一年後の判定
一年間の妃教育は悲惨としか表現できないものだったそうです。
エマを机の前に座らせる事からして大変だったらしく、脱走されては追いかけ、部屋に立て籠られては音を上げるまで我慢大会をし、ヒステリックに叫ばれ暴れられるたびに身体に傷が増えていったそうです。教育係の精神状況が悪くなったのは言うまでもありません。鬱になった方やトラウマを抱えてしまった方までいるのですから。厳しくもお優しい方々ばかりでしたのに、お気の毒な事です。
この事は当然、お義父様も知っています。
それと言うのも、王宮の者がわざわざ経過報告に来てくださるのですから、嫌でも解るというもの。
エマを妃にするか否かの判断は王宮で行われる事となりました。
王家側には両陛下と王太子が既に椅子に座って待っていました。指定された時間に来た身ですが、なんだか王族を待たせたような感じでいたたまれませんでした。
ペルー侯爵家は、お義父様とお母様とエマ、そして何故か私と親族の数人が呼ばれておりました。
「アレク様!!!」
部屋に入るなり、御挨拶もせずに王太子に向かって一直線に駆け寄るエマに、侯爵家一同(私とお母様除く)は顔を青くしました。
挨拶も出来ない貴族令嬢はエマくらいではないかしら? 幼児でももっとまともに行動できますよ。エマの行動に驚き過ぎて金縛り状態の侯爵家一同を放ってお母様が前にでて両陛下に挨拶をする。
「本日はお招きありがとうございます。両陛下ならびに王太子殿下にお目にかかれて光栄に存じます」
お母様の優雅なカーテシーに習い、私も同様の挨拶を行った。
それを皮切りに侯爵家一同も次々と挨拶をおこなったのです。
どうやら正気にもどったようで何よりです。
王家の判断は当然ですが破談の一択のみ。
お義父様も覚悟は出来ていたようで、取り乱すことは有りませんでした。
親族たちも王家に何かをいう事はできません。
両陛下が破談の意向で話を始めると、王太子殿下が待ったをかけてきました。
「私はエマを愛している! 彼女を王太子妃に据えて、公務は他の者に任せればよいではありませんか!!!」




