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魔力極振りの迷宮探索  作者: 大山 たろう
第二章 体育祭
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体育祭

「あなた、十階層を攻略した報告を受けた後から一度も迷宮について話していないと思うのだけど、進展などあったかしら?」

 そう問いかける生徒会長。

「あなた、予知でわかっているんでしょう?」


「いいえ、今日はまだ予知を使っていないの。有事に備えてね?」


「そうでしたか。まぁ、進展などはなく、ひたすら十一階層でゴブリンと戦闘をしてました」


 そう、俺はこの日のためにレベルを上げてきた。だが、危険を冒してけがをして、当日に使い物にならないのは問題である。

 なのである程度安全(とはいっても一撃かすったら大けが、直撃ではじけ飛ぶか最悪即死なのだが)な十一階層で戦っていた。


 その成果として、二次職:歩く魔力タンクのレベルと魔力回復増加、そして魔力譲渡がレベルアップした。レベルの上昇で、魔力値は約二倍になった。それから魔力回復増加で五分に一回の回復量が全体からしたら誤差だが増えていた。そして魔力譲渡のレベルアップで、ロスが減ったのと遠隔で譲渡が可能になった。


 これだけ上げればほとんどの状況には対応できるだろう。

 しかし会長はしかめっ面をしながら俺に言う。


「どこか、嫌な予感がするわ」


 俺はその言葉をに、確信めいたものを感じていた。


 全員が運動場に集まる。


「体育祭を、開始します!」


 太陽が照り付ける青空の下で、会長のその言葉とともに体育祭が始まった。


 俺の 分体(ドッペルゲンガー)は既に配置についている。


 感覚共有でそこを見ると、こそこそとしている影があった。こちら側には保護者は立ち入り禁止と書いてあるはずなので、おそらく敵だろう。


「会長、怪しい人影を補足」


「了解、引き続き監視よろしく」


「わかりました」


 俺は耳に着けたワイヤレスイヤホンを通して感覚共有の結果を伝える。もし俺が見ていないときに戦闘がおこれば、 分体(ドッペルゲンガー)が俺に魔力譲渡をしたのちに戦闘行動を開始する。


 俺はあくまで表の顔だ。俺は一生徒として体育祭に参加すればいい。


 そう思って、俺の最初の競技である100m走の集合場所へ向かう。


 このまま何もなければいいんだが......


 そう考えたのがフラグだったかのように、魔力が増える感覚がした。

 これは事前に分体(ドッペルゲンガー)と決めていたことで、戦闘を開始するのならば魔力を俺に遠隔譲渡で送るということにしていた。


 これはわかるように勘違いではすまない量を流してくれている。俺は未だ残るロスを考え、渡された分より少し多めに魔力を譲渡する。


 そして俺は会長に連絡をする。


「戦闘開始したようです」


「わかったわ。ここまでは予定通りよ。これから予知のズレがどれほど出るか......」


「ちなみに敵は野良なんですか?」


 相手も犯罪集団か、少人数なのかを聞いていないので聞いておく。


「まぁ、あなただけなら当日だしズレは少ないか......今回犯罪を起こそうとしているのは、大規模犯罪者集団、血の盟約、その下っ端ってところかしら。ちなみに狙いはこの学校に在籍する判明している三名の唯一(ユニーク)職の身柄確保よ。危害を加える可能性を否定できないから、護衛は全員を条件にしているけど」


