そして王子様と幸せになりました
半年後、エマと王太子殿下は結婚なさいました。
結婚式はそれは豪華なもので、エマのウエディングベールの長さは歴代の妃の最長だというではありませんか。
純白の愛らしいデザインの花嫁衣装はそれはエマに似合っておりました。まさにエマのために用意されたドレスです。
それだけ王太子殿下の気合の入れようがわかるというものです。
神殿から王宮に向かうパレードには大勢の市民が一目新しい王太子妃を見ようと詰め掛けていました。
愛らしくも美しい妃の姿に民衆が熱狂したのは言うまでもありません。
一夜にして王家の人気が回復いたしました。やはり“美”というものはそれだけの力をもっているものなのですね。
因みに、私やお母様は親族として参加はしておりません。
王太子妃の親族としての参加をペルー侯爵家の一族の皆様にお渡ししたのです。お義父様がモノ言いたそうな顔で私たち母娘を見ていましたが、知った事ではありません。
貴族女性を敵にまわしたお飾りの妃の親族など御免被ります。
それに、私たち母娘の代わりに親族として参加されたペルー侯爵一族の方々は大変喜んでいらっしゃるのですから、これでよかったのです。
結婚式後、エマは王宮に入ることなく敷地内に建てられた宮殿に移動したと、お義父様から聞きました。
エマのためだけに建てられた宮殿は、周囲を堀で囲まれており、外への出入り口は一か所だけであり、それも堀の橋を渡らなければならないと言う離れ小島を連想させるお城だったそうです。
恐らく、脱走防止のための措置でしょうね。随分とお金をつぎ込んでいらっしゃいます。
その宮殿は中も豪華で広々しており、外の眺めが風光明媚であったため避暑地のような居心地の良さだったとか。エマも大層気に入っているらしく、王家の意図は全く分かっていないようです。
お義父様は、話していく中、チラチラと私とお母様の顔を何度も見ます。話に突っ込んで欲しいのか、それともエマの悲劇?喜劇?に一緒に共感して欲しそうでした。そんな感情、私たち母娘に求められても困るというものですよ。




