私の自慢のお母様とお姉様
私たち姉妹のお母様が隣国の辺境伯爵家出身であることも大きな理由だった事でしょう。
この国と違って、隣国は大国です。ペルー侯爵家としても、隣国との繋がりが欲しかったのは言うまでもありません。
それに、お母様は娘である私の目から見ても、大変美しい女性です。とても二人の子供を持つ母親には見えません。
美しい白銀の髪、青い瞳、雪のように白い肌、秀麗な美貌。加えて、優雅な物腰の気高い貴婦人です。ただ、容貌と色彩故に冷たい感じを思わせてしまいますが、性格は、優しく芯の強い女性です。
サンドラお姉様は、そんなお母様とよく似た容姿ですけれど、お母様を少し柔和にさせたような顔立ちのため、冷たい感じは一切せず、清楚な雰囲気の白百合の如き美しさです。性格も御姿通り、温和でおっとりしています。
そんな美しいお二人の中で、私はと言うと、残念ながら、お母様にもお姉様にも似ておりません。お父様に似てしまったせいでしょう。
褐色の髪に、黒い目、顔立ちも平凡そのものです。
お姉様は、「お父様に似て綺麗な黒曜石の目だわ」とか「お父様によく似て可愛らしいわ」などと褒めてくれますが、身内贔屓過ぎると感じてしまうのです。お姉様はお父様っ子だったようで、お父様によく似た妹の私をそれは溺愛してくれています。あまりに可愛がるものですから、お母様がよくお姉様に小言をいいます。
「むやみやたらに、メアリーを甘やかしてはいけません」
「ただ、可愛がるだけではメアリーのためにならないのですよ」
「メアリーが将来苦労してもいいのですか」
「これは、メアリーに必要なことなのです」
などなど。
無理ない事です。
お姉様は、私が嫌がることや嫌いな事は絶対させません。
もし、私が「お勉強嫌い」と言ったら、「なら、しなければいいわ!」と返答する方ですから。
私がお姉様の言葉を真に受けてしまったら、大変なワガママ娘に育つこと請け合いです。お母様の小言は実に正しい判断でした。
そんな、私に激甘のお姉様と、厳しく優しいお母様は、私の自慢です。