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自殺間際の女子高生

「こんにちはー。地球くじの者です」

「誰よ、あんた」

 学校の屋上の鉄柵から乗り出し、空へ飛び出した時突然変な人に話しかけられた。

「えっと、今から死ぬ方で合ってますか?」

「見ればわかるでしょ!飛び降りようとして……」

 そうだ、私は確かに飛び降りた。人間は飛べないはず。だけど、私の体には痛みなどが何も来ない。ふっと周りを見ると、私の体は地面に叩きつけられることなく浮いていた。

「え!?飛んでる!?」

「時間が止まっているだけです」

「そうなの?……じゃあ、いつか落ちるの?というか、あなた誰」

「はい、このくじを引き終わったと同時に落ちます。それと、先程も名乗りましたが、私は地球くじの者です」

 目の前の男?女?は丁寧に頭を下げた。地球くじ?なにそれ。そういえば、さっきもそんなこと言ってたような気がする。ただ、いきなり空中に人が現れたから、びっくりした。ん?人って浮けるっけ?

「それ、なに。というか、誰。なんであんた浮いてんの」

「地球くじは地球くじです。1回くじを引いていただきます。禁止事項を説明させていただきますね」

「ちょっとまって、話を聞いてよ!」

「まず、死者蘇生・不老不死・若返りは禁止です。そして、あなたはこのくじを引き終われば死にます」

「いや、あの、ちょっと」

「先ほども説明をいたしましたが、くじは1回。貴方の願いを聞いたあとに、叶い方の規模をくじで決めていただきます」

「話、聞いてます?というか、え、どういうこと」

「規模ですが、これはちょっと運が悪いかな?程度から天変地異までの数種類から、くじを引いて決めます」

 ご質問はありますか?と丁寧に聞いてくる。目の前のヒトはずっとニコニコしている。

 死のうと思って飛び降りたのにまだ死なないし、くじを引き終わったら死ぬって言われるし、というか目の前の人誰。

 いきなりのことで頭が混乱している中、さっきの話をなんとか頭の中で整理しようとした。

 まず、私の願いを聞いて?そのあとくじ?かなんだかを引いて願いをかなえてくれる?そのくじを引き終われば、私は死ぬ。そうだ、死ぬつもりで私はここから飛び降りたんだ。

 死ぬからこそ、最期に何かできるかもしれない。と希望を持った。

 もしかしたら、これは私に残された最後のチャンスなのかもしれない。

 私は、いじめにあった。理由なんてわからない、気が付いたらそうなっていた。物は壊され奪われ、友達だと思っていたやつらもみんな離れ私をいじめてきた。いじめなんて生ぬるい。私にとっては拷問だった。

 親に話しても、何も聞いてくれない。それどころか「気のせいじゃないのか。そんなくだらないことで私の時間を使うな」「あんたが不愛想だからみんな気を使ってくれてるんじゃないの。人様の親切を無駄にするんじゃありません」と聞く耳を持たない。もううんざりだ。だから、私は死んでやろうと思った。自分たちのせいで死んだと思ってほしかった。自分たちが行ったことについて、悔いてほしい。

「それって、復讐もできるんですか?」

 こわごわ聞いた。幸いくじを引き終わるまではまだ私は生きている。なら、最期に復讐してやろう。そんなことを考える私を見ながら、全く変わらぬほほ笑みで目の前のヒトは答えた。

「いいえ」

「え、なんで!?」

「願いを聞くことはできます。ただ、それをどのような形で叶えられるかはくじの中身によります。あぁ、それとハズレもございます」

「は、はずれ!?なんで!」

「くじ、ですので。ただ、ハズレを引いて何もないのはかわいそうですので、参加賞もございます。雑草を一本、どこかに生やすのが参加賞です」

「じ、地味……」

 確かにくじだけれども、それはあんまりだ。何も出来ずに死ぬなんて、それじゃ、無駄死にじゃない。

「それと、くじを辞退することも出来ます」

「え?どうして」

「くじによって引き起こされる災害の規模をお話すると、大抵の人が辞退するんですよ」

 みなさん、もったいないですよねぇ、と心からそう思っているかのように言った。

「あぁ、災害の規模について説明させていただきますね。1番小さいものだと、例えば傘がない時に急に雨が降りびしょ濡れになる。これが1番小さいものです」

「なんとなく嫌なことね」

「そして天変地異や大災害などの規模になると、町ひとつ消えます」

「え!?」

「間違えました。町ひとつどころか、場合によっては地方ごと壊滅します」

「ほ、ほんとの災害じゃない!」

「そしてこれを話すと、大半の方が辞退してしまうんですよね。まぁ仕方ないことですよね、皆さんの記憶にある災害の大体2割は、このくじによるものなので」

「そうなの?!」

「そうです。あぁ、気になっているかもしれませんが最近やたら自然災害が多い理由は死人が増えて、その方たちがくじを引いているからですね。皆さん、最期に何かしたい!って気持ちを持って引いてくださるので。いやぁ、こちらも張り切っちゃいますよ」

