表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/111

【ローランド・シュナイザー②(Mr.Roland Schneizer)】

 飲みやすいカクテルが気に入った私は、そのあとチョコレートと珈琲リキュールに生クリームの入ったジェントルマンズ ショコラや、グラスの中にカットしたオレンジや各種ベリー類が詰まって色鮮やかなサングリア。

 コーヒー・リキュールのカルーアを牛乳で割ったカールア・ミルク、グラスにカットされた桃が添えられているピーチカクテルのベリーニ、淡い緑色が印象的で大人のアダルトなミントの味わいのグラッド・アイ。

 その他にもグラスの上下で赤と白に色の別れたアメリカン・レモネードや、ライムの爽やかな味と香りがいかにもクールなギムレットなど沢山のカクテルを呑んだ。

 カクテルは飲みやすく、見た目も綺麗でチョッと大人の雰囲気に酔ってしまったのか、バーを出る時にバランスを崩してしまいローランド中尉に支えて貰った。

「大丈夫かいサラ」

「らいじょうぶ、何ともない」

「大丈夫じゃないな……」

「そう思うのなら、わらしをここに運びなさい」

 私はローランド中尉にカードキーを渡した。

「部屋の鍵……いつの間に?」

 コンサートが終わり化粧室に言った時に、私はダブルベッドの部屋を予約しておいた。

「いいから、るれてゆきなさい」

 私は確りと中尉の太い腕に抱き着いて、部屋に連れて行くように指示すると彼は素直に従った。

 酔った女に手を出すような人でない事は分かっているが、どうやら酔っ払いには逆らわない方がいいと思っているらしい。

 部屋に入るとローランド中尉は私をベッドに運ぶと“おやすみ”と声を掛けて立ち去ろうとしたので横になったまま彼の手を掴んだ。

「どうしたの?」

 立ち止まったローランド中尉が優しく私に囁く。

「ここに居て」

「少しだけなら……」

「駄目、私はそのつもりよ。アナタも私を誘ったとき“そのつもり”だったのでしょう?」

「そ、それは……」

「出たんでしょう?グリムリーパー暗殺計画の日程」

「……」

「いいの。怖いのはアナタだけじゃないわ。私も同じ」

「サラ、君は何故俺の心が分かる?」

「いいの。私は未だ知らないし、軍に協力しているとはいえ民間人に軍の重要な情報を漏らす必要はないわ。でも私の会社の方は既に知っているみたい。だから私の助手を務めるメェナードさんを本部に呼び戻した」

「もしサラの言う様に、作戦の日程が決まったとしても、俺は怖くはない。グリムリーパーを見つけてライフルの引き金を引く。だたそれだけのこと」

「嘘を言っては駄目」

「嘘?」

「頼りにされているのが分かっていて困っているのが分かっていて軍人として逃げられないと言う自分の弱さも分かっていて、志願したのは良いけれど実際に“その日”が決まると命の期限を突き付けられた様な気がして怖くなったんでしょう?」

「ち、違う‼」

「オリンピックのゴールドメダリストで、アナタが1度も勝てなかったフランス警察のピエ-ル・ベルモンドは、自分にはグリムリーパを倒す自信がないと断ったわ。もちろん友人として自分が断れば次に声を掛けられるのは誰であるか分かっているから、アナタにも断る様に連絡を入れたはず。でもアナタはピエールの様に警察官ではなく、このイラクで仲間をグリムリーパーに殺されている軍人。その軍人と言う職業意識が邪魔をして、断る事が出来なかった。違う?」

「……」

「ジョンの仇を討ちたい気持ちもあったでしょう。でもアナタは素人ではなくプロ中のプロだからこそ知っている。気持ちだけではグリムリーパーに勝つどころか、立ち向かう事も出来ない事を」

 ローランド中尉は俯いたまま。

「いいのよ。アナタは撃たなくても」

 中尉が驚いて顔を上げて、私を見た。

「アナタは囮になってグリムリーパーを誘き出すだけで充分なの」

「し、しかし!」

「あとは私に任せて」

「ゴッド・アローか?」

「そう。アナタは囮としてグリムリーパーを誘き出して、アナタの優秀な弟さんにその正確な位置を私に伝えさせるだけでいいの。怖がらないで。……そして私を抱いて」

 私がローランド中尉の腕を引き寄せると彼は抵抗せずに従い、そのまま私の唇を奪った。

 1stキッス。

 メェナードさんの広いオデコや、ほっぺにキッスをしたことは何度もあるけれど、唇と唇を合わせた事など今まで誰ともなかった。

 初めてのキッスは、柔らかくて意外に面白い。

 これ、チョッと癖になるかも。

 そうしている間に、いつの間にか彼の手が私の胸をまさぐる。

 小学6年生の時に男子がふざけて私の胸を揉もうとして触られた事があり、ホンの一瞬だけ触られたけれど、その時は痛いだけで気持ちいいとも思わなかった。

 でも今は、妙にくすぐったい。

 擽ったいくせにゲラゲラと笑いだす事もない、変な気持ち。

 “なにこれ??”

 そのうちに彼が私の衣服を剥がし、露わになった胸の先端に唇を着けようとする。

 やーね、まるで赤ちゃんみたい。

 おかしくてつい笑いそうになった次の瞬間、彼の唇が私の胸を捉えると、いきなり体に電気が走り硬直した。

 唇を付けた彼の頭を引き剥がしたい気持ちとは逆に、その頭に回した手が確りとまるでしがみ付くように抱いていた。

「ちょ、チョッと止めて」

 言葉と行動が真逆。

 どうした、私!?

 酔って壊れちゃったの??

 そのうちに彼が私の体に入って来ると、初めて触れられる感触に最初は慣れずに戸惑っているだけだったけれど、仕舞にはもう何も考えられなくなり彼の動きを受け入れるために必死にしがみ付いていた。

 何をされても、彼にしがみ付くことしか出来ない、まるで“だっ子ちゃん”。

 どこを触られても、脳に届くのはビリビリとしたまるで感電したような痺れた感覚。

 ただその感覚が電気による感電と違うのは……電気と違って大きく違うのは……。

 “はあはあ”と息ばかり出て、脳に酸素が供給されていないの?

 いや、出す分があるのなら必ず取り入れている酸素も有るはず。

 なのに状況を考える余裕もなく、分析する能力も失い、まるで脳みそが空っぽになったようにただひたすら自分の内部を擦られるのをそのまま受け入れていた。

 脳が痺れて、もう快楽以外の何もない。

 微かに残っていた理性が、この状況を分析して理解していた。

 “こうして大人は快楽と引き換えに、馬鹿になって行くのだ”と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  サラちゃん、大胆。  最後のセリフがとても印象的で同感です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