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藤崎さんと、宮前先輩  作者: ちりちり
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第5話 藤崎結と、出会った日

ちいさくて可愛い小動物。守ってあげたくなる系。

藤崎結への第一印象は、そんな感じだった。


「今日は幼馴染と夕飯の買い物をして帰るから」、という葵のナゾの理由で先に帰宅するように言われた時、「え、いーな。私も行きたい」と咄嗟に口に出していた。


一人暮らしだから、どうせ夕飯の買い物、するし。

何よりいつも葵が話す、「ちいさくて放っておけない幼馴染」を一度見てみたかったのだ。

言うなれば、友達の妹かペットを見るような感覚。


葵は、「まあいいけど、そしたら教室まで迎えに行ってくるから中庭で待ってて」と言い残すと、そのまま1年生の教室へ行ってしまった。

いいんだ。やった。


中庭に行ってベンチに腰掛けると、背後にある花壇から沈丁花の甘い香りが漂ってくる。

どんな子が来るかな。可愛いかな。良い子かな。人見知りしないかな。まあ、そうだとしても打ち解ける自身があるけど。




暫く待っていると、だんだん手持無沙汰になってきたので、携帯電話の画面をタップしメッセージが来ていないかチェックする。

「おーい、宮前ー」

あ、来た。


葵の声に反応して顔をあげると、その先には葵と、髪を高い位置でふたつ結びにした、ちいさな女の子が歩いて来るところだった。

わあ、可愛い。


思わず口から出そうになって踏みとどまる。いや、きっと別に言ってもどうにもならないと思うけれど。なんとなく、下手なことを言って嫌われたくないなと思った。

あれ、私、緊張しているのかも。


「あ、葵の幼馴染なんだっけ?初めまして、宮前亜紀です」

ちいさくて可愛い小動物。守ってあげたくなる系。


そして、多分私は、この子と仲良くなりたいって思ってる。

甘い甘い、沈丁花の香りが鼻先をくすぐる。

藤崎結への第一印象は、そんな感じだった。




「結ちゃんって、葵の幼馴染なんだよね」

初対面の子との会話は、共通の話題を探るに限る。


挨拶も済ませた私たちは、さっそく行こうか、という葵の後について帰り道の途中にあるスーパーへ向かって歩いていた。

葵は歩くのが速いので、ゆっくり歩く私と結ちゃんは、自然と一緒に歩くかたちになる。


「そうですね。うちが隣なのでちいさい頃から一緒で。でもこうして学校帰りに一緒になることはあまりないし、私が中3の時は葵ちゃんは高1だったから学校での様子も知らないしで、なんだか今日は新鮮ですね。宮前先輩とも今日初めて会えたし、ちょっとドキドキしてます」


あー、たぶん良い子だこの子。素直。

思わず頭を撫でたくなるような。急にそんなことされたらびっくりするか。


と、思っていたら、「よしよし」と、急に振り返った葵が結ちゃんの頭を撫でだした。

「え、葵、いつもそんなことしてるの」

「え、そうだけど」

本当に姉妹じゃないんだよね?このふたり。


当の結ちゃんは、少し照れて嬉しそうにしている。子犬みたいだ。

「…私も撫でていい?」

そう言うと、ぱっと顔を赤くして「…はい」とぼそりと呟いた。


ゆっくりと頭を撫でながら、「守ってあげたくなるわぁ」と零すと、「まあ、そう思うだろうけど、この子、見かけによらず強いからねぇ」と葵が返す。

「強いって?」

「空手やってるんです。黒帯です」

そこら辺の男子よりは強いですよ、と微笑む結ちゃんはやっぱり可愛くて。



ちいさくて可愛い小動物系。でも結構強くて、逆に守ってもらえそう。

そしてやっぱり、この子と仲良くなりたいな、とそう思ったんだった。

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