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【ローランドの死②(Roland's death)】

 管制塔を出て10分後、ようやくローランド達の居た場所に到着する事が出来た。

 既に最後の連絡からは1時間も経過していて、もう救急車も居ない。

 居るのは警備のために残った兵士だけ。

「POCのサラだ。現場を見に来た」

 言葉の1字でも省略したくて用件を話し、許しも待たずに現場に向かうため階段を急いで登った。

 目的の階に辿り着くと、また部屋の入り口に兵士が立っていた。

「現場を見に来た」

 更に言葉を省略して部屋に入ろうとしたとき、兵士の1人が強引に私の手を掴んで止めようとした。

「触るな‼」

 苛立っていた私は叫ぶと同時に手首を返して私の手を掴んだ兵士の手から逃れ、お返しに金的蹴りをくれてやると、兵士は股間を押さえてうずくまった。

 当然のように他の兵士が怒りの眼をギラギラさせて近付いて来る。

 “しまった、やり過ぎた”

 しかし時間は巻き戻しできない。

「よう、いってぇこれはどういう事なんだ。えぇ?お嬢ちゃんよぉ」

「何のつもりか知らねえが、フランス外人部隊を舐めんなよ」

 ここを警備しているのは昨夜合ったあの荒くれ者で有名な外人部隊の面々。

 男たちは酔っていたのか、昨日私と会ったことを覚えていないらしい。

 そして問題なのは、ここに昨日騒動を止めてくれた黒人の隊員が居ない事。

 居るのはモンタナと言うモヒカンの大男と、昨夜真っ先に絡んで来た背の高い男にスキンヘッドのヒスパニック系と黒髪の男。

 黒髪の男は、いま私に金的を食らってうずくまっている。

 3対1。

 しかも相手はフランス外人部隊の兵士たち。

 不意打ち以外で私の合気道が通用するとは思えない。

 一応護身用に拳銃は持って来ているので、こっちを使う事にした。

「近寄るな! 私はPOCのサラ・ブラッドショウだ」

「POC? なんだそりゃあ?」

 一応、警告だけはしておいたが、コイツ等ロクに作戦命令書に目を通していないらしい。

 目を通していればPOCと言うのがこのグリムリーパー暗殺作戦の協力企業であることも分るし、この私の名前も知っていれば私への対応が“将校扱い”であることも理解してくれると思っていた。

 “一体誰だ? こんな無知な野蛮人たちを戦場に送り出した奴は”

 仕方ないので腰の後ろに挿した拳銃を取り出し、奴等に向ける。

「ほお……撃つつもりか」

 だが奴等は怯まない。

 金のために命を捧げる外人部隊の兵士は、死を恐れぬ傭兵だと辞典に掲載されていただけあって、奴等もまた平然としている。

「言っておくが、その拳銃で俺たちは殺せねえ。このクソ重いボディ―アーマーは初速の遅い拳銃の9mm弾などは通さねえ」

「足を撃ったところで俺たちの動きを完全に止める事は出来ねえ」

「殺すつもりなら、拳銃をもう少し上げて頭を狙いな。そうすればグリムリーパーに射殺されたこの部屋に居たドイツ兵みたいに血しぶきを天井まで上げて俺達を殺せるぜ」

 “射殺された……”

 “血しぶきが、天井まで?”

 モヒカンの男の言葉に誘われる様に、拳銃を持ったまま茫然と前に進む。

 奴等も私の様子に気付いたのか、横を通り抜ける私をただ見ているだけだった。

 そして次の部屋に入った私は、2つの事に強く驚かされた。

 ひとつは床だけでなく、天井まで染めた大量の血痕。

 これは頸動脈を遣られたに違いない。

 だからラルフ軍曹は止血すると言っていたのか……。

 もうひとつは、500m程先にある壊れた公営住宅。

 崩壊しているはずなのに、砲弾は5階の12号室の床部分から4階の12号室と3階の12号室の上部だけを崩落させているだけ。

 “何故?”

 私の指定した通りの砲弾を使用したのなら、この様な建物は簡単に全壊させることが出来るはず。

 なのにこの破壊状況は10mタイプ……いや、それよりも威力の落ちる5mタイプ以下の爆発しか起こしていない。

 これだとドア1枚、壁1枚隔てただけで殺傷能力は極端に落ちる。

 私はメェナードさんに30mタイプを使う様に指示したし、メェナードさんもそれを了解した。

 なのに何故……。

 踵を返し急いで部屋を飛び出し、階段を駆け下り、車に飛び乗った。

 再び車を飛ばし、向かうのはグリムリーパーが潜んでいた、あの公営住宅。


 驚いたのは、それだけでは済まなかった。

 着弾現場に到着してみると、そこには何故かメェナードさんが居て何かの作業をしていたのだ。

 “何故メェナードさんが、ここに?”

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