「原因それだったのね……」

 たしかに最近自然災害が増えてきたような気がするか、まさか、それが原因の一部だったなんて思わなかった。

 もし、このくじを引いたら私も自然災害を引き起こす側になるのだろうか。それを考えると、背筋が少し寒くなった。だって、私がくじを引いてそれが災害を引き起こすようなものだったら、全く関係のない人が死ぬってことになる。私はただ、いじめたヤツらや親に復讐したいだけなのに。

「どうしますか?くじを引きますか?」

「まって!引いた後に取り消しはできるの?」

「大変申し訳ございません。質問はひとつだけ、となりますので、それにはお答えできません」

「質問していないわよ!」

「したじゃないですか、「復讐も出来るんですか?」と」

「そ、それ!?なんで言わないのよ!」

「お伝えする前に質問されましたので、それに応えたまでです。ただ、そうですね。先にご案内をしなかった私にも非があります。その質問にはお答えしましょう」

「なんか妙にムカつくわね……」

「では。先程の質問の回答ですが、取り消しはできません。引いた後、速やかにくじの内容が実行されます」

「そう……」

 なら、辞退するのもいいかもしれない。でも、それだと私の気持ちは?ここまで我慢した。それでも、どうしても覆せなかった。せめて、精神的には無理でも身体的に嫌な目に遭わせたい。

 相も変わらず目の前のヒトは慈愛の満ちた瞳で私を見つめている。ここで辞退しても死ぬ。くじを引いても死ぬ。そしてくじを引いた後に、もしかしたら無関係の人が死ぬ。でも、少しの可能性に賭ければ。

「そうそう、1点、お伝え忘れていることがありました」

 目の前のヒトが何かを思い出したかのような反応をした。

「くじを引き終わったと同時に、あなたは死にます。ですので、くじの中身とくじのその後を見ることはできません。どうなるかは、あなたは知ることができないんです」

 それでも引きますか?

 悪魔のような囁きだった。復讐できたかも分からない。その代わり、誰が被害にあったかもわからない。なら、引いてもいいんじゃないかな。

「なら……引きます」

「ありがとうございます。それでは、まず、あなたの願いを教えてください」

「……私をいじめたやつらと虐待してきた親に復讐を望みます」

「かしこまりました。それではこの箱からくじを引いてください」

 パッと目の前に箱が現れた。これを引き終わったあと、私は落ちて死ぬ。箱に手を入れる。こんな突拍子もないくじの割に、手にあたる感触はただの紙のようだった。そのことに、呆れたように笑ってしまった。一枚の紙をつかみ、箱から引き抜いた。何も書いていない真っ白な紙を目の前のヒトに渡した。

「……はい、ありがとうございます。それでは、またお会い出来る日まで」

 くじを確認後、彼はそう言いふっと消えた。それと同時に足元の床が抜けたような感覚がした。落ちた、と思う間もない地面にたたきつけられた。壮絶な痛みと何かに濡れていく感じを覚えつつ、意識を手放した。





 それでは、次のニュースです。本日未明○○地域の住宅街で複数の住宅に雷が落ちる被害が起こりました。この落雷により死傷者が複数名出ているとの事です。

 また、落雷による火災も発生しており、現場では懸命な消火活動も行われております。

 では、次のニュースです。











 地球くじ運営報告書

 2×××年△月◇日未明

 業務内容:地球くじ当選のお知らせ、および執行手続き

 詳細:本日〇〇高校二年生の〇〇様へく地球くじ当選のご案内。くじについての理解を示した上、くじを引くか多少躊躇いあり。条件の説明。ご納得いただいたため、くじを実行。〇〇様死亡確認ののちに、執行手続き。その後、速やかにくじの執行。

 〇〇様の願い;「親やいじめた人たちへの復讐」

 くじの内容:落雷による事故死

 執行後の被害状況と死傷者数:両親といじめの首謀者5名の計7名の死亡を確認。その他、いじめの傍観者や無関係の通行人複数名の負傷者を確認。落雷による火災で住宅街全域が火災。火災による死者はなし。負傷者多数。

 備考:今回のくじによる死者への地球くじを提案。全員辞退。

 この件については、クローズです。確認、お願いします。

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