お妃選びの招待状
その日、王宮から夜会の招待状が届いた。
王太子の妃選びの夜会である。そのため、高位貴族の令嬢宛に招待状が送られていた。
この時、メアリーは十七歳、エマは十六歳であった。
貴族令嬢の結婚適齢期は十六歳から二十歳である。なかには家の事情で十三歳で結婚する人や少し遅く二十五歳頃で結婚する人もいたが、それは例外中の例外に過ぎなかった。丁度、適齢期の二人に招待状が届いた事は、ごく当たり前の事でもあったのだ。
ただ、メアリーは実父のブラトン伯爵家を継ぐことが内々に決まっており、そのための婿選びもカトリーヌと伯爵家で密かに選別していたため、王宮からの招待状はメンドクサイ事この上なかった。かと言って、不参加など出来ない。相手は王家である。断わることは不敬罪に値した。
渋々参加すると言った感じのメアリーと違い、エマはかなり乗り気であり、喜々として夜会用のドレスを新調することに頭が一杯のようで、今も父親のエドワードにおねだりをしていた。
それというのも、エマには婚約者がいなかっただけでなく、候補者も選別していない状態だったのだ。と言うのも、侯爵家の一族がエマには恋愛結婚を望んでいたためだった。貴族令嬢に恋愛結婚を望むこと自体異常な環境なのだが、エドワードとエマの実母が恋愛結婚であった事が拍車をかけていた。実に稀なことなのだが、ペルー侯爵家は恋愛結婚で上手くいっている珍しい家系でもあったのだ。
他の貴族が聞いたら呆れ果てる理由でエマには婚約者が定められなかった。もっとも、それによる親族らの思惑も多少あったのは言うまでもない。




