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【妹の消息③(The whereabouts of my sister)】

 街の入り口に到着すると、既にオビロン軍曹たちのハンヴィーが3台待機していた。

 3台と言う事は……。

 私が覗き込むと、予想通り元気な2人が飛び出してきた。

「ハーイ、サラちゃん‼」

 車から飛び出してきたのは狙撃兵のジョン曹長と、その監視員のメアーズ伍長。

 落ち着いた雰囲気のオビロン軍曹とは違って、2人とも“お調子者”だ。

「グリムリーパーが潜んでいるかも知れねえから、オビロンの歩兵だけじゃ心もとないだろ?」

「それは分るけれど、大丈夫なの?」

「なに言っているんだ。こう見ても俺様はオリンピックのライフル射撃アメリカ代表なんだぜ」

「それは心強い!」

 メェナードさんは喜んでくれたが、私は逆に不安になった。

 それはグリムリーパーのこと。

 奴は、より強力な敵を見逃すはずがない。

 車を止めて外に出る。

 車に見張りを置いて、メェナードさんを先頭にして着いて行くのは私の他に、オビロン軍曹と部下が2人。

 それに狙撃兵のジョン曹長と、その助手のメアーズ伍長。

「まるで“荒野の7人”みたいだな」

 一行の中で一番陽気なメアーズ伍長が言うと「じゃあ俺はマックイーンだな」とジョンが笑いながら言う。

「あれ?ブリンナーじゃねえのか?確か、こっちの方が隊長だったと思うんだけど」

「ブリンナーはオビロンだ」

「でも、階級はジョンの方が上だぜ」

「階級じゃねえ」

「じゃあ、何?」

「頭だ!」

 何気なく聞いていたつもりだったのに、思わず集中してしまい吹き出しそうになってしまう。

 ジョンの言う“頭”とは、つまり“髪型の事”。

 荒野の7人に限らず、ブリンナーの頭には毛髪が1本も無い。

 もちろんオビロン軍曹にも。

 しかも、何だか顔も似ていて、特に眼光鋭く睨んでいるときの目なんかソックリ。

 と、思った矢先。列の最後部でペチャクチャ喋るジョンとメアーズの2人に、オビロン軍曹が黙る様に指示するために振り向いた。

 急に目の前に現れたブリンナーの目に、堪えていた笑いが、ついに吹き出してしまった。

「どうした、サラちゃん?」

「いえ……なんでもありません。思い出し笑いです」

「そ、そうか……」

 私とオビロン軍曹とのやり取りを見ていた後ろの2人。

「やっぱサラちゃん度胸があるわ」

「だな、あのオビロン軍曹に睨まれたって平気に笑えるんだからな」

「俺達なんか、あの睨みの利いた眼光に、一瞬ビビっちまったもんな」

「だな」

 もー、本当に、呑気な2人。

 でも、その2人の更に上を行くのがメェナードさん。

「あれ、この通りを右に行った所だと思ったんだけどなぁ……」

「どうしたの?」

「どうやら道を間違えたみたいだ。昼と夜は、やっぱり街の表情も違うのかな?」

 確かにメェナードさんの言う通り、この街は夜には表情を変えるらしい。

 微かな風に、殺気に満ちた臭いが運ばれてくる。

 煙草の様なものを加えながら建物に寄りかかって、うつろな目でこっちを見ている男女。

 彼等が咥えているものは煙草ではない。

 おそらくマリファナタバコ。

 女たちは“たちんぼう”と呼ばれる売春婦で、男たちは女の元締めや見張りだろう。

 私たちを見張っている幾つもの眼差しに混じっている、奴を探し出さなければ私たちの命はない。

 オビロン軍曹たちも街中に入るとそれを察知して、オチャラケた気分から一転して警戒モードへと入る。

 グリムリーパーは確実に、ここに来ている。

「ああ、あった!あった!この家の人が教えてくれたんだよ」

 オビロン軍曹やジョン曹長、そして私さえ周囲の状況に神経を尖らせていると言うのに、まったくメェナードさんときたらマイペースそのもの。

 しかしそのメェナードさんが扉に近付こうとした途端、石を積み上げて作られた壁が砕けて、メェナードさんに当たるのが見えた。

 グリムリーパー!?

「あっ痛たたた!」

「大丈夫!?」

 躊躇せずにメェナードさんに駆け寄り、服の袖を摑まえて直ぐに通りの反対側に向かって走った。

「ど、どうしたのサラ。不意に飛んできた埃が目に入っただけだよ」

 だが、石が砕けるのを見て2秒も経たない間に、パーンと言う銃声が街に響いた。

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