【いじめに対抗する武器(Weapon against bullying)】
孤児院から来ている私は周囲から馬鹿にされ、孤児と言うだけで差別され虐めの対象となった。
男の子からの虐めは暴力的な物で、力の弱い私のままでは対抗のしようがなかったので、武器を作る事にした。
最初に作ったのはスタンガン。
トランスやコンデンサ、ダイオードと言った電子部品やエナメル線などが必要だったが、そう言った部品は戦闘で壊れて放棄された無線機や兵器の残骸、壊された民家の家電からいくらでも手に入った。
肝となるトランスコンバーターだけは、ボビンに根気よくエナメル線を巻いて自分で作った。
この巻き具合により、スタンガンの性能が決まる。
背後からの攻撃に備えて高圧放電棒も作り、ハッカ油とタバスコを高圧で瓶の中に詰めた簡易催涙弾も装備した。
同級生の殆どはスタンガンのみで撃退できたが、今度は撃退した子供のお兄さんが上級生を連れて仕返しにやってくるようになり、その時は高圧放電棒と催涙弾が役に立った。
撃退して行くたびに敵はより上級生になっていき、それに合わせてこちらの武器もグレードアップを重ねて、高電圧シリーズは最終的にムチとなり催涙弾も防御用ではなく高圧空気発射式にして攻撃用として使用するようになっていった。
男子からの虐めは直接的な暴力が主体で、撃退するのは左程難しくはなく、むしろ楽しかったが女子の虐めは陰湿で楽しくはなかった。
悪口、ありもしないデマ、無視……。
無視はこっちにとっても好都合だったが、悪口やデマは質が悪く対抗策に苦慮したが、結局奴等の弱点が分かってからはそう難しいものではなくなった。
結局奴等が恐れていることは、奴ら自身が私に対して行っていること。
悪口やデマ、嫌な噂。
私は徹底的に、私を虐める女の子の私生活を調べ上げた。
母親や父親の浮気現場の写真。
意外に低所得なくせに見栄を張っている家の生活事実。
調べているうちに、下町の汚いアパートに潜んでいるかなりヤバイ過激派と関係のある親も居た。
あとは調査結果を目に付く場所にバラ撒くだけ。
本人を直接攻撃するまでもなく、家族をターゲットにされて彼女たちは傷つき、仲間割れを繰り返す。
叩いても埃も出ない奴なんて、そんなには居ない。
まして人を虐めるような、卑しい心の持ち主なら尚更。
そして、そういうヤツほど嫌な噂に敏感だから、エサを巻いてやれば勝手に仲違いしてしまう。
かなり恥ずかしい思いをした奴は次々に転校して行き、時間は掛かったが、これで私を虐める奴はこの学校から居なくなった。
しかし、それと引き換えに、私は大きなミスをしていた。
告げ口。
私に歯が立たないことが分かった奴等は、親に告げ口をしたのだ。
しらばっくれようにも高圧棒や高圧ムチで打たれた箇所には火傷に似た跡が残る。
1年生の女子にヤラレタなんて上級生の子は決して親には泣きつかないだろうが、傷が残っている以上、親は黙ってはいない。
親に問い詰められ逃げられなくなった苛めっ子は、ついに白状してしまい、その内容は親から先生に伝えられる。
最近身の回りが平和になり、警戒心が薄れていた私は、まんまと先生に掴まり持ち物を調べられる。
鞄の中には護身用に携帯している数々の武器。
問題なのは、これをどこで手に入れたのかと言う事。
どれも既製品ではなく、ハンドメイドなのは誰が見ても明らか。
だから“万引きして手に入れた”で逃げ延びる事が出来ないのは7歳の私でも分かる。
正直に自作品であると言えば、大人たちは驚くだろうし自分の虚栄心も満たされるだろうが、そのことは今後の私の人生に大きな悪い影響を及ぼしてしまうだろう。
拾ったと言う嘘も通用しない。
こんなものが都合よくシリーズで落ちているものではない。
幸な事に、追及の手はまだ警察には及んでいない。
警察で調べられれば、自作したトランスコンバーターに巻いた絶縁テープの指紋から製作者が私であることが分かってしまう。
「どこで手に入れた!」
先生に叩かれた。
女の子なのに先生は、容赦しない。
それは私が孤児だからだ。
「知り合いのお兄さんに作ってもらいました」
「その人は、どこに住んでいるんだ!?」
「住所は知りません」
「だったら、その人の家に連れて行け!」
先生に小突き回されて、私は有りもしない“その人の家”に先生を連れて行くことになった。