「判明?俺は恐らく判明していないでしょう。ならばあと一名は?」


「あなたの言う勇者君がほんとに勇者、しかもエレメンタル、極光の勇者よ。勇者は最初から最終職に到達しているっていうから、洗脳でもして投入するんじゃない?」


 正確には一次職からレベル上限のない最終職へと就いているような状態なのだが、今はそれは関係ない。


「クラスメイトが洗脳っていうのはたとえ苦手な奴でもいやなもんですね......」


「まぁ、あなたは種目があるのでしょう? 向こうは分体(ドッペルゲンガー)に任せて、また変化があれが連絡を頂戴」


「了解」


 そう短く返すと、俺は電話を切る。

 とりあえず、走るか。






 100m走だが、なんと二位を取ることができた。

 最近迷宮でずっと動いていたから足腰が強くなったのか、それとも度重なる戦闘で瞬発が鍛えられたか。それともただ単に周りが俺より遅かっただけなのか。


 ともあれ、よい結果を残せたのならば十分だろう。


 俺はクラス席へと戻る。


「拓海!運動できたのかよ!」


「拓海くん、すごかったよぉ~」


 真っ先に駆けつけてくれたのは、徹と司だ。


 まぁ、先頭の一番速い組で一位でない分きゃーきゃーいわれることがないので少々残念だが、冷たい目線を浴びせられないだけ良しとしておこう。


 取り合えず、俺は席でゆっくりするか。


「拓海、電話来てるぞ」


「え?あぁ、ありがと」


 確認すると、電話が振動していた。誰からかと思うと、会長からだった。あっちからかけてくるなんて、何事だろうか。


 そう思い、席を外し校舎の柱に隠れると、電話に応じる。


「会長、どうしましたか」


「まずい、予知を使ったら大きなずれが発生していた! 最初の一人が帰ってこない場合、大人数で攻めるつもりだったみたいだったの!」


 これほど焦る会長は珍しい。それほど緊急事態だから仕方ないのだが。


「援軍は?」


「来ないわ。装備を整えてきているのはあなただけ。他はせいぜい護身用だけよ。」


「探索者ギルドに連絡は?」


「もうしているわ。だから、時間を稼いで。そっちの一人は本体のあなたが。大人数のほうに 分体(ドッペルゲンガー)を向かわせて。そうでないとあなた、身バレどころか死ぬわよ?」


「.......わかりました」

 そう言って電話を切る。


 すぐさま俺はクラスの席へと戻って、装備が入ったバッグを持つと、俺はすぐさまトイレへと走り出す。

 不審がる二人に対して「腹壊したぁ! トイレ行ってくる!」と大声で叫ぶと、すぐさまトイレの個室へと入った。

 服を着替え、指輪とナイフ、そして仮面をつけると、やっと実践段階で使えるようになったある魔法を発動しておく。


 そして 分体(ドッペルゲンガー)のもとへ向かうと、交代をするという意思表示を込め前に出る。そして、電話をなげ渡す。


「電話で聞いてくれ!」


 それだけで察してくれたらしい 分体(ドッペルゲンガー)は、携帯を落とさずに受け止めると、別の場所へと走り去っていった。


「貴様、何者だ!」

 俺はそうテンプレの言葉を吐く。実は知っているのだが、聞いてみたくなった。

 すると敵であろう黒ずくめの人は、何も話さずこちらへ距離を詰めてきた。


 俺はバックステップをしながら、魔弾を放つ。


 しかし、黒ずくめは左に体を寄せ、回避してしまった。


 そのまま、黒ずくめは、首筋目掛けナイフを振るう。


 俺はそれをすんでのところでナイフで受け止める。


 しかし、圧倒的にステータスの優っている黒ずくめが、徐々に首筋へとナイフを押し当てていく。


 俺は刀身の方向を敵の顔へと少しずらすと、顔すれすれの長さで魔法刀身を起動しながら、右から魔弾を構える。


 これが、先ほど起動した、手を使わなくても魔法を使える魔法、リモートマジックだ。


 拡散と操作、それだけの魔法なのだが、これは自分から魔力を拡散させ、それを操作で文字にする、という方法で遠隔起動などを可能にした。


 しかし、魔力を継続消費する上に、精度が大抵悪くなるため、あまり人気ではない魔法だ。だが手数がどうしても少ない俺はこの魔法はとても有効だ。

 しかし、無色透明の弾丸を何かの感知能力で見つけているのか、黒ずくめの男の額に汗がにじみ出る。

 とりあえず仕切りなおしたいようで、後ろへ下がる。


 が、遅い。


 俺は後ろに下がる直前、一度魔法刀身を解除して力が弱まった一瞬でナイフを前に突き出す。そして槍のように伸ばした魔法刀身で男の頭目掛けて突きを放つ。男はやはり見えているようで、それを倒れ込むようにして回避する。


 そのまま距離を取られた。リモートマジックは結構初見殺しの面が大きいから、この状況は完全に俺が劣勢だ。さっさと分体(ドッペルゲンガー)の応援に行きたいのだが、男は俺を逃がしてはくれなさそうだ。


 俺は片手を男の死角に隠し、まずはリモートマジックをかけなおす。

 と、完成したタイミングで男が走って距離を詰めてきた。


 俺は急いで先ほどの魔法刀身のついたナイフで応戦する。

 リーチこそ長いものの、重量が増えるわけではない。一応振り回して応戦するが、この二つの校舎に挟まれた場所での戦闘が災いし、伸びた刀身が校舎をちょっとずつ抉っていく。


 俺は苦虫を嚙み潰したような顔をすると、男は好機と見たか、俺に一直線に向かってきた。




 かかった。




 うめき声をあげたかと思うと、首から勢いよく血が噴き出る。


 今俺は、追い詰められたフリをしてやっただけだ。本当に下っ端のようで、子供だましの罠にかかった。勢いよく距離を詰めてきたので、地面にリモートマジックで描いていた魔弾を起動、下から前かがみになっていた男の頭を吹き飛ばした。


