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【グリムリーパー暗殺作戦⑥(Grim Reaper Assassination Operation)】

 無線機の周波数から、ローランド達が使っているインカムタイプの傍受にも成功したが、こちらからのアクセスについては幾重にも張り巡らされたセキュリティーによって何度も弾かれて未だに連絡が取れていない状況。

 決して私のノートパソコンが非力な訳でなく、おそらく司令部の発信機とローランドの受信機が数分ごとに同期を繰り返して、その間に数秒ごとのタイムスケジュールを組まれた暗号のやり取りを行っているのだろう。

 だから周波数が特定できただけでは通信出来ないし、同期する事に成功したとしても暗号とタイムスケジュールの解読が出来なければ通信できない。

 仮に暗号とタイムスケジュールが解読できたとしても、同期自体が数分ごとに行われるわけだから、更新された新たな暗号とタイムスケジュールの解読に追いまくられて通信する暇はない。

 何故この様に複雑かつ高度なセキュリティーが居るの?

 と、言うことはグリムリーパーの居場所が特定できても、私がローランドの弟ハンスと直接話をすると言う事はないの?

 兎に角、これに固着していては何事も前には進まない。

 私は私のベストを尽くし、ローランドの事は信じるしかない。

 ≪ローランド中尉!また子供が出てきましたぜ≫

 ≪ああ、確認している≫

 ローランドとラルフの会話が聞こえる。

 今度の子供は何なの?

 ≪撃つか?≫

 ≪まさか、ただ窓から折り紙で作った飛行機を飛ばしているだけの、普通の子供じゃないか≫

 ローランドは何故ラルフに“撃つか”と聞いたの?

 最初に撃った子供の時には、あれほど狼狽していたと言うのに……屹度彼は何かを感じているのだ。

 どんな子供なのか、私には見ることは叶わない。

 ただラルフ軍曹の情報では、窓から紙飛行機を飛ばしているだけの、普通の子供と言う事だけが分かる。

 可哀そうだけど、この子はラルフの言う様に普通の子供ではない。

 おそらく聴覚障碍者か、知的障碍者のどちらかだろう。

 でなければ、銃声の飛び交う中で窓から紙飛行機を投げては遊ばない。

 ローランドも直ぐその事に気付いて、本部に連絡させた。

 今頃はハンスと言う弟が知らせた住所を元に、現場近くにいる警察官に連絡して、あの子に危険を知らせる様に手配されている事だろう。

 しばらく無線は途絶えた。

 無線が途絶えるのは、何事も無い証拠。

 久し振りにパソコンから目を離し、管制塔から見える遠くの景色を眺める。

 青い空の向こうを、バグダード国際空港を飛び立ったばかりの白い飛行機が悠々と飛んでいて、遠くから見るその光景はまるで紙飛行機のようにも……。

 “紙飛行機!?”

 もし紙飛行機を飛ばしたとしたら、それを飛ばした子供は何を見る?

 答えは“紙飛行機”

 誰でもが分かる答えだから、問題にもならない。

 しかし子供……いや、子供の体のどこかにカメラを取り付けていたならどうだろう?

 飛ぶ飛行機を追いかけながら、体を少しずつ動かす事で周囲の状況が見て取れる。

 私の予想が当たっているとすればグリムリーパーは最初の子供を殺害させたことで、狙撃班の隊長の居る大凡の位置を突き留め、今度はその隊長を始末するために正確な位置を探っている。

 そう考えるなら、不思議な子供が現われて飛行機を飛ばす意味も理解できるし、何よりもタイミングが合い過ぎる。

 おそらくグリムリーパーは、この子の傍にいる。

 今直ぐハンスから連絡が入れば良いのだが、こちらからアクセスできないので待つしかない。

 とりあえずメェナードさんに連絡して、有効範囲30mの物の準備をするように指示した。

「えっ、20mではなくて30mかい?」

「そう。広範囲に潜んでいる可能性が高いの」

「了解!」

 私自身もパソコンの設定を30mの物に変える。

 確かにグリムリーパーが、どこに隠れているかはまだ分からない。

 30mタイプを使用する事で5階建ての古い集合住宅に居ればどこに隠れていようとも、その建物丸ごと奴を葬り去る事が出来る。

 犠牲は仕方がない、今はローランドの命の方が私には大事。


 しばらくすると、急にローランドの悲鳴にも似たような声が届いた。

 ≪撃つ!≫

 ≪撃つって?!≫

 ≪あの子供を撃つ≫

 ≪おい、気でも狂ったか! 相手はただの子供だぜ≫

 ラルフ軍曹が言う通り、まるで狂ったようにローランドは子供を撃つと言い出した。

 何故、子供を!?

 でも撃っては駄目!

 子供は囮に過ぎない。

 “直ぐに安全な場所に隠れて、子供の居場所を私に教えて‼”

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― 新着の感想 ―
[一言]  ここはグリムリーパーの冒頭シーンですね。  グリムリーパーの敵側では、サラちゃんも絡んでいたんですね。  次回は読むのが、本当に怖いです。
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