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アン・ファミーユ(家族とともに)第1部  作者: 湖灯


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【京都には行かない(Don't go to Kyoto)】

「昨夜ね、遊び疲れてそのまま眠ってしまったあと、パパに服を脱がせてもらった夢を見たわ」

 ブッフェスタイルの朝食を楽しみながら、サラが昨夜のことを話す。

「パパに?」

「ええ、でも本物のパパではなく、パパ替わりを気取っているだけの人よ」

 今朝のサラが、少し機嫌が悪いのは大好物の牛肉料理の少ないブッフェスタイルの朝食にあることは知っているけれど“パパ替わりを気取っているだけの人”とは、いくら夢の中の出来事にしても酷すぎる。

「僕も夢を見たよ」

「どんな夢!?」

「すっごい美女が僕のベッドに入って来て、寄り添ってくれる夢さ」

「凄いね、で、その凄い美人とはどうなったの?」

「それがね、その凄い美人は気高くてイザというときに自分からナカナカ行動を起こすことが出来ない腰抜けだったから、相手の様子をうかがっているうちに夢から覚めちゃってどこかに行っちゃいましたととさ」

「まあっ! 腰抜けだなんて、あんまりだわ!」

「えっ!? サラのことではないけど、なにか心当たりでも?」

「あるわけないでしょっ! ただ、同じ凄い美人として、可哀そうに思っただけよ」

「なら、いいじゃない。どーせ夢の中のことなんだから」

「そ、そうね……」

 珍しくサラが僕に、やりこまれてしまう。

 いけない!

 僕とサラは、こんな関係じゃないはず。

 サラはいつも気高く、何事にも動じない女性でなければならない。

「ゴメン、つい嘘を言ってしまった」

「嘘? なんのこと?」

「さっきの夢に出て来た凄い美人なんだけど、僕が彼女のことを可哀そうだって言ったこと」

「……」

「実際には2人とも凄く仲がいいのに、一歩踏み出す勇気がないだけなんだ。それさえできれば僕たちは世界中のどのカップルにも負けないくらい……いいや、世界で1番幸せな家族になれるってお互いが知っている」

「じゃあ何故、2人とも一歩踏み出さないの?」

「それは、やり残していることがあるから。これが解決しない限り2人は幸せにはなれない」

「早く解決するといいね」

「うん」

「屹度、世界中の誰もが羨むような、素敵なカップルになれると思うわ」

「ありがとう」

「こちらこそ」

 サラの表情がパーっと明るくなると、広い食堂の中にまるで日が差し込んだように周り中のものがキラキラと輝きだした。

 天井から吊るされたシャンデリア風の照明は当然のことながら、銀のスプーンやフォークやナイフに食器・食べ物まで新鮮に活き活きと輝き、食堂に居る全ての人たちも明るく微笑みあいながら過ごしていた。

 これがサラの魅力。

 この魅力に傷をつけてはならないし、何者にも傷をつけさせてはならない。

 命には、必ず約束されたことがある。

 いわゆる運命というやつ。

 この日本に来てサラの祖父である栗林会長と話して、僕も僕に与えられた神様との約束の意味が分かった。

 僕と出会わなければサラの今はなかった。

 もしかしたら知能の高いサラは、危険分子として消されていたかもしれない。

 サラの家族探しに協力することで、妹のナトーも見つけることが出来たし、祖父の栗林会長にも合うことが出来た。

 しかしその妹のナトーは、サラの恋人を殺したグリムリーパー。

 やはり僕は神様から選ばれたのだと思う。

 もし僕でなければナトーは見つけ出せなかっただろうし、見つけたとしてもサラにそのことを話してしまい、彼女を混乱に陥れたことだろう。

 やはり、僕の決断は間違っていない。

 僕の運命はサラのこの輝きを守ること。

 それこそが僕がこの世に生を授かって、今まで生きてきた理由なのだ。


 朝食の時にサラに今日の予定を聞くと「ない」と返事が返って来たので、僕は京都に行くことを提案したが猛烈に反対された。

 何故サラが嫌がるのかは、ハッキリしていた。

 最大の理由は古さと伝統にしがみ付いているだけで、先進性が無いからだ。

 僕は日本の古い町並みが好きで、カメラを持って京都には何度も訪れたことがあるが、確かに京都の人たちは自ら動こうとはしない。

 特に厄介なのは交通事情。

 何系統にも別れるバスの表示から行先を探し出すだけでも旅行者にとっては大変なのに、折角乗ったバスの車内はいつも大混雑でその上道路も大渋滞。

 いつ目的地に到着するかも分からないし、当然狭いバスの車内にはトイレもない。

 せめてライトレールくらいは欲しいところだが、そういった案も次々に市民により反対されている。

 まあだいたい元々あった路面電車が全線廃止されているわけだから、観光客お断りと言っているような街と言っても過言ではないのに、JR東海が計画するリニア新幹線の構想で京都駅への乗り入れが無いことが分かると住民の多くはそれを問題視した。

「言っておきますが、私は観光客を好まない観光地には行きませんからね。だいいちどのホテルに泊まっても景観条例で高さを制限されているから、窓から見えるのは付近のビルだけでしょう? 天皇陛下が来るからとか御所があるからとか歴史的建造物がどうかとか、いろいろご立派な理由はあるのでしょうけれど、東京にある皇居の周りには高層ビルがいくつも立っているわ。結局彼らは余所者が入ってくるのを拒んでいるだけ。観光客のマナーがどうとか言われているみたいだけど、その観光地に行く交通網がちっぽけなバスとタクシーしかないなんて、とても国際的観光地として失格だと思わないのかしら? そりゃあフラストレーションも溜まるからマナーが悪くなる人もいて当然でしょう。結局古いと言う伝統の上に胡坐をかいているだけの街と言われても仕方ないでしょうね。だから私は行かない」

 サラは権力者や権威主義を嫌うから仕方がない。

 何故嫌うかはハッキリしている。

 サラには全ての人々が常に平等であるべきだと言う信念があるからで、それがどこの国のどんな偉い人を前にしても平然とした態度を取っていられる理由で、だからこそ平等な立場でのまともな取引が行える。

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― 新着の感想 ―
[一言]  この二人、本当に可笑しいです。笑笑  距離が近すぎて、夢って話になっちゃうんですね。  素直じゃないなあ。    メェナードさんの決意が熱いですね。  心からサラちゃんを愛しているんですね…
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