は売れるけど安いよ。この辺のモンスターは最低限の値段しかつかないな、です」


 申し訳程度の敬語を入れてきて、こちらの質問に答えた盗賊職の男。

 一応彼が一番前を警戒しながら歩き、その次が戦士の男、ゴーレム、魔法使いの女、神官の男、私、セバス、下男侍女メイドの集団の順番である。

 さすがにベテランなだけあって、この辺の雑魚相手にはそこまで気を張る様子も無く、お手並み拝見といったところだ。

 私は前に進む事で歩みを止めるなと促して、そのまま大コウモリとやらを一体、視界に収めて破壊した。


「……は?」

「なんか……勝手に死んだ?」


 そう見えるよね。


「私が殺した」


 振り向いた冒険者一向の視線が突き刺さる。


「ほう」


 セバスは感心したように一声だけあげた。

 二体、三体。破裂して死んでいく。牙は残っているのでセバスに回収させて次。


「……この先、さっきより大きいのいるから何なのか見てきて」

「探知もできるのかいお嬢サマ。はいよ、行ってくるわ」


 そう言って盗賊の男はまっすぐ先へ進むと、すぐ戻ってきた。


「突撃ボアだ。名前の通り突進してくる。これは前衛と協力してあたるべきだ。お嬢サマだけじゃ危ない」

「そう。ボアって事は猪よね。肉が売れるのかしら。心臓とかも高い?」

「心臓も薬になるな」

「そう、じゃあ頭でいいわ」


 私はそう言うと魔法を発動させて歩き始めた。


「一体何を……それより! 突撃ボアは危険だ。一人で何とかするなどと意地を張らずに我々と協力して欲しい」

「もう片付いてるから。いきましょう」

「なに言ってるの……?」


 魔法使いの女はもう引き始めた。嫌な予感を覚えているのだろう。


「俺、もっかい確認してくる」


 そう言って盗賊職の男が先へ進み、すぐに引き返してきた。


「死んでた。頭が破裂してた。さっきお嬢サマが言ってた頭でいいって……そういうコト?」


 私が当然だと言わんばかりに一つ頷くと、盗賊の男も引いた。というか冒険者組も屋敷組もほぼ皆引いた。

 楽しそうなのはセバスくらいだ。


「お嬢様の魔法は周囲を感知して、その範囲にあるものをなんでも破壊する。それでよろしいのでしょうか」

「そうね。原理は教えないけど、そういう事。

 この辺は他に冒険者もいるみたいだから死体を横取りされても腹立つからまとめて処分したりはしないけど、もっと奥深くに行ったらさっさと殲滅してそれ全部アイテム袋に入れて貰うからね」

「畏まりました」


 恭しく礼をして、ナイスミドルな執事は笑顔を見せる。

 どんどんと地下に進んでいき、地下三十階へ。


「ここが最下層です」


 私はマップを全部埋めるようにして魔物を殲滅し、使えそうな素材や宝箱の中身を回収し、一番奥まで辿り着いた。

 ここまで来ると誰もいないので、容赦なく魔法を使って惨殺した。一応お金になりそうな魔物の部位は聞いておいて、そこは破壊しないように気を付ける。

 あとはただの観光みたいなものだ。いいものがあればセバスが血塗れの中回収する。それだけ。


「あの……」


 すっかりびびってしまった魔法使いの女が、おどおどと私に話しかけてくる。


「その魔法、人間にも使えたり……?」

「する」


 その一言にびくりとするのは彼女だけでなく、ついてきた屋敷組もである。


「じゃあ殺そうと思えば私達も」

「殺せるね」


 理由がないから殺さないけど。


「貴族ってこわい」


 そんな結論に至った彼女を誰が責められるだろうか。みんながみんなそうじゃないんだけどね。ガリィとか優しそうだし。

 で、セバスが回収を終えて話しかけてくる。


「よい結果でございました。このセバス。男爵家の娘が嫁ぐと聞いてどれほどのものかと疑っていましたが、結構なお手前でございます。オーエン家の人間として、お嬢様とご主人様の結婚を後押しする力添えをさせていただければと」


 オーエン家。なるほどセバスは元々子爵家の人間か。私の事もちょっと下に見てたのかもしれないね。

 そのイメージも払拭させられたかもしれない。魔物退治はできたし、セバスからの評判も上がったし。お金も稼げたしよかったよかった。




 ちなみにその後、冒険者達含む平民の間で私に「殺戮の貴族」のあだ名がついたとか。

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