1話 追放と旅立ち
禍々しい魔王城。
初めはここに行き来することなど、夢にも思わなかった。
そして…
「追放かぁ……」
城の管理人として、長い間仕えたなぁ…とアルサは他人事のように思う。
夏の妙に気持ちいい風がフッと吹いて、アルサの少し長い耳をくすぐった。
「……」
アルサはすぐに、髪で耳を隠す。
吸血鬼にしては長く、エルフにしては短い耳は魔族からすれば、侮蔑や軽蔑、からかいの対象となれど、好意を寄せられることはない。
「あ、必要ないのか…」
魔王城にいる間は、汚い耳を隠せ!とよく怒鳴られていて、すっかり隠す癖がついていたアルサはモサモサの髪を触る。
「別に、切らなくてもいいか…」
アルサは細かいことを気にしない性格だ。
「どうしよう……あーでも、嫁が欲しい。長い間生きてきたけど……帰ったらいつも待っていてくれる人、憧れるなぁ…」
アルサは同僚の魔族たちの嫁の弁当の話、ぐちの話、それらが羨ましく感じていた。
「髪がモサモサでも、できるかな…」
「よし…」
アルサは丸坊主になった。アルサは本当に嫁を作れるのだろうか…?
ーフサフサ…フサフサ…フサ!!
吸血鬼の再生能力は高い。
頭皮を守るために、最低限の髪の毛が生えてきた。しかし、殆ど坊主である。
やはり、アルサに嫁をつくる才能はなさそうだ。
「生えてきた……行こう」
アルサはせっかく切った髪が生えてきたことを少し落ち込んだが、すぐに旅だった。
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新魔王就任前日
次期魔王「親父、なんで魔王城に下っ端とはいえハーフを置いてるんだよ」
魔王「あいつは昔から仕えているからな、仕方なく使ってやっているだけだ。
情けなくも雑用だけはやるようで、他に変わりを見つけるのも面倒だから、な。」
(有能だから絶対辞めさせるなよ?いつもより喋ってるんだから気づいてくれよ?頼むから!)
次期魔王「ふ〜ん」(よし、僕が魔王になったら大好きな父上の代りにやめさせてやろう。)
魔王(不安だ…)
見てくれてありがとうございます。
不定期になると思いますが、よろしくお願いします!
他作品も( `・∀・´)ノヨロシクネ!