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脅威は一度去り

「そんな……」


 こんな事ある!? 死ぬ……もう死ぬのは……。


 意識した瞬間、身体が震え始める。ヤバイ。これは……ヤバイ。


 その時だった。遠くから聞き慣れた声が、二人分響いてくる。


「おーい! イグナート! 無事かー!?」


「イグナート! 今、行く!」


 オクト君とリュドヴィックさんの声だ。あの信号弾が届いたんだ……。

 ホッとしたのと同時に、『パビルサグ』のヤバさを肌で感じた私は、二人とも危ないという事に気づく。


《邪魔ガ、来タナ、残念、ダ、勇者、ヨ、早ク、目覚メロ、ツマラン》


 『パビルサグ』はそういうと、あの獣の下半身で宙を駆けて去っていった。

 全身から力が抜けて行くのを感じる。


 なんとか瓦礫から出ると、改めて被害の大きさを思い知らされた。

 壊れた建物、至る所に落ちている瓦礫、そして傷ついたアスケラの人々。


 ……私がもっとちゃんと戦えていれば……こんな事にならなかったのに……。


 あの『パビルサグ』は私だけを狙っていた。なら、別の場所に誘導出来ていたら? 私が【怒焔の矢(イグナイト・アロー)】をちゃんと使えていたら? もしかしたら、倒せていたかもしれない。


 そんな事を考えている間に、オクト君とリュドヴィックさんが近くまで来てくれていたらしい。ハッとした瞬間には、オクト君に両肩を掴まれていた。


「イグナート! 無事で良かったぜ……つーか、なに一人で『パビルサグ』と戦ってんだよ!! 無謀にも程があんだろうが!!」


 オクト君の真剣な表情に、私は謝るしかなかった。


「ご、ごめん! なんかその、流れ? で?」


「流れでって……お前なぁ!!」


「本当に、ごめんなさい!!」


「お前達。その話は後回しにしろ。今は、怪我人の救助が最優先だ」


 私達から少し離れた所でリュドヴィックさんの声がした。オクト君から視線をずらしてリュドヴィックさんの顔を見ると、怒っているような心配しているような、そんな表情をしていた。


「あ、はい! すみません、リュドヴィック卿!」


 オクト君はそう言うと、私の両肩から手を離す。


「んっと! イグナートは怪我してるかもしんねぇから……」


「ああ。だから、イグナート、お前はブリアック卿とアンドレアス殿と合流だ。……ここはオレ達に任せろ」


 二人にそう言われ、私は頷くしかなかった。だって、二人揃って圧が凄いんだもん……。


「じゃあ、えっと……?」


「十字路の中心に噴水があっただろう? そこに二人がいるはずだ」


「あ、はい……」


 リュドヴィックさんに言われた道順を進みながら、私は歩きだした。強化魔法が切れたのか、それとも緊張から解放されたからか、全身に痛みが走る。


 ……痛いのは、本当に嫌いだな……。


『前世』がふと過る。あの頃の――()はもういないのに。

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― 新着の感想 ―
[良い点] パビルサグはイグナートの力を試すために 各所に出現していたのかしら 少し戦い方に慣れてきたけれど まだ経験値が足りずに被害が出てしまった 今回は仕方ないよね〜
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