 ドスっと、鈍い音とともに、男の体が倒れた。

 ビチャベチョという液体とと柔らかいものが落ちてきて地面へとたたきつけられる音がした。

 男の、魔弾によって打ち上げられた頭部だった。魔力をしこたま込めたせいで、気絶どころか首からもげて飛んで行ったのだ。

 その光景をみて、何も感じなかった。できれば、何かを感じたかった。初めての人殺し、初めてなんてふつうはあってはならないであろうことだが、このご時世、探索者でこれを経験する人は少なくはない。


 俺たちの未来を守るために、仕方なかったんだ。

 人を殺したことをどうにか心の中で正当化しながら、会長に殺したことと、あとどれくらいとかいろいろ聞くために、電話をかけようとして、気付く。


「携帯 分体(ドッペルゲンガー)に渡したじゃねぇかよ!恥っず!」


 俺は急いで 先ほど聞いていた分体(ドッペルゲンガー)の戦闘地へと向かう。


 しかし、残念なことに秘密裏に処理はできなかったようだ。


 その戦闘地は、グラウンドのど真ん中。先ほどまで100m走をしていた白線が消え、地面をえぐるほどの激戦を、俺の 分体(ドッペルゲンガー)と会長、そして護身武器を持っていた生徒と、あれは......保護者か。がどうにかステータスを持たない人の避難の時間を稼いでいるようだ。


 皆が善戦しているので、脅威に感じる演出で引いてもらおう。


  分体(ドッペルゲンガー)も俺を見てその考えに至ったようで、俺の反対側へと姿を隠す。


 そして、リモートマジックを起動すると、片方五十、二人で百発の魔弾を構える。


魔力を操作するのだから、多重に展開することも可能だ。(ただし、消費は半端じゃないが。)


俺は少しでも分体(ドッペルゲンガー)と合わせて撃つことで最大限の効果を生み出したいので、何か合わせられるものなどはないか......と探していたところで、分体(ドッペルゲンガー)の視線が一点に集中した。


その方向を見ると、校舎に取り付けられた時計だった。

そうか、あれを合図に。

 俺と 分体(ドッペルゲンガー)は時計を見る。

 時計を見る、見て、見て......


 分針が動いた。


 その瞬間、俺と 分体(ドッペルゲンガー)は魔弾を撃ちだしていく。


ドゴゴゴゴゴゴォ!!

魔弾がグラウンドの踏みしめられて固くなった土を削りつくさんとする勢いで撃ちまくる。


 向こう側からは、「やべぇ!もう来やがった!」だの、「何人来てんだよ!」だのと声が聞こえる。


 作戦が功を奏し、勘違いした敵が前線を下げていく。彼らはとりあえず校内から撤退することを決めたようだ。しかし、先ほどの魔弾にひるみ中にはそのまま逃げだそうとするものまでいた。


 追い打ちをかけようか悩んだが、どうやら援軍が到着したようで、前線が下がった学校の向こう側で戦闘が開始された。


 今のうちに、俺は姿をくらますか......そう考え、さっと校舎裏に身を隠す。


 そのままトイレで着替えると、トイレの個室に隠れている風を装って隠れておく。


 一時間ほど時間が経過したとき、校内放送で、安全確保の連絡が入った。


 なので、俺はトイレから出て、みんなのもとへ向かう。何やら興味の視線に当てられている。どうやら俺が先ほどの戦闘について何か知らないか、といったところだろう。

皆が興味津々に俺を見つめる中、真っ先に駆けつけてきたのは徹と司だった。


 彼らはいつもより大きな声で、

「拓海、どこ行ってたんだ、ケガしてねーか!」


「いなくってしんぱいしてたんだよぉ」


 そういったので、俺も大きな声で、


「いやぁー、トイレ行ってたらドンドン大きな音がするからさ、こりゃやべぇってトイレの個室にずっと隠れてたのよ! もー怖いったらありゃしない!」


 そう、大きな声で話す。すると、みんなも興味を失ったのか、それぞれとの友達との会話を始めていく。


 俺は小声で

「助かった」


 というと二人は


「やっぱりか......」


「打ち合わせといてよかったねぇー」


 そう笑いながら小声で言った。

ここから俺TUEEEのアルファポリスをそのまま投稿するか、こっちで弱いままの拓海を分岐して書くか、少々悩んでおります。良ければ感想のところでどちらが良いか教えてください!

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