母の再婚
お母様が再婚しました。
お父様が一年前に事故で亡くなり、周りに勧められての結婚でした。相手も数年前に奥様を亡くされ、一人娘を愛しみ育てているペルー侯爵と聞きました。互いに再婚同士で、侯爵の令嬢とも歳が近い事から、娘同士仲良くなれるだろうとのことです。
そういう訳で、私とお姉様は、お母様と共に、再婚先であるペルー侯爵家に参りました。
当初、私とお姉様は、お父様の実家にて養育される予定だったそうです。
それと言うのも、両親の仲は良かったのですが、跡継ぎとなる男子に恵まれなかったため、爵位をお父様の弟、私の叔父が継承したのです。
それは良いのですが、叔父は子供がいないどころか、結婚さえしていなかったのです。跡継ぎの事を考えると、最悪、私か姉が婿を取る事になるかもしれない状況でした。
まぁ、お父様とは大分歳の離れた弟で、私たち姉妹の方が歳が近く、叔父と言うより、兄と言った方がいい程でした。お父様と違って、ハンサムな叔父様には、当時から見合いの釣書が大量に持ち込まれていたそうですが、それのは全く見向きもしなかったのです。どうやら意中の女性がいるらしいけれど一緒になるには難しい相手との噂でしたが、それが誰であるかは誰一人として知る由もありませんでした。
そう言った経緯から、叔父様は私たち姉妹を引き取って養育する気だったようです。
ですが、新しいお義父様になられるペルー侯爵が、母と娘を引き離すことを良しとはせず、かなり強引に、私たち母娘の侯爵家入りを決行させたのです。ブラトン伯爵になった叔父が今もかなり愚痴っていますから、相当、強引だったのでしょう。いつも穏やかなお義父様からは想像できない行動です。なんでも、侯爵家の親族がそれを推し進めていたそうです。
当時の私は五歳で、詳しい事は後日、サンドラお姉様からお聞きしました。サンドラお姉様は、私より五歳年上の十歳でしたが、大人たちの事情というものに精通なさっておいででした。
ブラトン伯爵家としては、若い当主に早く結婚して子供を儲けて欲しかったこと。
前伯爵の遺児がいては、相手が何かと気を遣うであろうこと。
叔父様が私たち姉妹を可愛がっている事にも拍車をかけていたこと。
ペルー侯爵家には、四歳になる令嬢、エマがいたこと。
彼女のためにも、新しい母親と姉妹が良い影響を及ぼすであろうこと。
そう言った、様々な事情が絡み合った末の結果だったのです。