幽閉、そして貴族のバランス
宮殿の人の出入りはかなり厳重にされておりました。お義父様やお母様、私やサンドラお姉様、そしてペルー侯爵家の親族、エマの友人のみとされていたのです。
訪れる際は必ず予約をしなければならず、宮殿に入る前は受付に名前を記入しなければなりません。しかも面会時間は決まっていて、午後一時から四時の間のみという徹底ぶりです。
エマが宮殿の本来の目的を知って逃げ出さないための処置でしょうが…凄まじいの一言につきました。
隔離施設か何かでしょうか?
それとも豪華な修道院?といった具合です。
ここまで露骨にされると普通の女性なら何かを察しますが、相手はエマです。
このような状態にも拘わらず暢気なもの。
「宮殿をポンっと建てちゃうなんて流石はアレク様だわ! 豪華絢爛で私にピッタリのお城ね。アレク様ったら、美しい私を独り占めしたいなんて言って護衛を増やしてくれるのよ。愛され過ぎるのも困りものよね~」
と、悦に浸りきっている様子で、お義父様が頭を抱えていました。
どうやら、宮殿を与えられたことで、特別扱いされていると感じているようです。
確かに特別には違いありませんが……
あれでは、王太子殿下が側妃を娶る事に気付いていないのではないでしょうか。
内々に侯爵令嬢と伯爵令嬢が王宮入りすると伝えられております。
どちらも才媛と評判の御令嬢です。一人は外務大臣の娘、もう一人は文部大臣の娘です。
王家も考えていらっしゃいます。
外交担当と内政担当を用意しているのですから。
恐らく数年もしないうちに軍閥系の令嬢も王宮入りを果たすのではないでしょうか?
王太子殿下を馬鹿にしてましたけど、案外、腹黒なのかもしれませんね。
身分は高い美貌の馬鹿を正妃に据えて、他の才媛の派閥のトップの令嬢を側妃に置く。
貴族のパワーバランスを考えてます。
正妃があのエマである限り、外戚の心配もないでしょうし。
抜け目のない事です。




