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【グリムリーパー暗殺作戦①(Grim Reaper Assassination Operation)】

 私の献身的なサポートもあって、ローランドの不安は払しょくされた。

 月曜日には会議があり、私にもグリムリーパー暗殺計画の日程が知らされたが、呼び出されて本部に行ったメェナードさんは未だ戻って来ていない。

 今回の作戦に関する事なのは分かるけれど、一体何の用で呼び出されたのか気になるけれど来週の頭に迫った決行日に向けてやらなくてはならない事が多過ぎてイチイチ気にしてはいられない。

 暗殺作戦が行われる来週までに、歩兵部隊やCIAなどの諜報員が先ずファルージャの街で何かしらの活動を始めてグリムリーパーの注意を引いておく。

 私たちはファルージャの中心部から約16km西にあるタカダム空軍基地に移動する。

 私はここに滞在し、ローランドたち狙撃班はこの基地のパトロール隊に成りすまして、いつ配置に着いても怪しまれないように準備しておく。

 火曜日にクウェートのアメリカ軍駐屯地からM777 155mm榴弾砲が輸送機で届けられ、私たちは綿密にこれを整備して“そのとき”に為に備える。

 自信を取り戻したローランドも、他の狙撃班と共に精力的に訓練とミーティングを繰り返し、夜には私が見つけた秘密の場所でお話をしてはお互いの体を求めあっていた。

 ローランドはいつも私を優しく抱いてくれて、とても大切にされている事が分かる。

 パパとママも、こうした日々を過ごしているうちに、お互いをより深く理解し合う様になって結婚したのだろう。

「ねえローランド、準備は順調に進んでいる?」

「ああ、サラのおかげで失いかけていた自身も取り戻す事が出来たし、他の狙撃班との連携も旨く行っている。なによりも射撃の精度が上がった。いまオリンピックが開かれたら間違いなくピエールに勝つ事が出来、ゴールドメダルが獲得できるのは間違いないのに残念だよ」

「まあ!不安でどうしようもなくなって私をコンサートに誘ったあの日が嘘のような自信ね」

「全てはサラのおかげだ」

 肌寒い夜の砂漠に広がる満点の星空を観ながら、逞しいローランドの腕に抱かれてお喋りを楽しんでいた。

「ねえ、どうして私だったの?」

「えっ?」

「だから、あの日、どうして私を選んだの? アナタなら部隊に居る、どんな女の子でも、誘えば着いて来させられる自信はあったでしょう?」

「まさか……」

「嘘おっしゃい。若き将来性ある将校と言うだけで女どもは目の色を変えるのに、オリンピックのメダリストで、その上ハンサムで身長も高くて逞しい。女なんてより取り見取りなのは自分でも分かっているくせに」

「それは、そうかも知れない。だけど俺は、俺自身をそういう目で見られていることが嫌なんだ。俺がサラを好きになったのは。親睦会の時、俺自身の不注意で君にぶつかってしまった時なんだ」

「ワザとじゃなかったの?」

「まさか! あの時は同僚のラルフ軍曹にチョッカイを出されて振り向いたところだったので、本当に不注意だったんだ。……でも何故、ワザとだと?」

「まあ、若い女の子のお尻を狙って攻撃してくるのは、盛りの付いた動物の本能でしょう」

「そう。その通り!」

「えっ!? なにが??」

「あのときぶつかった俺を見返してきたサラの眼は、まさにそう言う事を軽蔑する目だった」

「そ、そう?」

 言い当てられてしまい、ワザととぼけた。

 あの時の私の気持ちを端的に表すとすれば“この無礼者!”だったのだ。

 だけど、もう好きになってしまった今では、その事を正直に言いたくない。

 言うとすれば、お互いに歳を取って、どちらかが死ぬ直前。

 最後の笑い話として、出会った最初の印象を話してお互いに笑いながら別れたい。

「今まで、あんなに正直な感情をぶつけられた事は無い。どういう訳か、特に女性からは好意的な眼で見られる事が多くて、実は俺自身その事が一種の“恐怖症”みたいなものになっていたんだ。唯一違うのは母だけだったけれど、そこにサラも加わってくれた」

「贅沢ね」

「贅沢? 違うよ。これは人間として当然の欲求だ。悪いことをすれば、悪い様に見られるのが当たり前だろう? 何でもかんでも肯定される方が不気味だよ」

 女の子なら誰だって、高身長、高学歴、高収入の男性には憧れを持つのは当たり前なのに、彼なんてその上に長イケメンでマッチョまでプラスされているのだから、女の子が彼に好感を持つのは当たり前なのにそれが理解できないとは……。

 この人、思っていた通り、本当に素のハンサムなんだ。

 作られた物ではなく、途中からそうなったものでもないので、周囲の自分に対する対応が日常的過ぎて逆に理解できていない。

 だから私が彼の母親の様にチャンとした態度を取った事で、一種の安心感を覚えたのね。

 ひょっとしてチョッとマザコンなのかも知れない。

 けれども、そのママと似たような私なら、きっと私はローランドのママと上手くやっていける。

 “あらヤダ!” 私ったら何考えているんだろう……。

「なあサラ……」

「なぁに……?」

 急にトーンの下がったローランドの声にドキッとする。

 夜空を流れ星が真横に流れる。

 私が待っていると言うのに、ローランドはナカナカ次の言葉を出してくれない。

 たった数秒、いや1秒ほどの時間なのに、もう何日も砂漠で水分を補給していないように喉がカラカラになる。

「この作戦が終わったら、正式に俺と付き合ってもらえないだろうか?」

「ハ、ハイ」

 わーっ! 何私神妙に二つ返事で答えているのだろう!?

 これってプロポーズだよね。

 まだ16歳だってこと言っていないのに、どうしよう……。

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