成功!
………出来たー!!
お昼ごはんも食べずに苦節数時間。
場所を厨房から自室に移して作業を続け、途中何度かバキっと欠けてはやり直し。
今、私の前には完成したチョコレートがあった。ちゃんと私が手作りした、この世に一つしかない形のチョコレートが。
料理長に頼んで出してもらった、大きなチョコレートの塊。それを削って作り上げたチョコレート。
いわゆるあれだ。
木彫りの熊みたいな感じ。
アレだって手作りなんだから、これがダメとは言わせない!
これが!私の!手作りチョコだ!!
実家にいた頃、木彫りはやった事があったのだ。そのおかげで、どうにか思い通りに近い形に仕上がった。
人生、何が役立つかわからない。
ほっとして、ターニャにラッピング用の布とリボンを用意してもらう。
もう疲れたので、シンプルに白のナプキンで包んで赤いリボンをグルグルと巻きつけた。
よし、王子に渡そう。
もうすぐお茶の時間だけれど、今すぐ渡してしまおう。あれだけ楽しみにしていた王子を、焦らしたらかわいそうだ。
…ついのめり込んでお昼ごはんをスキップしてしまったから、心配してるかもしれないし。
ラッピングしたそれをむんずと掴んで立ち上がる。王子は書斎にいると言うので、そちらに向かった。
コンコン
「王子、今いいですか?」
ノックして顔を覗かせると、王子の表情がパッと輝いた。
……可愛い。
私の目には、もはやデフォルトで耳と尻尾が見えている…。
「何だ?」
そわそわウキウキしている王子に、プレゼントを後ろ手に隠して近づく。
「はい」
そして両手でそれを差し出すと、王子の顔が一際輝いた。
「俺にか!?」
「はい」
コクリと頷くと、嬉しそうに手に取った。
「開けていいか?」
「はい、どうぞ」
シュルリとリボンが引っ張られ、ハラリとナプキンが広がる。
黒々と光る中身が現れた。
数時間かけて作った、渾身のフォルム。
「………骨?」
「はい」
形を何にしようかは少し悩んだ。
やはり王子と言えば犬だけど。
でも流石に犬を彫るのは、素人には難易度が高い。それに、犬が犬を食べたら共食いになってしまう。
だから妥協して骨にしたのだ。
王子は手の中のそれをじっと見ている。
「これ…手作りか?」
「はい」
そこは自信を持って頷ける。
しかも私は削っただけだから、味も保証付き。
何の躊躇いもなく好きな人に贈れる安心の一品だ。
気に入ってくれたかな?
首を傾げると、王子の腕が伸びてきてぎゅっと抱きしめられた。
「ありがとう、愛してる」
とても嬉しそうな声。
そして軽く頬にキスされる。
どうやら今回のイベントは成功したらしい。
私も嬉しくなって、ぎゅっと抱きしめ返した。