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アン・ファミーユ(家族とともに)第1部  作者: 湖灯


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【親睦会で出会った男③(Germans I met at a social gathering)】

 決心を決めて、席を立とうとした丁度その時、トレーを抱えたローランド中尉が戻って来た。

「ゴメンね、待たせちゃって」

「いえ」

「好い席だね」

「はい」

 やだ私、一体何を言っているの?

 私は、この会食をキャンセルしてメェナードさんを探すはずだったのに。

 なのに私は私が確保した席の事を褒められただけで、また胸が熱くなって喜んでいる。

「お待ちどうさま」

 彼がトレーを私の前に置く。

 そうだ!ドリンク!

 この黄緑色のドリンクが原因でこの会食は打ち切られるのだ。

 ハッと、その事を思い出した時、急にグラスに入ったこの黄緑色の液体を恨めしく思った。

 私の視線に気付いた彼が、グラスに入った液体の正体を私に明かす。

「これは緑茶だよ」

「緑茶?」

 緑茶を知らない私ではない。

 お寿司と一緒に出て来る飲み物だ。

 でも、ここにはお寿司は無い。

 なのに何故?

「最近、弟がハマっていてね。その影響で……緑茶は初めて?ナカナカ美味しいよ」

「弟さんがいらっしゃるんですか?」

 ヤダ何、私ったら、なんでこの人の家族の話しに付き合わなければならないの?

「いま士官学校に通っていて、今はまだ学生だけど“スジ”が良いんで連れてきているんだ」

 私が周りを見渡すとローランド中尉が、今夜のパーティーには出席していないと話してくれた。

「残念ですね」

「ああ、ハンスは……ハンスと言うのは弟の名前なんだけど、君のゴッド・アローに凄く関心を持っていてね。それで今は宿舎で、その勉強中」

「それは、原理を理解するための?」

「まさか、いくら軍人として優秀な素質を持っているとしても、サラみたいな天才じゃない。だから彼は俺が失敗したときの為に、確実にグリムリーパーを仕留める勉強をしているんだ。いくらゴッド・アローの精度が素晴らしいと言っても、観測員が正確な座標を伝えなければ役に立たないだろう?」

 そう。

 ローランド中尉の言う通り、ゴッド・アローの威力を確実に発揮させるには観測員が肝となる。

 だけど……。

 お兄さんが失敗した後の世界を考えて、ハンスと言う弟さんがどんな気持ちで勉強しているのかと思うと、哀しい気持ちになる。

 何故ならグリムリーパーは決して自分を亡き者にしようとする敵のスナイパーを見逃さない。

 ローランド中尉の失敗は、すなわち彼の死を意味するのだ。

「――で、カテキンも多く含まれて居るので、食後の血糖値の上昇も抑えることが出来るらしい……って、サラ聞いている?」

「うん。アミノ酸の一種であるテアニンはお茶の葉だけに含まれ、ほのかな甘みや旨味と言う味覚だけではなく、心と体もルラックスさせる効果が有るんでしょう」

「さすが、良く知っているね。でも未だソコまで話していないよ」

「あらっ」

 ローランド中尉に言われて驚いた。

 違う考え事をしながら人の話しを聞いていても、理解できなかったことはこれまでに1度も無かった。

 なのに今の私は彼を心配する気持ちが先で、彼の話しはキーワードをヒントにして勝手に自分で話の内容を進めていたのだ。

「ところでサラ、君は死んだジョンたちと親しくしてくれていたそうだけど、大丈夫?」

「な、何がですか!?」

「もしかしたら、友達が殺された復讐心からゴッド・アローが開発されたのではないかと思ってね」

「ま、まさか。たとえ砲弾だけと言っても、兵器の開発はそんなに簡単に出来上がるものではありません」

「そう……ならいいけれど」

 不意に放たれたストレートな質問に、胸を撃ち抜かれた気がした。

 ゴッド・アローは対人狙撃用と名を打ってはいるが、本当のところを言えば、そんな事は私の興味だけで兵器としての実用化など微塵も考えてはいなかった。

 それが、この作戦に採用されるまで漕ぎ着けたのは、ローランド中尉が心配してくれたようにグリムリーパーへの復讐心の賜物たわもの、私の夏休みの友人たちをこの世から消し去ってしまった“死神”だけは絶対に許す事は出来ない。

 私の思いを察してくれたメェナードさんのおかげで、イラクからも沢山のアメリカ人が実射テストを見に来てくれて、今日のこの日を迎える事が出来た。

 中尉の言ったことは全て当たっている。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ローランド中尉はハンスのお兄さん、と言うことは···。  複雑に絡み合う未来の不安を感じさせる回です。  残酷な真実が本当に辛いですね。
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