表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

今日は何の日?

朝食のテーブルについたら王子がソワソワしていた。結婚して一年経ったのに、相変わらず落ち着きの無い。

一瞬、


トイレかな?


って思ったけど流石に違うだろう。どれだけ犬っぽくても王子は人間だ。それもいい歳の。


でも、じゃあ何だろう?


わからなくて首をひねる。

何というか、期待のこもったキラキラした視線を向けられている。

厨房で骨からスープを取った日に愛犬のクーが向けてくる視線に似ている。クーはスープを取り終わった後の、あのでっかい骨を齧るのが大好きだ。

でも今はそのスープの匂いはしていない。というか今は朝だ。仕込みにはまだまだ早い。いや、そもそも王子に骨を齧る趣味はない…筈だ。


うーん、わからない。


サクッと諦めてターニャを呼んだ。わからない事は人に聞けばいい。

近づいてきたターニャに顔を寄せる。


「王子の様子が変なんだけど、何か知ってる?」


ひそひそと囁くと、ターニャは小さく顎を引いた。


「少し調べて参ります」


ススっと、ターニャが裏に姿を消した。

よし、これでオッケー。


直接聞けばいいのかもしれないけど、王子からは何となく「察して欲しい」オーラが出ている気がする。

正直そういうのは面倒くさいのだけれど、できれば王子を喜ばせたいとも思ってしまうわけで。

………私もそれなりに王子にメロメロなのだ。


それに王子のことは、周囲の人に聞けば大抵わかる。私の王子(うちの子)はわかりやすいから。

きっとターニャが答えを見つけてきてくれる筈だ。



「き、今日はいい天気だな!」


ターニャが部屋から出て行くと、王子が挙動不審に話しかけてきた。

外を見る。

雨が降っていた。

まあ、雨も嫌いじゃない。

今日くらいのシトシトした雨は、音もなかなか落ち着くし。

あと微妙に湿気がある感じも好きだ。


「そうですね」


頷いてサラダにフォークを刺した。

炙った肉のカケラとカリカリの小さいクルトンが、たっぷりの葉野菜に乗っている。ドレッシングはシンプルに塩と植物油だけど、めちゃくちゃ美味しい。

素材がいいって事なのだろう。

野菜も肉も良いけれど、特に油が良いのだと思う。


うちの領地は、この植物油の生産が盛んだ。ただし品質に結構ばらつきがある。

領主館に届くのは一番良いやつらしくて凄く美味しいのだけれど、街で食べるとそうでもない。その所為か、あまり領外に良さが伝わっていない気がする。私もこの領地に来るまで聞いた事なかったし。

それをもう少しこう、どうにかしたい。等級管理とか使い道とか何かしらでプッシュしたら、他領との取引材料になる品になりそうな気がするんだけど…。


考え事をしながらモグモグ食べていたら


「今日は…何か予定はあるのか?」


と聞かれた。

朝の着替え中にターニャに確認したところ、外出の予定も来客の予定もなかった。


「特にありませんよ」


答えて何気なくそちらを見ると、王子の前の皿はほぼ手付かずだった。


どうしたんだろう?らしくない。


「具合でも悪いんですか?」


眉を寄せた私の視線に気づいて自分の皿に目を落とした王子は、慌てて首を横に振った。


「いや、そんな事は無いぞ!」


そして勢いよくパクパクと食べ出したので、ちょっと安心する。


ならいいんだけど。


私も自分の食事に戻る。

朝は基本、サラダとスープとパンと卵料理だ。王子はそれに肉が付く。肉は重いので、私は朝には食べない。

王子はソーセージをナイフで切って着々と口に運んでいる。厨房で作られている、ハーブ入りの美味しいやつ。


うん。無理して食べてる感じはしないな。


(愛犬)の健康管理は(飼い主)の務めだ。

少し挙動不審ではあるけれど、今日も元気そうな王子を眺めながら朝食を終えた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