義理の妹
ペルー侯爵家の一人娘であるエマは、一族中が持て囃すだけあり、素晴らしく美しい少女だった。
けぶる様な金の巻き毛、エメラルドの瞳、透き通ったような肌、お人形のような顔立ち。
等身大の人形と言われても納得するレベルの美少女である。
義父を始めとした親族中が彼女を溺愛し、それはもう甘やかしていた。
例えるなら、サンドラが数多もいるっといった具合だ。一人だけでも大概だというのに、それが大勢いる環境で、エマに淑女としてのマナーが身に付くはずもなく、彼女自身の性格がゆがむ要因にもなっていた。
そう、見事に勉強嫌いの遊び好きな、ワガママ娘になっていたのである。
その上、好き嫌いも激しく、音楽やダンスが大好きで、大変得意としているのだが、その反面、嫌いな歴史や数学と言ったものには見向きもしない有り様である。
基本、好奇心旺盛な性格のため、興味さえ湧けば、どんな分野でもこなせるだけの器用さは持っているのだが、何分、努力を嫌う性質のため、才能が花開くこともなかった。
当然、カトリーヌがエマを軌道修正させようと、厳しく教育にあたってはいたのだが、何を勘違いしたのか、親族たちが「継子虐めをやめろ!」と怒鳴りこんでくるという悪循環が続いた。
どうやら、エマが親族に手紙を出して泣きついたことで事態は悪化したのだ。
あの親族がいる限り、エマをまともに育てることは出来ないとカトリーヌだけでなくその娘たちも感じていた。
お義父様は、親族の見当違いな訴えを真に受ける方では有りませんでした。
ですが、「もう少し優しく導いてあげて欲しい。エマはまだ幼いのだから」、「母親を求めているんだ。あの子なりの愛情表現なんだよ」、「少々ワガママな処もあるがそれは幼いからだよ」と言ってきます。幼いと言っても私と一つしか違いませんし、エマのワガママは目に余りますし、癇癪を起して泣きわめく行為は常軌を逸しておりました。
これには、お母様も呆れていましたわ。
「今のうちに意識改革(淑女の常識)をしなければ、侯爵家の『恥』になります!」
そう言って、エマを親族から引き離すよう、お義父様に主張していますが成果は芳しくありません。
最終的に、選りすぐりの家庭教師を付けさすことで合意したそうです。
お義父様もエマに時々ですが注意をするようになりましたし、いい方向に向かう事を祈るしかありません。