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【東亜東洋商事①(Toa Toyo Shoji Co., Ltd)】

 東亜東洋商事に付きアポイントを取ってあることを受付嬢に告げる。

 受付嬢が俺の渡した名刺に記載してあるまま、POC証券のロビンソン・メェナードが来た事を内線電話で社長秘書室に連絡して、受付前のソファーで待つように案内してくれてしばらく待っていると、スーツ姿の昨日の男が現われた。

「またお会いできるとは思ってもいませんでしたなぁ。盗撮犯こと社長室秘書室の蒲生がもうです。ようこそメェナードさん」

 あの男だ。

 蒲生に案内されたエレベーターに乗る。

 エレベーターのドアが開くと、蒲生は変な作り笑顔を見せて僕に入るように滑稽なジェスチャーで促した。

 押されたボタンは37階の最上階のひとつ下。

「言うたら失礼なんですが、まさかあの会長がイカレタPOCの人間と会わはるとは思いませんでした。いったいあの娘は何者なんです? そしてアンタは……」

「それを君に話すわけにはいかないことは、秘書の役目を担っている貴方なら分かっていますよね」

「真面目過ぎやで。ようそんなんでPOCが務まりますなぁ。あの娘みたいに行く先々で大の大人相手にハッタリかまさんと出世できまへんで」

「サラはハッタリなど使わない」

「そうでっか? 確かにサラはんは美人やから、アンタがお熱を上げるのもようわかりますが、ワイには売れっ子のコールガールにしか見えまへんのですが……」

 この蒲生と言う奴が僕を怒らせようと企んでいるのは雰囲気で察していたが、僕の事は兎も角サラの事を悪く言われるのは許せないで睨むと、蒲生もまた俺の眼を睨んでいた。

 “コイツもヤル気だ”

 丁度、その時37階に到着してドアが開く。

 開いたドアから真直ぐに伸びる通路で出迎えてくれたのは、秘書課のお嬢様たちではなくスーツを着た体育会系の連中。

「栗林会長の部屋は?」

「この通路を抜けた先。無事に辿り着ければええのですが……」

「なるほど、そういうこと?」

「そう言うことでんな」

 一番手前の男は、身長は僕より少し低いが体型は全体的にガッシリしている柔道系。

 蒲生が“どうぞ”と通路に向けて手を差し伸べると、その男が指をポキポキと鳴らす。

 いつでも来いと言うことか。

「OK! Ready Go‼」

 僕が掛け声とともに前進しようとするアクションを起こすと、目の前の男が左のジャブを打つような素振りを見せる。

 だが彼は決して殴ろうとしているのでなく、僕の衣服か体の一部を掴もうとしているのだ。

 だから前進はしないで体を左に大きく回し、ついでに体を軸にして左脚を後ろ向きにくの字に振り上げた。

 振り上げた足に当たったのは、俺の真横に居た蒲生。

 彼は僕に蹴られることを予想していなかったらしく大きくバランスを通路方向に崩し、更に半回転した遠心力を利用して蒲生を目の前の男にぶつけるように突き出した。

 目の前の男は、自分に向かって飛び出してきた蒲生を手で支えながら、右に避けようとしたので上半身と下半身の軸が斜めにズレた。

 僕はスライディングをするように、右に避けようとした奴をもっと右に行けるように体ごと奴の2本の足をまるで土石流が襲う様に左にさらう。

 奴の体は右に大きく傾いて蒲生を受け止めた手まえ、背中から廊下に打ち突けられ同じく前のめりに倒れて来た蒲生の体重迄受け止める格好になった。

 もちろん蒲生を受け止めようとしていたので、受け身も取れないまま倒れたのでダメージは計り知れないほど大きいだろう。

 僕は低い態勢のまま次の男の繰り出す回し蹴りを潜り抜け、その後ろにいた奴の前で急ブレーキを掛けるように立ち上がろうとすると、奴はこの隙を見逃さずに右のストレートを僕の顔面に向けて放ってきた。

 “上手い!”

 と、褒めてあげたいところだけど、折角日本にまで来て顔にアザを作って帰りたくはないし、そもそも僕が立ち上がろうとした一瞬の“間”自体が隙ではない。

 言ってみれば、この一瞬の間合いは“誘い込み”

 僕はまだ立ち上がる前の後ろに重心が掛かって斜めになった状態のまま、奴の放った右ストレートの手首と肘を摑まえると、体を回転させて僕が来た方向に思いっきり振り回し放り出す。

 タイミングは予想通りドンピシャで、右回し蹴りの下を僕に潜られた男が体を半回転させてから逃げた僕を追うためにダッシュしたところに、パンチを放った奴を投げつけることに成功した。

 お互いの体同士が向かい合う方向にまともに当たったのだから、ダメージは相当なもの。

 サラ的に解説するならば、時速20km/hでこっちに来ようとする人と、同じ速度で向こうに行こうとする人が鉢合わせした場合のエネルギーは20km/h×2で40km/hと言うことになる。

 この場合、体重の約30倍、高さにすると約6m高さから飛び降りるのと同じ衝撃を受けることになるからその後の2人を見る必要もないだろう。

 ダメージは蓄積して体の瞬発力や体感を奪ってしまうので、漫画やドラマの様にボコボコに打ち込まれた後に根性で逆転するなんてことは殆どない。

 あるとすれば1対1の時にだけ起こるラッキーパンチと言う奴だが、それは複数回続くことはない。

 こういった多人数と戦うときは、先ずこちらにとって有利な流れに持ち込むことが一番肝心なことで、次に大切なことは主導権を相手に渡さないこと。

 だから僕はそのまま前に突き進んで行った。

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― 新着の感想 ―
[一言]  メェナードさん凄い❗❗  さすがやる時にはやる男❗❗  やっぱり計算が早いです。  久々のアクションシーンですね。  臨場感半端無い描写、惚れ惚れしてしまいます。(*´艸`)
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