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【グリムリーパー暗殺作戦⑤(Grim Reaper Assassination Operation)】

 金曜日。

 ついにグリムリーパーが引っ掛かった。

 いや、正確に言えば、引っかかって来るだろうシチュエーションが訪れた。

 事の発端はラマーディの郊外に取り残された1人の遺体。

 これはCIAの現地職員なのだが、彼の持つ鞄の中にはザリバン掃討に関する綿密な資料が隠されている。

 もちろん、これは“そう言う設定”な訳だが、これに敵が掛かった。

 たしかにこの資料が本物であれば、自分たちを相当しようとする作戦の全容が明らかになるばかりか、作戦自体も阻止できるうえに多国籍軍の部隊配置や正確な人数も把握できる。

 知らせを聞いて既にローランド達は速やかに配置に着き、奪おうとする敵と、奪い返そうそする見方を狙撃する敵との間で膠着状態を作り出すことに成功していた。

 膠着状態になれば、是が非でも情報を得たいザリバンはグリムリーパーを招集して、この膠着状態を打破してくるはず。

「メェナードさん、手筈通りにお願い!」

「了解!」

 メェナードさんは、155mm榴弾砲へ。

 私は管制塔へと向かって走る。

 一刻も早く携帯でローランドと話がしたいが、同じ作戦行動を取っていても役割が違うのでお互いに連絡し合う事は許されない。

 私に許されているのはローランドの弟ハンス・シュナイザー通信士兼、着弾観測員から連絡が入ったときだけ会話が許されていて、その連絡が入るまでは私が携帯しているレシーバーは彼の周波数に割り込むことはできなくて、大まかな状況だけは司令部の方が教えてくれる。

 だけど、この状況に甘んじる私ではない。

 無線を使っている限り、必ず電波は飛んでいる。

 特に管制塔は見晴らしも良く、電波を傍受するには絶好の場所。

 あとは声紋認識システムをアンテナに繋げて、ローランドの声が乗った周波数を探させればいい。

 もちろんアンテナは空港備え付けのアンテナ。

 ≪ローランドだ、もう一度確認する。相手はまだ5歳くらいの子供で、この戦争には関係ないが、それでも撃てと命令するつもりなのか!?≫

 <すまないローランド中尉。“子供だから撃たない”が、まかり通ると今後敵は子供を前線に送り込むようになる。そしてこの子供が鞄から書類を奪うことに成功すれば全ての嘘は敵にバレてしまい、ここで誘き出すはずのグリムリーパーさえも逃がしてしまうことになる>

 ≪俺に子供を撃たせてまで仕留めなければならない敵の狙撃兵とは、いったい何者なんだ!?≫

 珍しく苛立ったローランドの声がレシーバーから耳に届く。

 ローランド、落ち着いて‼

 ここは本当の敵の意図を探る必要がある。

 何故、子供なのか?

 司令部の言う通り、子供を利用すれば簡単に書類を奪えるとは到底思えない。

 もし私が作戦司令でも、同じように“撃て”と命令するだろうし、ローランドの立場なら彼の様に迷うことなく撃っていただろう。

 では、何のため?

 子供である必要は?

 私が司令官ではなく一般的な通信将校だとしたら、ローランドからの連絡を受けて直ぐに子供の射殺命令を出せる?

 答えは“NO”相手が非戦闘員である以上、司令官に状況を伝えて指示を仰がなければならない。

 それが軍隊と言う組織。

 では、私がローランドではなく、彼の部下だったら?

 考えてみれば、彼以外誰も少年について司令部に報告をしていない。

 同じ狙撃班のメンバーは子供を発見して、リーダーであるローランドの無線に連絡をしたのだ。

 つまりリーダーであるローランドの任務は、最も重要な敵であるグリムリーパーだけでなく、困難な敵への執行権も任されると言う事。

 これを逆向きに考えるならば、子供が撃たれることで敵が知り得るのは“リーダーの位置”と言う事になるのではないだろうか!?

 ローランドに射撃を中止する事を伝えなければ‼

 しかし私が敵の罠に気付いた瞬間、無情にもレシーバーからはローランドの銃声が聞こえてきた。

 ガクガクと膝が震える。

 グリムリーパーがこれまでその姿を発見されることもなく無事でいられたのは、彼の強さだけではない。

 彼は卓越した狙撃術だけでなく、その能力をも上回る状況把握能力と分析力を兼ね備えているからこそ圧倒的に数的に不利な状況でこれまで生き延びて来られたのだ。

 強さだけでなく、用心深さも兼ね備えた“狼”

 狼は決して焦らない。

 相手が弱り、焦るのをジッと待つ。

 そして、その瞬間を決して見逃さない。

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